落ち着きを取り戻した一行は、まずは島の中心を目指さした。
エリスから集落があると教えられたからだ。
この時エリスは人化しており、ギルの背中に乗っていた。
我が子の背に乗れたことが嬉しいのであろう、
「もっと飛ばせー!親父に負けるなー!」
エリスは興奮して叫んでいた。
否、ただのスピード狂かな?
エリスは浅黒い肌に健康的な体躯をしていた。
特徴的なのがその瞳であった。
金色の瞳は人では無い事を彷彿とさせた。
顔立ちがギルに似ていると感じる。
髪形は編み込みで、まるでドレッドヘアーの様にも見えた。
活発な女性であることは見た目から充分に分かる。
直に集落が見えてきた。
これまた、片田舎の街の様相であった。
そこには見慣れた天使と、始めて見る悪魔らしき存在がいた。
悪魔は大して天使と見た目は変わらない。
違いは肌の色ぐらいだった。
後はよく見ると悪魔は尻尾を生やしている者がちらほらといた。
白い天使と、黒い悪魔。
それ以外は何もさほど変わらない。
小さな体躯に羽が生えており、空中を飛び回っていた。
俺達を見つけると、驚いた天使と悪魔達は蜘蛛の子を散らす様に逃げて行った。
全員大慌てだ。
エリスが必死に呼び止めるが、耳を貸そうともしなかった。
この時獣スタイルはギルとゼノンだけである。
それ以外の者達は人化しており、ゼノンとギルの背に乗っている。
天使と悪魔達にはドラゴンを従えた人間たちが攻めてきた様に映ったのかもしれない。
これは後で謝らなければいけないな。
にしても、そんなに人間が嫌いなんだ。
聞いていた通りだな。
アウェー感丸出しである。
そんな天使と悪魔にエリスが声を掛ける。
「大丈夫だ!皆な、集まっておいで!」
エリスの掛け声にやっと数名が反応し、ぞろぞろと集まり出していた。
しかし見るからに腰が引けている。
明らかに及び腰であった。
「安心してよいのだぞ!」
見かねてゼノンも声を掛ける。
すると数名がドラゴンの一人はゼノンであったことを知り、胸を撫で降ろしていた。
「なんだ、ゼノン様か・・・」
「ビックリした・・・」
「なんでエリス様は人化しているんだ?」
混乱は次第に収まりつつあった。
にしても、これまた開発しがいのある街だ。
そもそも空中に浮かぶ島に水は足りているのだろうか?
甚だ疑問だ。
しかし、俺はこの島に大きな可能性を感じていた。
上陸して分かったのだが、此処は可能性の宝庫だった。
詳しくは後ほど話すとしよう。
「突然現れてすまない!敵意は無いから安心して欲しい!俺達は島野一家だ!ギルはエリスの息子だ、そして俺はギルのパパだ!」
この発言に戸惑い出す天使と悪魔達。
「あの・・・島野一家とは?」
「なんでエリス様の息子さんのパパさんが人間なの?」
「ゼノン様が一緒にいるのだから間違いないのだろうが・・・」
まだまだ混乱を押し留めるには至らない。
ここで俺はこれが早いと神気を全身に纏ってみた。
俺の身体の周りに神気が充満する。
その様に、天使と悪魔が腰を抜かしていた。
ゼノンを睨むと、しれっとそっぽを向いていた。
「神でしたか・・・にしても・・・」
「あり得ない神気量・・・」
「人では無かったのか!」
天使と悪魔達が跪き出した。
なんでそうなるの?
そうだった、天使は神の使者だった。
忘れていた。
この反応を見る限り悪魔もそういうことなんだろう。
「「「「「失礼致しました‼‼‼」」」」」
ほぼ全員の天使と悪魔が跪いていた。
中にはワナワナと震えている者もいたが、気にしなくてもいいだろう。
必ず乗り遅れる者はいるのだからね。
「エリスよ、こやつらに教えておらなんだのか?」
「え?何のことだい?親父?」
「お主・・・守達がこの島に来ることを、儂が前もって教えておいたじゃろうが?知らんとは言わせんぞ!」
「そうだった・・・」
やらかしたのはエリスだった。
ゼノンは前もって俺達の訪問をエリスに話してくれていたみたいだ。
それはそうだろう、でなければエリスにあんな歓迎を受ける訳はないからな。
でも俺が神であることは言い忘れていたと、詰めが甘いねぇゼノン君。
「ごめん親父・・・嬉しさがいっぱいで其れ処ではなかったんだ・・・お前達・・・ごめんよ・・・」
シュンとなるエリス。
まあここはエリスを責めてはいけないよね。
だって念願の息子にやっと会えるのだから。
それも百年越しだよ。
そりゃあ他に気が周らなくなるのもしょうがないよね。
此処は大らかに受け止めよう。
「しょうが無いのう・・・まあギルに免じてここは許すとしよう・・・」
ゼノンの野郎、カッコつけやがって・・・なにがギルに免じてだ!お前もやらかしてるんじゃないか!
