「ツイてない」なんて言わないで❤️

★本日の作業用BGMは、
『モンキー・マジック』(ゴダイゴ)。

 新緑が似合う曲ですよね(強引)。
 ドラマ『西遊記(Ⅰ、Ⅱ)』(日本テレビ系列)OP主題歌でございます。
 斬新でしたねえ。子供向け(?)ドラマで、歌詞が全編英語。
 冒頭「アチョー!」と叫んでらっしゃるのは、当時ベースのスティーヴさんだそうで。
 アドリブという噂(ウィキより)。

☆締めは『ト・レ・モ・ロ』(柏原芳恵)。
 エロす(個人的な感想)。

(2024年5月執筆)

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 鳥曇りと言ってよい、とある平日。
 年度替わりギリギリで晋三が姿を見せました。
 黒い長袖ポロシャツのポケットに、桜の花びらひとつ……そっと乗せて。

 あらあら。
 サクラチル――という暗喩でしょうか。
 芸が細かいですね、晋三のくせに。

 いつもの怪しげなスキップ(擬き)も無く、意外にもきびきびと椅子に腰を下ろしました。
 頭髪が面白いことになっております。
 板前さんのような、所謂「角刈り」と申しますか。
 某か手拍子に、「感動で道を踏み外した」のでしょうか。

 ちよと違和感……ぼんやり見詰めていると、さっとボタンを押下します。
 フッと鼻で笑った、ような?
 あそれ、カ・ッチーン。

『男は黙ってサ●ポロビ―ル』(声は高●健さんで)

 (いにしえ)の慣用句ですね。
 リアタイではないものの、当然耳にしたことはあります。

【ご無沙汰してます!】
「…………」
【あれ? こーんにーちはー!】
「…………」
【あの……お話しましょうよ】
「……不器用ですから」
【ああ、健さんだから?】

 違うだろ。
 貴様の押したボタンをよく見ろ。そして的確にツッ込め。

 晋三は、ゆるりと卓上で両手を組み、ひとしきり、穏やかな視線を投げました。
 ふむ。
 気の所為か、妙な余裕が感じられます。
 いや……「老けた」というのか。
 それはまるで、淡い春の木洩れ日のような……木洩れ日って見た事ございますか、お母さま。

「お前、ひょっとして……『卒業』したのか?」
【……】

 口元が波を打ちます。
 高●純次さんのように目が回転……。

 ああ……私を置いて、みんな卒業していきますよ、お母さま。
 分かっていても、どうにもやりきれない……。
《友がみな 我より偉く見ゆる日よ――》
 脳内の啄木さんが、今日はパンツ一丁で花と親しむよと、寂しげに笑いました。
 

【えと……それもアレなんですけど。大学受かりました。一応ご報告に】
「あ・そ。おめでと」
【ありがとうございます……素っ気ないですね、やっぱり】
「お前なあ」
【はい?】
「この店(御苑)のコンセプト理解してるか?」
【……えーと】
「えーとじゃない!」
【……ツイてないを……】
「そういうことだ」

 板前が視線を外し、薬指でカリカリ頭を掻きます。

「ああ、そのイカした髪型がツイてない?」
【まあ、その……】
「鮨屋に弟子入りしたのかと思ったぞ」
【ですよねー】

 背を丸め、若干萎れてみせます。

「♪ パンキーストモンキー――」
【モンキー・マ●ックじゃありません】
「孫悟空ではないと?」
【ゴ●ゴですよ、ゴ●ゴ13】
「まさかのデュ●ク」
【彼女の理想らしいです。この髪型】

 理容師見習いでしたっけ、彼女。

 今風(?)に言うと、「カットモデル」にされたようで。
 板前の(おもて)が、複雑な様相をミラーボールの如く浮かべます。

「愛しい彼女の手によるとしても、納得行かないワケか」
【いえ、その……】
「避妊したんだろ?」
【そこに戻るんですね、やっぱり】
「ど、どうだったんだっっ?!」
【急にキョドるし】

