「幸、その前にここで何してんの?」


「れんれんを待ってたの」


「はあ?」


どうした? 
幸はこんな奴じゃないぞ? 
こいつは誰だ?

蓮はもう一度、幸を上から下まで見てみる。
何度見ても、メガネを外して髪はおろしているが、俺の幼なじみの幸に違いない。


「幸、夏休みになんかあったのか?」


「なんかって?」


「例えば自転車で転んで、頭打ったとか」


「え~~~」


幸はそう言うと、キャハハと笑い転げる。
蓮は、子供のような顔で明るく笑う幸を見て、ますます訳が分からなかった。


「やべぇ、幸、遅刻するぞ」


蓮はそう言うと、幸の手を取って走り出す。
駅まで続く道を二人で走りながら、福はこの瞬間、もう一度、蓮に恋に落ちた。