エリスが嬉しそうに話し出す。
「サウナ島かあ!嬉しいじゃないか?坊やが育った島だね?」
「そうだよ、楽しいよママ!」
「それに今ではアースラさんもいるからエリスは必ず行かないといけないな」
この発言にエリスが表情を改める。
「えっ!アースラ様が?嘘でしょ?」
「本当だ、アースラさんは今では農業部門の部長だ」
「はあ?部長がなんだか知らないが、アースラ様には私は会わないといけない。まだちゃんとお礼の一つも言えてないんだから!」
「今では花魁衣装よりも、作業着姿が似合っているからな、アースラさんは」
エリスは呆けた顔で俺を見ていた。
「なんだそれ?よく分からんが早く行きたいねぇ、てかさあ守さん。サウナ島には上級神様も住んでるのかい?」
「そうだな、火、水、風、大地の神は大体いるかな?でもフレイズは棲んではいないな。あいつはバイトに明け暮れているだけだな」
「マジかよ?」
エリスは固まっていた。
「エリス、本当よ・・・先日なんか私、ウィンドミル様と塩サウナで対一だったんだからね。びっくりしたわよ。でもね、ウィンドミル様は優しかったわよ。塩サウナ室にそよ風が吹いていたわよ」
何だそれ?
てか駄目じゃん。
塩サウナは湿度を楽しむものでしょうよ。
そよ風は要らないじゃない。
まあいいや・・・好きにしてくれ。
「まさか・・・時の神アイル様まで居ないでしょうね?・・・」
流石にアイルさんは来てないね。
「それがね・・・そろそろ来るかもって噂なのよ・・・」
そうなのか?
「前にフレイズ様が、母上がサウナ島に興味を持っているって言ってたのよ・・・そろそろかもしれないわよ・・・」
マジかよ・・・まあ別にいいけど。
創造神の爺さんも来たければ来ればいいじゃないか。
別に俺は困らないけど?
まあ他の神様達の事は知らないけどね。
爺さんに関しては一度サウナ島に来ているし。
あ!その当時はスーパー銭湯は無かったか・・・
まあ、どうでもいいよ。
「でも前に創造神様はサウナ島に来たんだよ」
普通にノンは告げていた。
何かおかしいの?とでも言いたげだ。
「はあ?ちょっとノン!何それ?」
「聞いて無いんだけど?」
「そうなの?だよね?ゴン、エル」
ノンはゴンとエルに同意を求めていた。
「そうですの」
「ですね」
その発言に唖然とするオリビアさんとエリス。
「嘘でしょ・・・」
「マジか・・・」
二人は一瞬にして酔いが醒めた様子。
特にオリビアさんは顔を振って正気を取り戻そうとしていた。
俺にはいまいちよく分からない反応だった。
なにをアイルさんと爺さんにそんなに身構える必要があるのだろうか?
爺さんに関しては少々面倒臭いけど。
アイルさん関してはそうとは思えないんだけど?
面倒見のいい女神なんだけどな。
現に俺はお世話になったしね。
あの修業はなかなかハードだったな。
身に付く物が大きかったから良かったけどね。
「何もそんなに身構えなくても、そもそも神界には下界を覗く泉があって、しょっちゅう下界を覗いているって言ってたけど?」
「そうなの?」
「知らなかった・・・」
「ん?エリス?言わんかったか?」
「聞いてねえよ親父!」
「そうか、すまんすまん」
「まあ、何れにしても創造神の爺さんにしても、アイルさんにしても別に来てくれても構わないけどね」
俺の発言にエリスとオリビアさんは引いていた。
その時はしっかりと料金は徴収致しますよ。
タダとはいきません、誰であれど。
「あの二人であっても、頂く物はしっかりと頂きますけどね!特別扱いはしませんよ。俺は・・・」
俺はわざと悪代官の様な笑顔をしてみた。
「坊やが規格外って言ってた意味がよく分かったよ・・・」
エリスは云々と頷いていた。
ちょっと悪ふざけがすぎたか?