まあいいや。
で、どうするつもりなのかい?ゼノンさんや?
「して、マルとコロは居るか?」
「「は‼ここに‼」」
一人の天使と、一人の悪魔が前に出てきた。
ゼノンの前で跪く。
「守よ、天使族の族長のマルと、悪魔族の族長のコロじゃ、よろしく頼むぞ」
「ああ、マルとコロだな。立ち上がってくれ」
恐縮しながらも、二人は立ち上がった。
天使と悪魔はゼノンから聞いた通り、小さかった。
天使に関してはアグネスで慣れているから違和感はない。
悪魔に関しては天使とたいして変わらない。
うーん、違いがよく分からん。
「先程も言ったが、俺は島野守だ。よろしく頼む」
「「は‼」」
にしても硬い。
アグネスに見せてやりたいぐらいだ。
でもアグネスに跪かれたら返ってムカつくかも。
舐められていると感じてしまうだろう。
「それで、まずはどうするんだ?ゼノン」
「まずは飯じゃろうな、それ以外あるまい?」
そう言うと思ったよ、この食いしん坊め!
「じゃあ川魚が大量にあるから川魚でいいか?」
その言葉を受けて天使と悪魔達がどよめく。
「川魚ですって?」
「そんな・・・魚なんて食べたことが無い・・・」
「どうやって食べたらいいんだ?」
「野菜と牛乳以外が食べれるなんて・・・」
何とも言い難い声が混じっていた。
野菜と牛乳意外って・・・どんな食生活なんだ?
ヘルシー過ぎやしないか?
ビーガンかよ!
あれ?ビーガンって牛乳は飲んでいいのか?
まあいいや。
「何かしらの理由で魚と肉は食べないのか?なら止めておくが?」
マルとコロが血相を変える。
「いえ!島野様!そうではありません!是非川魚を食べさせてください‼」
「そうです!何卒‼」
マルとコロが祈る様に俺を見つめていた。
「そ、そうなのか?・・・」
余りの迫力だった。
「島野様!お聞き届けください!この島は浮かんでいることから、水とタンパク質が足りておりません!」
タンパク質って・・・何で知っているんだ?
ここは気にしてはいけないな。
スルーするのが嗜みだろう。
「水は我らの魔法で賄っておりますが・・・」
「肉や魚は足りていないと・・・」
「はい・・・年に一度森で狩りを行えるぐらいなのです。その時はそれはもう大騒ぎでして・・・祭りになってしまう始末です」
「そうなのか・・・まあこの先は肉や魚は融通してやるよ」
なんだか可哀そうになってきた。
「本当で御座いますか?‼」
「なんと‼」
キラキラ輝く瞳で見つめられてしまった。
「お、おう!」
必死だなこいつら・・・
「一先ず飯だ!準備するぞ!」
こうしてはいられない。
早くタンパク質を摂らせてやらなければ。
俺はギルとエルと共に魔道コンロと焚火を準備して、まずは川魚を焼いていくことにした。
川で大漁に川魚を確保しておいて良かった。
ていうか足りるのか?
天使と悪魔は見たところ百人ずつは居そうだ。
でも身体が小さいから大丈夫なのか?
でもアグネスはそれなりに大食いだった様な・・・
不安になったので『シマーノ』に転移して、定食屋の厨房に割り込んで、料理長のオクタに一声かけて、ジャイアントブルの肉を大量に持っていった。
すまんなオクタ、料金は後日請求してくれ。
俺はバーベキューコンロを取り出して、次々と肉を焼いていった。
ジュウジュウと肉の焼ける音に、天使と悪魔が興味深々で集まってきた。
そしてお皿を片手に、天使と悪魔が長蛇の列を成していた。
天使と悪魔達は嬉しそうにしている。
中には惜しげもなく涎を垂らしている奴もいた。
汚いっての!
まあそれほどまでにタンパク質を欲しているということなんだろう。
しれっとゼノンとエリスとオリビアさんも列に並んでいた。
なんだこいつら・・・まあ抜け駆けしないだけ益しか。
やれやれだ。
食事は大盛況だった。
大いに盛り上がっている。
肉と魚に天使と悪魔達は大興奮していた。
「旨い!」
「最高!」
「もっと食べねば!」
「栄養価が高い!」
遠慮も無く騒いでいた。
焼き魚と焼き肉は飛ぶ様に減っていった。
俺は川魚のから揚げを作っていく。
これもとても喜ばれた。
「サクサクして美味しい!」
「これはから揚げというのですね、始めて食べました!」
「香ばしい!最高!」
天使と悪魔達はまだまだ食べる気満々だ。
鮭に関しては、バター焼きにすることにした。
簡単でいい、鮭をバターで焼いてしめじを加えるだけだ。
最後にちょろっと醤油をかける。
実に反応がいい。
こちらも飛ぶ様に消えていく。
天使も悪魔も川魚に抵抗がないみたいだ。
好き嫌いが無くて結構!
