私は夜が嫌いだ。
静まり返って黙り込むくせに、窓から差し込む月明かりが全然眠らせてくれない。

 最後にベッドで心地よく眠れたのはいつの日だろうか、自分の記憶にすら残っていないのだから誰もわかるはずがない。
体感、25億年前くらいだろう。そんな馬鹿話を考えている今日この頃の私、星野美夜華(十六歳)は今日も学校へと足を運ぶ。

 私は今、片想いの彼がいて、決して不幸せな毎日が続いているわけではない。ただ少し、息苦しいぐらいでどうってことない…はず。
教室のドアを開けると放たれる、この鴇色の空気は毎日私から笑顔を奪っていく。奪うというより同調圧力に近いかもしれないけれど。

 今日の五限目は私が一番好きな学級活動の時間だ。来月に行くスキー合宿の班決めをするらしく、なんとも簡単に終わる内容だ。
片想いの彼とはクラスが違うためどうせ同じ班にはなれないし、かといって同じ班になって仲良くできる大したイケメンもいない。
こういうのは基本的に自分が本当に嫌なことだけを誰かにひっそりと話せれば円満に進んでいくものだからと少し遠目に黒板を見てみる。
気づけば私は、仲が良くて気軽に話せる男子二人組と人柄がよくつかめない朝田陽茉莉と一緒の班になっていた。