気を取り直したエリスが言った。
「それにしても、今日は最高の一日だ!坊やにもやっと会えたし、旧友にも会えたし、将来の創造神様にも会えたし、明日からどうなっちゃうんだろうね?私は興奮が止まらないよ!」
「よかったね、ママ!」
「ありがとうね坊や、それにオリビア。そして守さん、私は幸せ者だよ!」
「エリス!」
オリビアさんがエリスに抱きついていた。
「私も最高!」
「ホホホ!良かったのう」
ゼノンも目尻が下がっていた。
確かにそうだ、エリスとギルとオリビアさんにとっては最高の一日になったな。
でも俺にとっても最高の一日だ。
この日の為に、俺はこの世界に転移してきたと言っても過言では無いからね。
「この日をもっと最高の一日にする為に、守さんにお願いがあるんだが聞いてくれるかい?」
「お願いごと?なんだ?俺に出来ることにしてくれよ?」
「この島を救ってくれよ!お願いだよ!」
はあ?
救ってくれとは?
急に話が変わって無いかい?
「それはどういうことなんだ?」
「この島は見ての通り空に浮かぶ島なんだ、それがどうやら年々地上に近づいているみたいなんだよ」
ん?それは高度が下がっているってことなのか?
「そうなのか?」
「ああ、浮遊石が劣化しているんだと思うんだ。風によって浮遊石がゆっくりとだが、削られていっているんだと思う」
「なるほど・・・」
其れならばどうにかできそうだな、但し・・・
「何とか出来ると思う、だが・・・」
「だが?」
「たくさんの神石か魔石が必要になるな」
「それはどれぐらい必要なんだい?」
「こればかりは試してみないと分からないな、でも規模感としては数十個でどうにか出来るとは考えられない。まあ魔石は魔獣の森があるからどうとでもなりそうだけどな」
「そうなんだね・・・後、この街は資源に乏しいんだよ、そんな中でも天使や悪魔達が何とかやりくりしてくれてはいるけど・・・そろそろ限界が近いかもしれないんだよ・・・」
だからあの反応だったんだな。
「それはどうとでもなる、問題はどう稼ぐかだけだな。この島にしかない物は浮遊石以外には何かないのか?」
「この島にしかない物か・・・ちょっと考えてみるよ」
エリスは真剣に考えだした。
眉間に皺が寄っている。
「俺も何が出来るか考えてみるよ」
こうして夜は更けていった。
翌日。
俺達は約束通り天使と悪魔達をサウナ島に招待することになった。
転移扉を設置し、まずはドラゴムに移動する。
ドラゴムでは多くのリザードマン達が、エリスに群がっていた。
「おお!エリス様だ!」
「本当だ!」
「なんという御尊顔!」
「眩しい!」
等と騒いでいた。
手を振って答えるエリス。
満更でもなさそうだ。
ギルも手慣れたもので、世話を焼こうと集まってくるリザードマン達を往なしていた。
「これこれお前達、儂らは先を急いでおる。エリス達はまた立ち寄るからその時にな」
ゼノンが交通整理を行っていた。
群がってくるリザードマン達を宥めている。
そして、サウナ島に繋がる転移扉に手を掛ける。
ゼノンにとっては手慣れた作業だ。
「守よ、行くぞ?」
「ああ」
扉を開けると、受付ではエクスがエリスに驚いていた。
「あら?この子坊やにそっくりじゃないかい?」
俺はエクスを紹介することにした。
にしても何でエクスはそんなに驚いているんだ?
前以って言っておいたよね?
「エクス、こちらはエリスだ、ギルのママだぞ」
「え!マスター!嘘だろ?」
エクスは腰を抜かしそうになっていた。
だから何でなんだよ?
「ママ、エクスは神剣なんだよ。僕が装備者だから僕に似てるんだよ」
ギルが説明する。
「へえー、そうなのかい?神剣なんてのが居るんだねえ」
「お!おいらは神剣のエクス、よろしくです。ギルのママさん」
なんとかエクスは自己紹介していた。
「おや?ママさんだって?嬉しいねえ?」
「エヘヘ」
エリスの発言にエクスは何故だか照れていた。
「さあ、受付を済ませてしまおう」
俺は一同を誘導する。
てかエクスよ、俺の話をちゃんと聞いていたのかい?
人の話はちゃんと聞くものだよ?
甚だ疑問だ。
受付を済ませて、サウナ島に入るとエリスは、
「こんな所がこの世界にあるなんて・・・」
思わず声が漏れていた。
天使や悪魔達も同様に島の景色に見入っていた。
最初は皆な大体この反応だ。
もはや俺は見慣れている。
さて、天使と悪魔達のアテンドはゼノンに任せることにした。
ギルは大見えを切って、天使と悪魔達全員に金貨一枚ずつお駄賃をあげていた。
こういう処は俺に似なくてもいいのにね。
将来苦労するぞ?
