帰ったら、夫が違う女と抱き合っていた。不倫だ。そこからは、戦いだった。結婚式も予定していて、賠償金請求出来る。幼馴染の弁護士と共に戦った。読者の皆様は、幼馴染の弁護士とくっつくとお思いだろう。しかし私と一緒になったのは、他でもないお稲荷様だった。
バリバリ仕事をするキャリアウーマンの私、琴野紗季(ことのさき)。休みの日は、夫をほったらかしにしてジムに通う日々。プレゼントにはプロテインをねだる始末。そのかわり自分で言うのもあれだが、スタイルも良い上に高収入。つまり、《高嶺の花》の筈だ。けど、夫には愛想を尽かされてしまった。疑問でしかない。ボンキュボンの私になんの不満が?到底理解に苦しむ。こういう自己肯定感が強いのも嫌だったのだろう。いつもならプラス思考の私も流石に落ち込んでいた。こんな時は神様に頼もう。小さい時から通っている、稲荷神社に行くことにした。
お参りした後、ベンチに座った。お参りの内容聞きたい?ナイショふふふ。そんな事考えていたら、一陣の風が吹いた。そこには、耳と尻尾をはやした、眼鏡イケメン。どうゆうこっちゃ?コスプレか何か?でも、一陣の風で現れるって?人外?
紗季 「どなたですか?」
お稲荷様「某を覚えてないだと?」
紗季 「はい。覚えてないです。」
お稲荷様「失礼なやつだ。」
紗季 「それについては謝ります。ごめんなさい。いつ会いました?」
お稲荷様「お前が二つか三つのときだ」
紗季 「いや、覚えてる理由なかろう!」
お稲荷様「人間ってそうゆう者か?」
紗季 「そうですよ?当たり前です。」
お稲荷様「某は、お前に恩返しに来た。有り難いだろう。」
紗季 「いやあ、何したかも分からないのに。」
お稲荷様「まぁ良い。某の寵愛を一心に受けるが良い。」
紗季 「それは、有り難いけど……ね。お稲荷様の世界には行けないというか……その…………ごめんなさい。」
お稲荷様「何?この某が振られただと?まぁ良い。これから某を知ってもらう。お前この神社の巫女になれ。」
紗季 「はぁ?ジムと仕事には行っていい?」
お稲荷様「いいが。ジムってなんだ?」
紗季 「身体を鍛えるとこ。」
お稲荷様「某も行ってみたい。」
紗季 「いいけど?耳と尻尾は隠さないと。」
お稲荷様「いいが。惚れるなよ。」
ボンっと音がした。そこには、黄金色の髪を持つ眼鏡イケメン。瞳は緑色だ。
紗季 「誰でも惚れるよ。かっこよすぎ!!」
お稲荷様「某の寵愛を受ける気にはなったか?」
紗季 「それはない。私、失恋したばっかりよ。あり得ない。」
お稲荷様「知っている。弱みを握るはずだったのに。」
紗季 「何で知っているの?怖。」
お稲荷様「一つ言ってなかった。某がこの世にいるためには、一週間に一回交尾をしなければならない。」
紗季 「はぁ?なにそれ?てか某ってやめなよ。最近の人は俺って言うのよ。」
お稲荷様「お……俺?変だな。てかいいのか?交尾しても?」
紗季 「いいよ。イケメンとセックスできるのなんて、もうこの先ないし。」
お稲荷様「何を言っておる?一生、お前は、俺と交尾するのだが?」
紗季 「さっきから交尾交尾うるさい。ジム行くんでしょ?」
お稲荷様「行く。」
そんなこんなでジムに行った。その前に家により、ジャージに着替えた。少ない男物の服をお荷様に着せた。なかなか、眼福だ。お荷様は、《スタイル良いな》と言いながら、お腹周りを手で包み込む。我ながら可愛くない声が出た。ジムでは、筋肉がないお荷様は何も出来ていなかった。そんなお稲荷様も可愛いと思ったのはここだけの秘密。お荷様と外で呼ぶのは変だから、和國(かずくに)略してくーちゃんと呼ぶことにした。
巫女になってから、一ヶ月。くーちゃんの夜はすごかった。一週間に一回とはいえ、腰が立たない。生まれたばかりの子鹿みたいに、次の日は立てない。仕事を辞めざる負えなかった。だがこの神社には、金がある。ある富豪が作った神社らしい。ある日夢を見た。三十二年前。私は死んだ。そこにはくーちゃんがいて、それはそれは豪華な葬式だった。くーちゃんが泣いている。そしてくーちゃんはこの神社に引きこもってしまう。そんな夢だった。一週間経っても覚えている。くーちゃんに話してみた。
紗季 「………という夢を見たの。」
くーちゃん「紗季よく聞け。それは前世の記憶。紗季は二十八だろう。輪廻転生は、四年と少しで転生出来る。三十二年前の今日。紗季は死んだ。いや、彩と呼んだほうが正しいか?」
彩と呼ばれた瞬間、すべてを思い出した。死にそうなくーちゃんを助けた。当時、彩三歳。おにぎりをあげた。初めてのお弁当だった。生き返ったくーちゃんには家が無かった。正しくは神社だ。誰にも崇拝されないお荷様のくーちゃん。その当時、富豪の娘だった彩は親に頼んで稲荷神社を作って貰う。親もくーちゃんが見えた。だから、五歳という若くして亡くなった彩の、転生後の為にたくさんのお金を残した事。そして誰よりもくーちゃんが大好きだった事も。涙が溢れ出た。
紗季 「くーちゃんごめん。ずっと、忘れてて。くーちゃん大好き。付き合って。」
くーちゃん「その言葉を待っていた。宜しく紗季。いや、彩。」
その日の夜は、くーちゃんに何度も何度も絶頂に導かれた。気絶するように眠った。幸せだ。不倫した旦那に礼を言わなくては。不倫してくれたお陰でくーちゃんに会えたのだから。
六十年後。紗季はまた死んだ。四年7ヶ月後。彩は、夏鈴としてまた誕生しまた五歳の時くーちゃんと出会った。
くーちゃん「夏鈴。また会えたな。」
夏鈴 「おにーさん誰?」
くーちゃん「覚えてないなど失礼なやつだ。和國だ覚えておけ。」
夏鈴 「くーちゃんだね。宜しくくーちゃん!!」