唯一抵抗を感じているのはノンだ。
小骨が面倒だと煩い。
贅沢言うんじゃないよ!全く。
飲みこんじゃえ!
それは駄目か?
次にニジマスをニンニクとバターでムニエルにする。
そして小麦粉もまぶしていく。
これは旨いに決まっている。
天使と悪魔は唸りながらムニエルを食していた。
「何と、ニンニクにこのような使い方があったとは」
「このバターは我らのバターと一味違う、とても味が濃い」
「このニジマスという川魚に実に合っていますね」
こいつらも料理に興味があるみたいだ。
調理法にいちいち唸っている。
これまで制限された食材の中で、いろいろと工夫してきたのだろう。
この先はいろいろな食材で料理を楽しんでくださいな。
ならばこれもどうだろうか?
ちょっと手心を加えたくなってきた。
ここは出し惜しみをしてはいけない。
俺は飯盒を取り出して、鮎の炊き込みご飯を仕込みだした。
調理法は難しくは無い。
まずは一度鮎を炙る、そして研いだ米を準備し、そこに鮎と生姜、醤油と酒を適量垂らす。
後はお米を炊いて、炊き上がったら、鮎の中骨と尻尾を取り除く。
最後に紫蘇を散らして完成だ。
何てこと無い簡単な料理だ。
個人的には飯盒でお米を炊いているから、おこげが嬉しい。
「なんていい匂い!」
「これはいったい!」
「幸せの予感!」
ゼノンを見ると、恥ずかしげも無く涎を垂らしていた。
お前もかよ!
炊き込みご飯は驚くほどに評判がよかった。
エリスも喜んで食べていた。
否、大興奮して食べていた。
流石はドラゴン、無茶苦茶たくさん食べていた。
ギルとゼノンと同様にエリスも大食いみたいだ。
だろうなとは思っていたが、案の定だ。
食事を口に運ぶ度にエリスは、
「旨い!」
「美味しい!」
「最高!」
等と叫んでいた。
正直な人だ、というより心の声が無意識に口に出てしまうタイプの様だ。
にしても川魚を大量に準備しておいて良かったよ。
手土産としては打って付けだったな。
ナイス判断!俺!
誰も褒めてくれないから自画自賛です!
そして要らない一声がゼノンから掛けられる。
「守よ、無いのか?」
指をクイクイとしてお猪口を持っているかの様に動かしていた。
この野郎、今度は酒のおねだりかよ。
「はあ?アルコールも振舞えってか?」
「駄目か?期待していたのじゃがのう」
「お前なあ・・・」
この会話を耳にした天使と悪魔が期待の眼差しで俺を見ていた。
そんな眼で見るんじゃないよ!
用意するしかないじゃないか!
やれやれだ。
「しょうがないなあ・・・ゼノン、何が飲みたいんだ?」
「儂は日本酒じゃな、こやつらはワインでいいのじゃないか?」
「はあ?簡単に言いやがって・・・」
そうだ、レケの日本酒はどうだろうか?
「レケ!お前の新作の日本酒はどうなんだ?振舞えるのか?」
レケは明らかに嫌そうな顔をしていた。
「ボス・・・それは俺が奢れってことか?」
「否、俺が買い取ってやる。割り増し料金でいいぞ、それならどうだ?」
流石にレケに酒を奢らせるには気が引ける。
しょうがない、俺が支払うしかないでしょう。
「ボスが買い取ってくれるなら俺はいいけど・・・」
流石のレケもこの雰囲気に飲み込まれそうだった。
それは余りに可哀そうだ。
後日しまったと項垂れているレケが透けて見える。
「そうしよう、ここでお前に奢らせる訳にはいかないからな」
ここでギルからまさかの一声が掛けられた。
「僕は自分のワインを振舞わせてもらうよ!僕はレケのお兄ちゃんなんでね‼」
実はワインに嵌ったギルは、今ではワインの製作に拘っていた。
甘いワインの大好きなギルは、自分でワイン工房を持つほどの嵌り様だった。
熟成の能力を得たいと、暇さえあれば俺は特訓に付き合わされている始末だったのだ。
そんなギルが僕は奢るよと、大見えを切ったのだ。
ていうか、弟発言を根に持っていたのね・・・
「なに!・・・じゃあ俺も躍らせて貰おうか!俺はギルのお姉ちゃんなんでね!」
なんで張り合ってんだか・・・
まあ好きにしてくれ。
こうなってしまっては、俺は手を引くしかないな。
知らないぞお前ら・・・
調子に乗ってワインと新作の日本酒を振舞うギルとレケ。
当然の様に御相伴に預かるゼノンとエリスとオリビアさん、そして天使と悪魔達。
特に嬉しかったのかエリスの騒ぎようは凄かった。
「坊やのワインは旨い‼最高だよ‼じゃんじゃん注いじゃってくれ‼」
今にも飛び出さんかという勢いだった。
「そう言うがなエリスよ、この日本酒も素晴らしいぞ!飲んでみよ!」
ゼノンに褒められてレケも有頂天だ。
「ギルのワインも悪くねえが、俺の日本酒の方が数段旨えな!だろ?お前ら?」
この発言の答えに困る天使と悪魔達。
ここは答えてはならないと、全員が目くばせをしていた。
しかし酔っぱらったレケはしつこい。
逃がしてくれる訳がない。
「おい!答えろよ!お前ら!」
「レケ!強制するなよ!」
ギルが割って入る。
「はあ?ギル!お姉さんになんて口利いてんだよ!」
「誰がお姉さんなんだよ!お兄さんになんて口を利いてんだよ!」
一気にヒートアップしていた。
始まったよ・・・否、再燃か?