ほどほどにな。
この時間ならアースラさんは先ず間違いなく畑に居るはずだ。
俺はギルとエリス、オリビアさんを連れて畑に向かうことにした。
「転移で向かってもいいか?」
「否、守さん。島の様子を眺めながら向かいたい。エアーズロックの参考にしたいんだよ」
エリスからの意外な一言だった。
こう見えてエリスは根は真面目な性格の様だ。
「そうか、分かった。じゃあ着いて来てくれ」
一同を引き連れて、歩いて畑に向かう事にした。
移動中もエリスは何一つ見逃さないと、辺りをキョロキョロと眺めていた。
時々あれは何かこれは何かとギルに尋ねていた。
勉強熱心でいいじゃないか。
そして俺達は畑に辿り着いた。
畑では農業部のスタッフ達が畑作業に勤しんでいた。
俺は農業部のスタッフに声を掛ける。
「やあ、お疲れさん。アースラさんはいるかな?」
「島野さん!ご無沙汰です!アースラ様は田んぼに居るはずですよ」
「そうか、ありがとう」
「どういたしまして!」
猫の獣人のスタッフが応じてくれた。
良く出来たスタッフ達で助かる。
島野商事は安泰だな。
会長として俺は誇らしいよ。
俺達は田んぼに向かった。
丁度田んぼでは収穫の時期を迎えていた。
きっとレケの新作の日本酒の原料になった米を収穫しているのだろう。
黄金色に輝く稲穂が鮮やかに咲き誇っていた。
日本人の俺にはほっとする景色である。
田んぼの中にアースラさんを見つけた。
エリスは田んぼの光景に心を奪われていた。
見るからに感動しているのが伺える。
「素晴らしい・・・」
エリスは呟いていた。
そしてアースラさんがこちらに気づく。
エリスを見つけると一目散に駆け寄ってきた。
「エリス!エリスじゃないか!」
エリスもアースラさんに気付く。
「アースラ様!」
エリスも駆け出した。
抱擁する二人、その光景に周りのスタッフも手を止める。
スタッフ達と俺達は二人を温かく見守っていた。
「アースラ様!会いたかった!」
「エリス!達者だったかえ?」
「はい‼」
「そうかえそうかえ!久しいじゃないかえ?」
「はい‼」
泣きじゃくるエリス。
まるで子供に戻ったかの様だ。
そんなエリスを抱きとめるアースラさん。
俺はまるで絵画でも眺める様にこの光景を眺めていた。
実に絵に成る。
よかったね、エリス。アースラさん。
オリビアさんは貰い泣きしていた。
そしてギルも泣いていた。
側に寄ってきたアイリスさんまで泣きだした。
「お母様、おめでとうございます」
アイリスさんが声を掛ける。
アースラさんは無言で頷いていた。
「会いたかった、ずっと・・・お礼を言いたかった・・・アースラ様・・・ありがとうございます・・・」
「エリスや、そんな事はよいのじゃ、それよりも翼はどうした?生えておるではないかえ?」
人化スタイルなのにアースラさんには分かる様だ。
流石は上級神だ。
「守さんに頂きました、世界樹の実を」
「そうかえそうかえ、よかったではないか、守に託して正解だったようじゃ」
「流石は守さんです」
アイリスさんにも褒められてしまった。
そりゃあエリスに食べさせるに決まっているでしょ。
「いい判断じゃ、守よ。世界樹の葉では心許ないしのう」
「そうです、ドラゴンの翼となると余りにサイズがデカすぎますわ」
アイリスさんも同意見のようだ。
やっぱりか、我ながらグッジョブだ。
これで世界樹の実は後一つ。
もう使う事はないだろうな。
そうあって欲しいものだ。
「アースラ様は私の所為で神罰を・・・」
エリスは申し訳なさそうにしている。
「それ以上言うでないわえ、エリスよ、済んだ話じゃ」
アースラさんはエリスの頭を撫でていた。
「ですが・・・」
「もうよいのじゃ、それよりも見ておくれ!この見事な田んぼを、余の自慢の稲穂達じゃ」
「ええ、見とれてしまっていました」
「今ではこのサウナ島で農業を行うことが余の生きがいじゃよ」
アースラさんは優しい眼でエリスを見つめていた。
「そうですか、素晴らしいです。アースラ様、農業を私にも教えて貰えませんか?エアーズロックの為にも、私は学ばなければなりませんので」
エリスは意外な事を言い出した。
「そうなのかえ?余は構わんが・・・守よ、良いのかえ?」
ちょっと困るな。
俺には違うプランがある。
「そうですね・・・少し考えさせて下さい。というのも、エリスには他にやって欲しい事があるんだ。どうだろうか?」
「そうなのかい?私にどうしろと?」
エリスは困った顔をしていた。
「それは後日話をしよう、俺に考えがあるんだ」
「そうか、私は守さんに従うよ」
エリスは俺に信頼を寄せてくれているようだ。
「ありがとう」
「そんなことより、皆の者よ、今日は仕事は終いじゃ!エリスよ、余に付き合うのじゃ!宴じゃ!宴を催すのじゃ!」
アースラさんは相当上機嫌のご様子。
「守よ!よいな?」
「ええ、構いませんよ」
「会長の許可が出たぞえ!皆の者!スーパー銭湯に集合じゃ!」
こんな嬉しそうなアースラさんは始めてみるな。
なんだかこっちまで嬉しくなってくるよ。
「守よ!ゴチじゃ!」
「「「ゴチになります!!!」」」
はあ?どういうこと?
