☆本話の作業用BGMは、『アンダルシアに憧れて』(真島昌利)でした。
 マ●チ版より賑やかですが、真島さんの方がより哀愁を帯びている気がいたします。
 文中に登場する※の曲もリピートで。胸アツです。

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 今、ドはまりしている漫画があるのですよ、お母さま。

 主人公初デート回において、「初デートでテーマパークに行ってはいけない」という相手方の娘さんのセリフがありまして。
 待ち時間が長いと二人の仲が悪化することがある、ということだそうです。

 ここに、人間関係というか人間性に関するキモがあると、わたくし思いました(キリッ)。
 漫画を侮ってはなりません。
 ココがクリアできるなら、世の争いごとも無くなるかもしれない……。

 ……なんだか壮大な話になりそうですが、ただ今絶賛「かもしれない運動」期間なので。
 二週間くらいですかね、お巡りさんが町中(まちなか)からはけるまで(?)。
 エロエロ妄想が捗りますが、それまでは慎重に、大人しくしていようと思っているのでございます。

 そういえば、まだ爽太くんとテーマパークに行ったことは……。
 動物園もカウントされるのでしょうか。


☆☆☆


 まだまだ暑い日が続いて嫌になりますが、目の前に座るお客さんは何故か涼し気です。
 目にも鮮やかな黄色いTシャツ黄色の短パンに、ご丁寧にもイエローの靴下。
 薄目で眺めると、ふ●っしーに見えないことも――ないですね。気の所為でした。
 晋三です。薄目で見ても所詮は晋三、カモメはカモメでした。

 手慣れた所作で硬貨を投入すると、『マ●チでぇ~す! 惚~れ(以下割愛)』というボタンを押下します。


【ご無沙汰です! よかったらこれどうぞ!】

 晋三は爽快に挨拶すると、水滴の付いたお茶のペットボトルをずいっと卓上へ置きました。
 ついさっき、自販機で当たりが出たそうです。
 当たり……だと? ()()(ツイてないの巣窟)に来る途中で?

 ……分を弁えなさい、晋三だろ? 君。
 にこにこしやがってク●が!

 ……ごめんなさい、言い過ぎました。

「お、おお、かっちけない…………お前……」
【なんですか神幸ちゃん?】
「名前で呼ぶな」

 もう、身銭を切ってこんなトコ来なくても……とは思うのですが。
 相手が誰か理解しているだけに、今更「壁無し」で面と向かうのは恥ずかしいのだそうです。
 それは私もおんなしですけど。

「今日はどうしたんだ、ああんっ? ツイてない御苑にようこそだコラッ」

 無意識に虚勢を張ってしまいました。

「ちなみに、この声は誰?」
【鶴ちゃんですね】

 ああ、そっちか。随分古いな、ネタが。令和だよ? 今。
(ハゲ。お前に言ってんだぞ?)→とばっちり


 晋三はテーブルの上でそっと両手を組み、視線を下げつつ、

【み――僕、気が付いちゃったんです。というか――】
「夏休みの宿題終わってない――」
【違います、そんなんじゃ……人間て、「真っ直ぐ歩けない」生き物なんですね】
「あん?」

 なんじゃそりゃ。暗喩?
 哲学か?

「ババーン」と小さく呟いた晋三は、しみじみ頷いたのでした。


☆☆☆


 晋三から誘って、彼女との「プールデート」を画策したのだそうです。
 下心が透けて見えますが、まあ仕様がないでしょう。
「青春は密」だそうですから。
 
【諸々の事情で現地(プール)待ち合わせになりまして、僕は自転車で向かったのですが――】

 道路状況により、やむを得ず車道から歩道へ乗り上げ、速度抑え目で走っていると。

【自転車は車道寄りを走れっていうけど、大概の歩行者は何故か「車道寄り」を歩くんですよ。仕方なく右に左にふらふら走っていると――】

 幅の狭い区間で、前を行くおじさんを除けようとした晋三。

【おじさんの動きを予測して除けたつもりが、おじさんもこっちに寄ってきちゃって……】

 晋三に言わせると、このおじさんに限らず、背後から躱そうとすると、予測不能な動きをする歩行者がとても多いのだそうです。

【みんな真っ直ぐ歩かないんです。スマホ見ながらとか、考え事しながらなのか、ふらふら斜めに歩くんですよね】
「……まあ、みんな両足の長さが違うんだろうから、そうなっちゃうものか……」
【結局そのおじさんとも接触しそうになって――】