これは良くない。
そろそろ俺の出番か?
ここで珍しくノンとゴンが前に出てきた。
「ギル、レケ、大人気ないぞ!」
「はあ?ノン、いいだろうが!」
レケがノンに食ってかかる。
「ノン兄、どっちが旨いと思う?」
ギルも止まらない。
「どっちも美味しいよギル」
ゴンが横から宥めようとする。
「ゴン!どっちが旨えんだよ?」
レケも譲らない。
「じゃあこうしようか?」
ノンが閃いたと手を叩く。
「どっちが美味しいかを天使と悪魔達に決めて貰おう、そして勝った方がお兄ちゃんかお姉ちゃんだ」
「マジか?いいぜ!やってやるぜ!」
「フン!僕が勝つに決まっているよ!」
ギルがしたたかにほほ笑む。
こうして日本酒が旨いか、ワインが旨いか選手権が始まってしまった。
これはただの好みの問題だと思うのだが・・・
それに受け入れやすいのは・・・
水を差すのも気が引けるので、俺は黙っておいた。
正直結果は見えている。
巻き込まれた天使と悪魔達は戦々恐々としていた。
エリスの息子であるギルの肩を持ちたいのだが、レケの睨みに身が竦む思いだったのだ。
そこに声が掛けられる。
「お前達、ここは忖度無しじゃぞ。ギルがドラゴンである事はこの件には関係無しじゃからな」
ゼノンが公正を期そうとする。
「そうだよ!本当に美味しいと思う方に一票を入れてよね」
ギルも更に背中を押す。
「そうだぞ!自分の舌に嘘はついちゃぁいけねえ!」
レケの一言に頷く天使と悪魔達。
これで状況は整ったみたいだ。
天使と悪魔達はもう一度、一杯ずつ日本酒とワインを飲んだ。
舌で入念に味を確かめている。
よく見るとふらついている者達も数名いた。
大丈夫なのか?
飲めないのに無理してないか?
下戸の者は止めておけよ。
そして結果が発表される。
ワインが圧倒的な支持を受けていた。
それはそうであろう。
余りに簡単な事だ。
ギルのワインは甘くて芳醇なワインだ。
素人が受け入れやすいアルコールだ。
それに比べてレケの日本酒は玄人受けする一品だ。
味は確かにいい、だが決め手は味では無いのだ。
受け入れやすいかどうかなのだから。
天使も悪魔も酒に関しては素人であろう事は見ていれば分る。
ギルが圧倒的に有利であった。
それをギルは見抜いていたのだろう。
あいつは案外したたかだからね。
レケはそんなことは全く見抜けていない。
勢いのままに勝負を挑んだからな。
レケは悔しそうにしていた。
「くそう!何で俺の日本酒が負けなんだよ!あり得ねえだろ?」
「レケ、これで僕がお兄ちゃんだからね。もうグチグチ言うのも無しだよ!」
「ちっ!分かったよ。ギル兄!」
にやけるギル。
「レケ、決してお前の日本酒の味が負けた訳ではないから勘違いするなよ」
レケが不思議そうにしている。
「ボス、どういう事だよ?」
「簡単なことさ、おそらく天使や悪魔達はこれまであまりアルコールを飲んだことがないのだろう、そうなると味の良し悪しよりも、受け入れやすいかどうかがポイントになってくる。ギルのワインは甘くて芳醇だ、レケの日本酒は辛みがあり、奥に甘みを感じる、日本酒はワインよりも受け入れずらいからな」
「そうなのかよ・・・」
「どうせ見抜いていたんだろう?ギル」
「バレちゃったか」
このやり取りを興味深くエリスが眺めていた。
何か言いたげな表情をしている。
それにしてもやっと決着が着いたみたいだ。
なんだったんだ、いったい?
そんなに兄貴だ姉だと拘る必要があるのかね?