てかそんな言葉何処で覚えたの?
きっとノンだな?
あの野郎・・・まあいいか。
いよいよ上級神までノンに毒されているようだ。
どうせ食事代は会社持ちだし、ビール三目杯以降は俺持ちになるだろうけど、知れているだろう。
多分・・・
アースラさん達なら可笑しなことにはならないだろう。
「分かりましたよ、遠慮なくどうぞ!」
この俺の発言に一同が沸いた。
「やった!」
「飲むぞ!」
「今日はへべれけになってやる!」
好きに騒いでいた。
あれ?間違ったのか?
まあいいや。
ここで水を差す訳にはいかないしな。
「守よ!お主も付き合うのじゃ!」
「付き合ってくださいますよね?」
俺はアースラさんとアイリスさんに腕を掴まれて、連行されるかの如くスパー銭湯に連れてかれてしまった。
それを見て、ギルとエリスとオリビアさんが腹を抱えて笑っていた。
ちゃんと付き合いますから放してくださいよ。
全く。
俺は逃げませんての!
「サウナ島かあ!嬉しいじゃないか?坊やが育った島だね?」
「そうだよ、楽しいよママ!」
「それに今ではアースラさんもいるからエリスは必ず行かないといけないな」
この発言にエリスが表情を改める。
「えっ!アースラ様が?嘘でしょ?」
「本当だ、アースラさんは今では農業部門の部長だ」
「はあ?部長がなんだか知らないが、アースラ様には私は会わないといけない。まだちゃんとお礼の一つも言えてないんだから!」
「今では花魁衣装よりも、作業着姿が似合っているからな、アースラさんは」
エリスは呆けた顔で俺を見ていた。
「なんだそれ?よく分からんが早く行きたいねぇ、てかさあ守さん。サウナ島には上級神様も住んでるのかい?」
「そうだな、火、水、風、大地の神は大体いるかな?でもフレイズは棲んではいないな。あいつはバイトに明け暮れているだけだな」
「マジかよ?」
エリスは固まっていた。
「エリス、本当よ・・・先日なんか私、ウィンドミル様と塩サウナで対一だったんだからね。びっくりしたわよ。でもね、ウィンドミル様は優しかったわよ。塩サウナ室にそよ風が吹いていたわよ」
何だそれ?
てか駄目じゃん。
塩サウナは湿度を楽しむものでしょうよ。
そよ風は要らないじゃない。
まあいいや・・・好きにしてくれ。
「まさか・・・時の神アイル様まで居ないでしょうね?・・・」
流石にアイルさんは来てないね。
「それがね・・・そろそろ来るかもって噂なのよ・・・」
そうなのか?
「前にフレイズ様が、母上がサウナ島に興味を持っているって言ってたのよ・・・そろそろかもしれないわよ・・・」
マジかよ・・・まあ別にいいけど。
創造神の爺さんも来たければ来ればいいじゃないか。
別に俺は困らないけど?
