福は自分が死んだ後の幸や家族の事を、何も知らなかった。

それは、福が17歳の誕生月にこの場所へ来るために、神様から言われた制限の一つだった。
その時が来るまでは、家族の状況をうかがうことは禁止するという厳しい約束だった。


「…私、変わりたいと思った。
おとなしくて引っ込み思案の性格から、明るい性格になりたいって」


さっき、クラスの友達はこの理由で納得してくれた。
蓮も納得してほしい。


「そうか、うん、それなら納得した。
幸のその決意に俺も協力するよ。

俺は、一瞬、幸が福になったんじゃないかってドキドキしてた」


ドキドキ?
ドキドキって、どうして?


「なんでドキドキしたの?」


福は蓮の口から福という言葉が出ただけで、涙が出るほど嬉しい。


「分かんないけど…

でも、お前ら一卵性なんだから、福も幸もいると思うんだ。
幸の中に…」


福は驚いた。
蓮は、なんとなくだけど気がついている。
でも、蓮に気づかれることだけは避けなければならない。
もし、気づかれたなら、福のこの世界でのミッションは終了となってしまうから。