よく分からん。
その後も楽しい宴会は続いた。
エリスから集落があると教えられたからだ。
この時エリスは人化しており、ギルの背中に乗っていた。
我が子の背に乗れたことが嬉しいのであろう、
「もっと飛ばせー!親父に負けるなー!」
エリスは興奮して叫んでいた。
否、ただのスピード狂かな?
エリスは浅黒い肌に健康的な体躯をしていた。
特徴的なのがその瞳であった。
金色の瞳は人では無い事を彷彿とさせた。
顔立ちがギルに似ていると感じる。
髪形は編み込みで、まるでドレッドヘアーの様にも見えた。
活発な女性であることは見た目から充分に分かる。
直に集落が見えてきた。
これまた、片田舎の街の様相であった。
そこには見慣れた天使と、始めて見る悪魔らしき存在がいた。
悪魔は大して天使と見た目は変わらない。
違いは肌の色ぐらいだった。
後はよく見ると悪魔は尻尾を生やしている者がちらほらといた。
白い天使と、黒い悪魔。
それ以外は何もさほど変わらない。
小さな体躯に羽が生えており、空中を飛び回っていた。
俺達を見つけると、驚いた天使と悪魔達は蜘蛛の子を散らす様に逃げて行った。
全員大慌てだ。
エリスが必死に呼び止めるが、耳を貸そうともしなかった。
この時獣スタイルはギルとゼノンだけである。
それ以外の者達は人化しており、ゼノンとギルの背に乗っている。
天使と悪魔達にはドラゴンを従えた人間たちが攻めてきた様に映ったのかもしれない。
これは後で謝らなければいけないな。
にしても、そんなに人間が嫌いなんだ。
聞いていた通りだな。
アウェー感丸出しである。
そんな天使と悪魔にエリスが声を掛ける。
「大丈夫だ!皆な、集まっておいで!」
エリスの掛け声にやっと数名が反応し、ぞろぞろと集まり出していた。
しかし見るからに腰が引けている。
明らかに及び腰であった。
「安心してよいのだぞ!」
見かねてゼノンも声を掛ける。
すると数名がドラゴンの一人はゼノンであったことを知り、胸を撫で降ろしていた。
「なんだ、ゼノン様か・・・」
「ビックリした・・・」
「なんでエリス様は人化しているんだ?」
混乱は次第に収まりつつあった。
にしても、これまた開発しがいのある街だ。
そもそも空中に浮かぶ島に水は足りているのだろうか?
甚だ疑問だ。
しかし、俺はこの島に大きな可能性を感じていた。
上陸して分かったのだが、此処は可能性の宝庫だった。
詳しくは後ほど話すとしよう。
「突然現れてすまない!敵意は無いから安心して欲しい!俺達は島野一家だ!ギルはエリスの息子だ、そして俺はギルのパパだ!」
この発言に戸惑い出す天使と悪魔達。
「あの・・・島野一家とは?」
「なんでエリス様の息子さんのパパさんが人間なの?」
「ゼノン様が一緒にいるのだから間違いないのだろうが・・・」
まだまだ混乱を押し留めるには至らない。
ここで俺はこれが早いと神気を全身に纏ってみた。
俺の身体の周りに神気が充満する。
その様に、天使と悪魔が腰を抜かしていた。
ゼノンを睨むと、しれっとそっぽを向いていた。
「神でしたか・・・にしても・・・」
「あり得ない神気量・・・」
「人では無かったのか!」
天使と悪魔達が跪き出した。
なんでそうなるの?
そうだった、天使は神の使者だった。
忘れていた。
この反応を見る限り悪魔もそういうことなんだろう。
「「「「「失礼致しました‼‼‼」」」」」
ほぼ全員の天使と悪魔が跪いていた。
中にはワナワナと震えている者もいたが、気にしなくてもいいだろう。
必ず乗り遅れる者はいるのだからね。
「エリスよ、こやつらに教えておらなんだのか?」
「え?何のことだい?親父?」
「お主・・・守達がこの島に来ることを、儂が前もって教えておいたじゃろうが?知らんとは言わせんぞ!」
「そうだった・・・」
やらかしたのはエリスだった。
ゼノンは前もって俺達の訪問をエリスに話してくれていたみたいだ。
それはそうだろう、でなければエリスにあんな歓迎を受ける訳はないからな。
でも俺が神であることは言い忘れていたと、詰めが甘いねぇゼノン君。
「ごめん親父・・・嬉しさがいっぱいで其れ処ではなかったんだ・・・お前達・・・ごめんよ・・・」
シュンとなるエリス。
まあここはエリスを責めてはいけないよね。
だって念願の息子にやっと会えるのだから。
それも百年越しだよ。
そりゃあ他に気が周らなくなるのもしょうがないよね。
此処は大らかに受け止めよう。
「しょうが無いのう・・・まあギルに免じてここは許すとしよう・・・」
ゼノンの野郎、カッコつけやがって・・・なにがギルに免じてだ!お前もやらかしてるんじゃないか!