まあ他の神様達の事は知らないけどね。
爺さんに関しては一度サウナ島に来ているし。
あ!その当時はスーパー銭湯は無かったか・・・
まあ、どうでもいいよ。
「でも前に創造神様はサウナ島に来たんだよ」
普通にノンは告げていた。
何かおかしいの?とでも言いたげだ。
「はあ?ちょっとノン!何それ?」
「聞いて無いんだけど?」
「そうなの?だよね?ゴン、エル」
ノンはゴンとエルに同意を求めていた。
「そうですの」
「ですね」
その発言に唖然とするオリビアさんとエリス。
「嘘でしょ・・・」
「マジか・・・」
二人は一瞬にして酔いが醒めた様子。
特にオリビアさんは顔を振って正気を取り戻そうとしていた。
俺にはいまいちよく分からない反応だった。
なにをアイルさんと爺さんにそんなに身構える必要があるのだろうか?
爺さんに関しては少々面倒臭いけど。
アイルさん関してはそうとは思えないんだけど?
面倒見のいい女神なんだけどな。
現に俺はお世話になったしね。
あの修業はなかなかハードだったな。
身に付く物が大きかったから良かったけどね。
「何もそんなに身構えなくても、そもそも神界には下界を覗く泉があって、しょっちゅう下界を覗いているって言ってたけど?」
「そうなの?」
「知らなかった・・・」
「ん?エリス?言わんかったか?」
「聞いてねえよ親父!」
「そうか、すまんすまん」
「まあ、何れにしても創造神の爺さんにしても、アイルさんにしても別に来てくれても構わないけどね」
俺の発言にエリスとオリビアさんは引いていた。
その時はしっかりと料金は徴収致しますよ。
タダとはいきません、誰であれど。
「あの二人であっても、頂く物はしっかりと頂きますけどね!特別扱いはしませんよ。俺は・・・」
俺はわざと悪代官の様な笑顔をしてみた。
「坊やが規格外って言ってた意味がよく分かったよ・・・」
エリスは云々と頷いていた。
ちょっと悪ふざけがすぎたか?
気を取り直したエリスが言った。
「それにしても、今日は最高の一日だ!坊やにもやっと会えたし、旧友にも会えたし、将来の創造神様にも会えたし、明日からどうなっちゃうんだろうね?私は興奮が止まらないよ!」
「よかったね、ママ!」
「ありがとうね坊や、それにオリビア。そして守さん、私は幸せ者だよ!」
「エリス!」
オリビアさんがエリスに抱きついていた。
「私も最高!」
「ホホホ!良かったのう」
ゼノンも目尻が下がっていた。
確かにそうだ、エリスとギルとオリビアさんにとっては最高の一日になったな。
でも俺にとっても最高の一日だ。
この日の為に、俺はこの世界に転移してきたと言っても過言では無いからね。
「この日をもっと最高の一日にする為に、守さんにお願いがあるんだが聞いてくれるかい?」
「お願いごと?なんだ?俺に出来ることにしてくれよ?」
「この島を救ってくれよ!お願いだよ!」
はあ?
救ってくれとは?
急に話が変わって無いかい?
「それはどういうことなんだ?」
「この島は見ての通り空に浮かぶ島なんだ、それがどうやら年々地上に近づいているみたいなんだよ」
ん?それは高度が下がっているってことなのか?
「そうなのか?」
「ああ、浮遊石が劣化しているんだと思うんだ。風によって浮遊石がゆっくりとだが、削られていっているんだと思う」
「なるほど・・・」
其れならばどうにかできそうだな、但し・・・
「何とか出来ると思う、だが・・・」
「だが?」
「たくさんの神石か魔石が必要になるな」
「それはどれぐらい必要なんだい?」
「こればかりは試してみないと分からないな、でも規模感としては数十個でどうにか出来るとは考えられない。まあ魔石は魔獣の森があるからどうとでもなりそうだけどな」
「そうなんだね・・・後、この街は資源に乏しいんだよ、そんな中でも天使や悪魔達が何とかやりくりしてくれてはいるけど・・・そろそろ限界が近いかもしれないんだよ・・・」
だからあの反応だったんだな。
「それはどうとでもなる、問題はどう稼ぐかだけだな。この島にしかない物は浮遊石以外には何かないのか?」
「この島にしかない物か・・・ちょっと考えてみるよ」
エリスは真剣に考えだした。
眉間に皺が寄っている。
「俺も何が出来るか考えてみるよ」
こうして夜は更けていった。
翌日。
俺達は約束通り天使と悪魔達をサウナ島に招待することになった。
転移扉を設置し、まずはドラゴムに移動する。
ドラゴムでは多くのリザードマン達が、エリスに群がっていた。
「おお!エリス様だ!」
「本当だ!」
「なんという御尊顔!」
「眩しい!」
等と騒いでいた。
手を振って答えるエリス。
満更でもなさそうだ。
ギルも手慣れたもので、世話を焼こうと集まってくるリザードマン達を往なしていた。
「これこれお前達、儂らは先を急いでおる。エリス達はまた立ち寄るからその時にな」
ゼノンが交通整理を行っていた。
群がってくるリザードマン達を宥めている。
そして、サウナ島に繋がる転移扉に手を掛ける。
ゼノンにとっては手慣れた作業だ。
「守よ、行くぞ?」
「ああ」
扉を開けると、受付ではエクスがエリスに驚いていた。
「あら?この子坊やにそっくりじゃないかい?」
俺はエクスを紹介することにした。
にしても何でエクスはそんなに驚いているんだ?