 何かピヨピヨ鳴っているようです。
 晋三が慌ててポケットをまさぐり、スマホを取り出しました。
 瞬きもせず、青白く光る画面を凝視します。
 ちらと顔を上げ、

【あ、あの――】

 言い差したと同時、表戸がカランと泣きました。


 ☆☆


 晋三と共にソファーへ移動した黒髪ショートの女性が、しきりに晋三のレバーへ肘をねじ込みます。

(なんやねん! あの写真は! むっちゃ恥ずいやんか!)
(ご、ごめん、お客さん増えるかと思って――うっ。マジで痛いよっ)

 入り口脇の手配写真(ツーショット)ですね。晋三が調子こいて貼っていったヤツ。
 当時は金髪でしたが……。


「店内マイクに切り替えますねー不器用ですからー」

 まさかの彼女ご登場とは。
 お写真より大人っぽい……時間というものは、「休む」ということを知らないのですね。

「小松崎蘭子(ランコ)」と名乗った美少女、丸顔を紅潮させてハフハフいっとります。

【声、むっちゃ健さんに似てますね!】
「健さんです。なんせ不器用ですから」
【映画でゴ●ゴ役もやってたんすよ!】
「らしいですね」

 女性は鼻歌を奏でつつ、持参したペットボトルをキリリ開けると、ミルクティーを一気に飲み干しました。
 晋三が口を開け、豪快に波打つ喉仏へ憐れむような視線を向けます。

【ぷはー。まっず】
「え?」
【ミルクティー嫌いなんす!】
「なんで買ったんです?」

 蘭子さん、居住まいを正すと、

【お噂はかねがね。一度お礼をと思ってました】

 ペコリ頭を下げます。

「これはご丁寧に。お礼とは?」
【え。「不知火型過激派」やって聞きました。お陰でしんちゃんと知り合えたんで】※1
「不知火……」
【SNSでいっとき流行ったんすよ。教祖様ちゃいますのん?】
「ああ……教祖ではないですが」

 流行った? アレが? もっと早く知りたかった……。
 SNS嗜まないからなあ。

「あれは全部タケオが――」※2
【タケオ? 誰やねん】
【さあ?】

 遠慮がちに首を捻る晋三。

「学が足らんな晋三」
【無茶ぶりが過ぎる……】
「もっと青魚食べろ」
【そうそう! DDT大事やでー】
【DHAね。DDTじゃ頭悪くなるよ】※3
「誤差ナシッ」
【誤差ナシッ!】
【誤差だらけだよ……】


 楽しい歓談のひとときですが、これは聞かずばなりません。
 わかって~くださ~いぃ~(by 因幡晃)。

「ところで……彼の、どこが気に入ったのです?」
【ピュアなとこー】
「……ふむ」

 即答ですか。
 側の童顔角刈り、俯いて赤くなったり青くなったり。

【バレンタインのチョコ……人違いやって分かったら、めっちゃ悲しそうな顔して……】
「でしょうね」
【それ見たら、「キュン」て言ったです】
「どなたが?」
【あたしのここが】

 ドヤ顔。
 親指で鳩尾を指します。横隔膜?

 ビシバシとイチャつく二人。
 ふいに彼女がぽつり。漏らしました。

【……しんのすけ、怒ったことないんですよ】
「ふむ……『晋三』ですよね?」

 小さい頃から、まあ、我慢しちゃう子でしたね。
 あれ? 私の所為?

【……もっとあたしに、エロエロぶつけてくれてもええのに】

 小さく口を尖らせ、晋三の手を握り締めます。
 妖しげな目線に、晋三がにへらと相好を崩しました。
 ちっ。

【ランちゃん……】


 さすがの晋三でも、朝の起きがけはいつも「怒った状態」でしょ?
 とは口にしませんでした。
 下ネタの振りかなとも思ったのですが。

 しかし、二人とも「M」となると……違うか?
「お幸せに」って言った方がよかですか? お母さま。
 私も誰かに言ってもらいたいんですけど。

「ゴッド・ブレス・ユー……」

 見詰め合って微動だにしない二人。
 このままにして帰ってもいいですか?
 なにせ不器用ですから、私。

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※1 本編四十三話、および四十九話・五十話
※2 漫画『俺物語』(アルコ・河原和音 集英社刊)の心優しき主人公。ちょいちょい人助けするものの、感謝されるのはいつも一緒のイケメン幼馴染み。
※3 プロレスの技。マジ危険。