まあいいや。
で、どうするつもりなのかい?ゼノンさんや?
「して、マルとコロは居るか?」
「「は‼ここに‼」」
一人の天使と、一人の悪魔が前に出てきた。
ゼノンの前で跪く。
「守よ、天使族の族長のマルと、悪魔族の族長のコロじゃ、よろしく頼むぞ」
「ああ、マルとコロだな。立ち上がってくれ」
恐縮しながらも、二人は立ち上がった。
天使と悪魔はゼノンから聞いた通り、小さかった。
天使に関してはアグネスで慣れているから違和感はない。
悪魔に関しては天使とたいして変わらない。
うーん、違いがよく分からん。
「先程も言ったが、俺は島野守だ。よろしく頼む」
「「は‼」」
にしても硬い。
アグネスに見せてやりたいぐらいだ。
でもアグネスに跪かれたら返ってムカつくかも。
舐められていると感じてしまうだろう。
「それで、まずはどうするんだ?ゼノン」
「まずは飯じゃろうな、それ以外あるまい?」
そう言うと思ったよ、この食いしん坊め!
「じゃあ川魚が大量にあるから川魚でいいか?」
その言葉を受けて天使と悪魔達がどよめく。
「川魚ですって?」
「そんな・・・魚なんて食べたことが無い・・・」
「どうやって食べたらいいんだ?」
「野菜と牛乳以外が食べれるなんて・・・」
何とも言い難い声が混じっていた。
野菜と牛乳意外って・・・どんな食生活なんだ?
ヘルシー過ぎやしないか?
ビーガンかよ!
あれ?ビーガンって牛乳は飲んでいいのか?
まあいいや。
「何かしらの理由で魚と肉は食べないのか?なら止めておくが?」
マルとコロが血相を変える。
「いえ!島野様!そうではありません!是非川魚を食べさせてください‼」
「そうです!何卒‼」
マルとコロが祈る様に俺を見つめていた。
「そ、そうなのか?・・・」
余りの迫力だった。
「島野様!お聞き届けください!この島は浮かんでいることから、水とタンパク質が足りておりません!」
タンパク質って・・・何で知っているんだ?
ここは気にしてはいけないな。
スルーするのが嗜みだろう。
「水は我らの魔法で賄っておりますが・・・」
「肉や魚は足りていないと・・・」
「はい・・・年に一度森で狩りを行えるぐらいなのです。その時はそれはもう大騒ぎでして・・・祭りになってしまう始末です」
「そうなのか・・・まあこの先は肉や魚は融通してやるよ」
なんだか可哀そうになってきた。
「本当で御座いますか?‼」
「なんと‼」
キラキラ輝く瞳で見つめられてしまった。
「お、おう!」
必死だなこいつら・・・
「一先ず飯だ!準備するぞ!」
こうしてはいられない。
早くタンパク質を摂らせてやらなければ。
俺はギルとエルと共に魔道コンロと焚火を準備して、まずは川魚を焼いていくことにした。
川で大漁に川魚を確保しておいて良かった。
ていうか足りるのか?
天使と悪魔は見たところ百人ずつは居そうだ。
でも身体が小さいから大丈夫なのか?
でもアグネスはそれなりに大食いだった様な・・・
不安になったので『シマーノ』に転移して、定食屋の厨房に割り込んで、料理長のオクタに一声かけて、ジャイアントブルの肉を大量に持っていった。
すまんなオクタ、料金は後日請求してくれ。
俺はバーベキューコンロを取り出して、次々と肉を焼いていった。
ジュウジュウと肉の焼ける音に、天使と悪魔が興味深々で集まってきた。
そしてお皿を片手に、天使と悪魔が長蛇の列を成していた。
天使と悪魔達は嬉しそうにしている。
中には惜しげもなく涎を垂らしている奴もいた。
汚いっての!
まあそれほどまでにタンパク質を欲しているということなんだろう。
しれっとゼノンとエリスとオリビアさんも列に並んでいた。
なんだこいつら・・・まあ抜け駆けしないだけ益しか。
やれやれだ。
食事は大盛況だった。
大いに盛り上がっている。
肉と魚に天使と悪魔達は大興奮していた。
「旨い!」
「最高!」
「もっと食べねば!」
「栄養価が高い!」
遠慮も無く騒いでいた。
焼き魚と焼き肉は飛ぶ様に減っていった。
俺は川魚のから揚げを作っていく。
これもとても喜ばれた。
「サクサクして美味しい!」
「これはから揚げというのですね、始めて食べました!」
「香ばしい!最高!」
天使と悪魔達はまだまだ食べる気満々だ。
鮭に関しては、バター焼きにすることにした。
簡単でいい、鮭をバターで焼いてしめじを加えるだけだ。
最後にちょろっと醤油をかける。
実に反応がいい。
こちらも飛ぶ様に消えていく。
天使も悪魔も川魚に抵抗がないみたいだ。
好き嫌いが無くて結構!