前以って言っておいたよね?
「エクス、こちらはエリスだ、ギルのママだぞ」
「え!マスター!嘘だろ?」
エクスは腰を抜かしそうになっていた。
だから何でなんだよ?
「ママ、エクスは神剣なんだよ。僕が装備者だから僕に似てるんだよ」
ギルが説明する。
「へえー、そうなのかい?神剣なんてのが居るんだねえ」
「お!おいらは神剣のエクス、よろしくです。ギルのママさん」
なんとかエクスは自己紹介していた。
「おや?ママさんだって?嬉しいねえ?」
「エヘヘ」
エリスの発言にエクスは何故だか照れていた。
「さあ、受付を済ませてしまおう」
俺は一同を誘導する。
てかエクスよ、俺の話をちゃんと聞いていたのかい?
人の話はちゃんと聞くものだよ?
甚だ疑問だ。
受付を済ませて、サウナ島に入るとエリスは、
「こんな所がこの世界にあるなんて・・・」
思わず声が漏れていた。
天使や悪魔達も同様に島の景色に見入っていた。
最初は皆な大体この反応だ。
もはや俺は見慣れている。
さて、天使と悪魔達のアテンドはゼノンに任せることにした。
ギルは大見えを切って、天使と悪魔達全員に金貨一枚ずつお駄賃をあげていた。
こういう処は俺に似なくてもいいのにね。
将来苦労するぞ?
ほどほどにな。
この時間ならアースラさんは先ず間違いなく畑に居るはずだ。
俺はギルとエリス、オリビアさんを連れて畑に向かうことにした。
「転移で向かってもいいか?」
「否、守さん。島の様子を眺めながら向かいたい。エアーズロックの参考にしたいんだよ」
エリスからの意外な一言だった。
こう見えてエリスは根は真面目な性格の様だ。
「そうか、分かった。じゃあ着いて来てくれ」
一同を引き連れて、歩いて畑に向かう事にした。
移動中もエリスは何一つ見逃さないと、辺りをキョロキョロと眺めていた。
時々あれは何かこれは何かとギルに尋ねていた。
勉強熱心でいいじゃないか。
そして俺達は畑に辿り着いた。
畑では農業部のスタッフ達が畑作業に勤しんでいた。
俺は農業部のスタッフに声を掛ける。
「やあ、お疲れさん。アースラさんはいるかな?」
「島野さん!ご無沙汰です!アースラ様は田んぼに居るはずですよ」
「そうか、ありがとう」
「どういたしまして!」
猫の獣人のスタッフが応じてくれた。
良く出来たスタッフ達で助かる。
島野商事は安泰だな。
会長として俺は誇らしいよ。
俺達は田んぼに向かった。
丁度田んぼでは収穫の時期を迎えていた。
きっとレケの新作の日本酒の原料になった米を収穫しているのだろう。
黄金色に輝く稲穂が鮮やかに咲き誇っていた。
日本人の俺にはほっとする景色である。
田んぼの中にアースラさんを見つけた。
エリスは田んぼの光景に心を奪われていた。
見るからに感動しているのが伺える。
「素晴らしい・・・」
エリスは呟いていた。
そしてアースラさんがこちらに気づく。
エリスを見つけると一目散に駆け寄ってきた。
「エリス!エリスじゃないか!」
エリスもアースラさんに気付く。
「アースラ様!」
エリスも駆け出した。
抱擁する二人、その光景に周りのスタッフも手を止める。
スタッフ達と俺達は二人を温かく見守っていた。
「アースラ様!会いたかった!」
「エリス!達者だったかえ?」
「はい‼」
「そうかえそうかえ!久しいじゃないかえ?」
「はい‼」
泣きじゃくるエリス。
まるで子供に戻ったかの様だ。
そんなエリスを抱きとめるアースラさん。
俺はまるで絵画でも眺める様にこの光景を眺めていた。
実に絵に成る。
よかったね、エリス。アースラさん。
オリビアさんは貰い泣きしていた。
そしてギルも泣いていた。
