蓮はユニフォームのジーンズとTシャツに着替え、ホールに入った。

平日の昼間だというのに、店はいつも満員だ。
ひと月程前に、このレストランは有名な女性雑誌に紹介された。
それ以来、長蛇の列ができるほどの混み具合だった。

蓮がホールに入った途端、色々な場所から黄色い声が飛んでくる。
実は、この店が雑誌に載った時に、イケメン店員として連も紹介された。
その日から、蓮はこの店のアイドルになった。

ま、俺も捨てたもんじゃないってこと?

元々、チャラ男な性格の蓮は、この状況に満足している。

「蓮く~ん」

「こんにちは~」

「きゃ~、可愛い~」

と、こんな感じで蓮はモテまくっている。

すると、幸のような女の子がお店の隅に座っているのが見えた。
いや、よく見ると、絶対に幸だ、幸に間違いない。

え? なんであんな所に座ってるんだ?

すると、奥から店長が出てきて幸の前に座った。
蓮は幸の事が気になりながらも、仕事に追われ幸を観察している暇はなかった。
途中でキッチンの方に呼ばれてしまったため、幸がいつ帰ったかも分からなかった。