唯一抵抗を感じているのはノンだ。
小骨が面倒だと煩い。
贅沢言うんじゃないよ!全く。
飲みこんじゃえ!
それは駄目か?
次にニジマスをニンニクとバターでムニエルにする。
そして小麦粉もまぶしていく。
これは旨いに決まっている。
天使と悪魔は唸りながらムニエルを食していた。
「何と、ニンニクにこのような使い方があったとは」
「このバターは我らのバターと一味違う、とても味が濃い」
「このニジマスという川魚に実に合っていますね」
こいつらも料理に興味があるみたいだ。
調理法にいちいち唸っている。
これまで制限された食材の中で、いろいろと工夫してきたのだろう。
この先はいろいろな食材で料理を楽しんでくださいな。
ならばこれもどうだろうか?
ちょっと手心を加えたくなってきた。
ここは出し惜しみをしてはいけない。
俺は飯盒を取り出して、鮎の炊き込みご飯を仕込みだした。
調理法は難しくは無い。
まずは一度鮎を炙る、そして研いだ米を準備し、そこに鮎と生姜、醤油と酒を適量垂らす。
後はお米を炊いて、炊き上がったら、鮎の中骨と尻尾を取り除く。
最後に紫蘇を散らして完成だ。
何てこと無い簡単な料理だ。
個人的には飯盒でお米を炊いているから、おこげが嬉しい。
「なんていい匂い!」
「これはいったい!」
「幸せの予感!」
ゼノンを見ると、恥ずかしげも無く涎を垂らしていた。
お前もかよ!
炊き込みご飯は驚くほどに評判がよかった。
エリスも喜んで食べていた。
否、大興奮して食べていた。
流石はドラゴン、無茶苦茶たくさん食べていた。
ギルとゼノンと同様にエリスも大食いみたいだ。
だろうなとは思っていたが、案の定だ。
食事を口に運ぶ度にエリスは、
「旨い!」
「美味しい!」
「最高!」
等と叫んでいた。
正直な人だ、というより心の声が無意識に口に出てしまうタイプの様だ。
にしても川魚を大量に準備しておいて良かったよ。
手土産としては打って付けだったな。
ナイス判断!俺!
誰も褒めてくれないから自画自賛です!
そして要らない一声がゼノンから掛けられる。
「守よ、無いのか?」
指をクイクイとしてお猪口を持っているかの様に動かしていた。
この野郎、今度は酒のおねだりかよ。
「はあ?アルコールも振舞えってか?」
「駄目か?期待していたのじゃがのう」
「お前なあ・・・」
この会話を耳にした天使と悪魔が期待の眼差しで俺を見ていた。
そんな眼で見るんじゃないよ!
用意するしかないじゃないか!
やれやれだ。
「しょうがないなあ・・・ゼノン、何が飲みたいんだ?」
「儂は日本酒じゃな、こやつらはワインでいいのじゃないか?」
「はあ?簡単に言いやがって・・・」
そうだ、レケの日本酒はどうだろうか?
「レケ!お前の新作の日本酒はどうなんだ?振舞えるのか?」
レケは明らかに嫌そうな顔をしていた。
「ボス・・・それは俺が奢れってことか?」
「否、俺が買い取ってやる。割り増し料金でいいぞ、それならどうだ?」
流石にレケに酒を奢らせるには気が引ける。
しょうがない、俺が支払うしかないでしょう。
「ボスが買い取ってくれるなら俺はいいけど・・・」
流石のレケもこの雰囲気に飲み込まれそうだった。
それは余りに可哀そうだ。
後日しまったと項垂れているレケが透けて見える。
「そうしよう、ここでお前に奢らせる訳にはいかないからな」
ここでギルからまさかの一声が掛けられた。
「僕は自分のワインを振舞わせてもらうよ!僕はレケのお兄ちゃんなんでね‼」
実はワインに嵌ったギルは、今ではワインの製作に拘っていた。
甘いワインの大好きなギルは、自分でワイン工房を持つほどの嵌り様だった。
熟成の能力を得たいと、暇さえあれば俺は特訓に付き合わされている始末だったのだ。
そんなギルが僕は奢るよと、大見えを切ったのだ。
ていうか、弟発言を根に持っていたのね・・・
「なに!・・・じゃあ俺も躍らせて貰おうか!俺はギルのお姉ちゃんなんでね!」
なんで張り合ってんだか・・・
まあ好きにしてくれ。
こうなってしまっては、俺は手を引くしかないな。
知らないぞお前ら・・・
調子に乗ってワインと新作の日本酒を振舞うギルとレケ。
当然の様に御相伴に預かるゼノンとエリスとオリビアさん、そして天使と悪魔達。
特に嬉しかったのかエリスの騒ぎようは凄かった。
「坊やのワインは旨い‼最高だよ‼じゃんじゃん注いじゃってくれ‼」
今にも飛び出さんかという勢いだった。
「そう言うがなエリスよ、この日本酒も素晴らしいぞ!飲んでみよ!」
ゼノンに褒められてレケも有頂天だ。
「ギルのワインも悪くねえが、俺の日本酒の方が数段旨えな!だろ?お前ら?」
この発言の答えに困る天使と悪魔達。
ここは答えてはならないと、全員が目くばせをしていた。
しかし酔っぱらったレケはしつこい。
逃がしてくれる訳がない。
「おい!答えろよ!お前ら!」
「レケ!強制するなよ!」
ギルが割って入る。
「はあ?ギル!お姉さんになんて口利いてんだよ!」
「誰がお姉さんなんだよ!お兄さんになんて口を利いてんだよ!」
一気にヒートアップしていた。
始まったよ・・・否、再燃か?