側に寄ってきたアイリスさんまで泣きだした。
「お母様、おめでとうございます」
アイリスさんが声を掛ける。
アースラさんは無言で頷いていた。
「会いたかった、ずっと・・・お礼を言いたかった・・・アースラ様・・・ありがとうございます・・・」
「エリスや、そんな事はよいのじゃ、それよりも翼はどうした?生えておるではないかえ?」
人化スタイルなのにアースラさんには分かる様だ。
流石は上級神だ。
「守さんに頂きました、世界樹の実を」
「そうかえそうかえ、よかったではないか、守に託して正解だったようじゃ」
「流石は守さんです」
アイリスさんにも褒められてしまった。
そりゃあエリスに食べさせるに決まっているでしょ。
「いい判断じゃ、守よ。世界樹の葉では心許ないしのう」
「そうです、ドラゴンの翼となると余りにサイズがデカすぎますわ」
アイリスさんも同意見のようだ。
やっぱりか、我ながらグッジョブだ。
これで世界樹の実は後一つ。
もう使う事はないだろうな。
そうあって欲しいものだ。
「アースラ様は私の所為で神罰を・・・」
エリスは申し訳なさそうにしている。
「それ以上言うでないわえ、エリスよ、済んだ話じゃ」
アースラさんはエリスの頭を撫でていた。
「ですが・・・」
「もうよいのじゃ、それよりも見ておくれ!この見事な田んぼを、余の自慢の稲穂達じゃ」
「ええ、見とれてしまっていました」
「今ではこのサウナ島で農業を行うことが余の生きがいじゃよ」
アースラさんは優しい眼でエリスを見つめていた。
「そうですか、素晴らしいです。アースラ様、農業を私にも教えて貰えませんか?エアーズロックの為にも、私は学ばなければなりませんので」
エリスは意外な事を言い出した。
「そうなのかえ?余は構わんが・・・守よ、良いのかえ?」
ちょっと困るな。
俺には違うプランがある。
「そうですね・・・少し考えさせて下さい。というのも、エリスには他にやって欲しい事があるんだ。どうだろうか?」
「そうなのかい?私にどうしろと?」
エリスは困った顔をしていた。
「それは後日話をしよう、俺に考えがあるんだ」
「そうか、私は守さんに従うよ」
エリスは俺に信頼を寄せてくれているようだ。
「ありがとう」
「そんなことより、皆の者よ、今日は仕事は終いじゃ!エリスよ、余に付き合うのじゃ!宴じゃ!宴を催すのじゃ!」
アースラさんは相当上機嫌のご様子。
「守よ!よいな?」
「ええ、構いませんよ」
「会長の許可が出たぞえ!皆の者!スーパー銭湯に集合じゃ!」
こんな嬉しそうなアースラさんは始めてみるな。
なんだかこっちまで嬉しくなってくるよ。
「守よ!ゴチじゃ!」
「「「ゴチになります!!!」」」
はあ?どういうこと?
てかそんな言葉何処で覚えたの?
きっとノンだな?
あの野郎・・・まあいいか。
いよいよ上級神までノンに毒されているようだ。
どうせ食事代は会社持ちだし、ビール三目杯以降は俺持ちになるだろうけど、知れているだろう。
多分・・・
アースラさん達なら可笑しなことにはならないだろう。
「分かりましたよ、遠慮なくどうぞ!」
この俺の発言に一同が沸いた。
「やった!」
「飲むぞ!」
「今日はへべれけになってやる!」
好きに騒いでいた。
あれ?間違ったのか?
まあいいや。
ここで水を差す訳にはいかないしな。
「守よ!お主も付き合うのじゃ!」
「付き合ってくださいますよね?」
俺はアースラさんとアイリスさんに腕を掴まれて、連行されるかの如くスパー銭湯に連れてかれてしまった。
それを見て、ギルとエリスとオリビアさんが腹を抱えて笑っていた。
ちゃんと付き合いますから放してくださいよ。
全く。
俺は逃げませんての!