 事故には至らなかったものの、おじさんに難癖つけられて暫し足止めを食ったのだそうです。

【待ち合わせの時間も迫っているし、おじさんは理不尽に激高していくしで彼女に連絡も出来ずで……】
「♪ 誰かー彼●に伝えてくれよ~と」
【もうホントそんな気分で】
「お巡りさん呼んじゃ駄目なのか?」
【ていうか、野次馬のどなたかが呼んじゃったみたいで。結局、偶々目撃していた人の証言で事なきを得た感じです】
「良かったじゃないか。あ・それっ、ゴッド・ブレス・ユー」
【まだ続くんですよっっ!】
「……めんどいな」


☆☆☆


 超速でプールに着いた晋三は、それでも30分ほど遅刻したようです。

【とにかく謝らなきゃと、のっけから土下座の勢いでいたら――彼女に止められました。「男が気安く土下座すんな」って】

 また例の如く、千切れそうにスウィングを始めました。

「…………ふーん…………」
【少しは真面目に聞いてくださいよ。そのあと彼女、何て言ったと思います?】
「……さ・あ? 『~ト●ーのやつがしくじった』かな♥」
【じゃなくてっ! え、トニー? 誰?】
「先に進め! 早く!」
【くっ……彼女、「みなまで言うな。大体想像つくから」って】

 ほうぅ。よく分からんが、男前なセリフだな。
 (なじ)ることもなく、か。

「お前の人間性は把握しているようだな」
【そんな感じです。僕、なんでか胸が一杯になって……恥ずかしくて目を逸らしました】
「恥ずかしい?」
【彼女、スンゴイ際どい真っ赤なビキニ姿で……】
「ああ、日本のア●ズレ供がハワイ(限定)で着るようなアレか」(神幸さん個人の感想です)

 当時を思い出してか、何気にキモい悶えっぷりの晋三にドン引きです。

「……一度、その彼女見てみたいな」
【本当ですか?! 今度ここへ連れて来ます!】
「何がそんな嬉しいんだ」


 なんだかんだ、もう結構深い仲なのか。ふーん。
 ということは――

「……ところでお客さん(晋三)は、そのう……彼女とどうなんです? 初夜――違うな、えーと、初――」
【な、なんです? センシティブな話は――】
「――セ●クスは?」
【セ、セクハラですよっ?! オブラートに包んでくださいよっ!】

 猿みたいに顔を真っ赤にしよる。
 リアクションがまあまあ面白かったので、もう少し突っ込んだ「下品な話」を振ってみました。


 ――よい加減で調子に乗り掛けた晋三。

【そ……ぼ、僕のはなんと申しますか……ちょっとヤンチャ? というか――】
「ほーん……ヤンチャすぎて、パンツの横から ♪~はみ●しチャンピオン~テレッテテテテテーてヤツか? なるほどな………………セクハラだぞっっっ!」※
【自分で振っておいて……勘弁してくださいよ】
「♪ ~黒くてかたいパ●ポート~フンフン~」
【真●さんに怒られますよ?!】
「まさかまだ××××とか言わないよな?」
【清い交際なんですよ! ち、ちくしょうっ! まだ××××ですっっ!】

 相手の子、確かギャルって言ってたな、お前。

【「我慢できないからって浮気すんなよ」と言われてます】
「……お前……果報者じゃん」

 私の呟きに顔を上げた晋三は、あさってを向いて少しはにかんでみせました。
 晋三のこんな顔、見たことありますか? お母さま。

「ゴッド・ブレス・ユー」

 無意識に「追いゴッド・ブレス・ユー」をかました私。


「お前くらいは真っ直ぐ歩けよ……」

 店を後にする彼の背中へ向けて囁いてみたり。
 ああ、深い意味はありませんよ、お母さま。

 なんとなく……口にしてみただけです。

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※ 『はみだしチャンピオン』(沖田浩之)。
  1981年の名曲。アンアアアンアアンアアンアン~。
  滑舌が素晴らしいです。「Ohカモーン!」連呼が痺れます。