これは良くない。
そろそろ俺の出番か?
ここで珍しくノンとゴンが前に出てきた。
「ギル、レケ、大人気ないぞ!」
「はあ?ノン、いいだろうが!」
レケがノンに食ってかかる。
「ノン兄、どっちが旨いと思う?」
ギルも止まらない。
「どっちも美味しいよギル」
ゴンが横から宥めようとする。
「ゴン!どっちが旨えんだよ?」
レケも譲らない。
「じゃあこうしようか?」
ノンが閃いたと手を叩く。
「どっちが美味しいかを天使と悪魔達に決めて貰おう、そして勝った方がお兄ちゃんかお姉ちゃんだ」
「マジか?いいぜ!やってやるぜ!」
「フン!僕が勝つに決まっているよ!」
ギルがしたたかにほほ笑む。
こうして日本酒が旨いか、ワインが旨いか選手権が始まってしまった。
これはただの好みの問題だと思うのだが・・・
それに受け入れやすいのは・・・
水を差すのも気が引けるので、俺は黙っておいた。
正直結果は見えている。
巻き込まれた天使と悪魔達は戦々恐々としていた。
エリスの息子であるギルの肩を持ちたいのだが、レケの睨みに身が竦む思いだったのだ。
そこに声が掛けられる。
「お前達、ここは忖度無しじゃぞ。ギルがドラゴンである事はこの件には関係無しじゃからな」
ゼノンが公正を期そうとする。
「そうだよ!本当に美味しいと思う方に一票を入れてよね」
ギルも更に背中を押す。
「そうだぞ!自分の舌に嘘はついちゃぁいけねえ!」
レケの一言に頷く天使と悪魔達。
これで状況は整ったみたいだ。
天使と悪魔達はもう一度、一杯ずつ日本酒とワインを飲んだ。
舌で入念に味を確かめている。
よく見るとふらついている者達も数名いた。
大丈夫なのか?
飲めないのに無理してないか?
下戸の者は止めておけよ。
そして結果が発表される。
ワインが圧倒的な支持を受けていた。
それはそうであろう。
余りに簡単な事だ。
ギルのワインは甘くて芳醇なワインだ。
素人が受け入れやすいアルコールだ。
それに比べてレケの日本酒は玄人受けする一品だ。
味は確かにいい、だが決め手は味では無いのだ。
受け入れやすいかどうかなのだから。
天使も悪魔も酒に関しては素人であろう事は見ていれば分る。
ギルが圧倒的に有利であった。
それをギルは見抜いていたのだろう。
あいつは案外したたかだからね。
レケはそんなことは全く見抜けていない。
勢いのままに勝負を挑んだからな。
レケは悔しそうにしていた。
「くそう!何で俺の日本酒が負けなんだよ!あり得ねえだろ?」
「レケ、これで僕がお兄ちゃんだからね。もうグチグチ言うのも無しだよ!」
「ちっ!分かったよ。ギル兄!」
にやけるギル。
「レケ、決してお前の日本酒の味が負けた訳ではないから勘違いするなよ」
レケが不思議そうにしている。
「ボス、どういう事だよ?」
「簡単なことさ、おそらく天使や悪魔達はこれまであまりアルコールを飲んだことがないのだろう、そうなると味の良し悪しよりも、受け入れやすいかどうかがポイントになってくる。ギルのワインは甘くて芳醇だ、レケの日本酒は辛みがあり、奥に甘みを感じる、日本酒はワインよりも受け入れずらいからな」
「そうなのかよ・・・」
「どうせ見抜いていたんだろう?ギル」
「バレちゃったか」
このやり取りを興味深くエリスが眺めていた。
何か言いたげな表情をしている。
それにしてもやっと決着が着いたみたいだ。
なんだったんだ、いったい?
そんなに兄貴だ姉だと拘る必要があるのかね?
よく分からん。
その後も楽しい宴会は続いた。