国を守るために生涯を費やすことで称えられた魔王がいた。
彼は古塔から一歩も出てこなかったが国のあらゆることを知り、いたるところに手が届いた。
彼がいることで作物が豊富に実り、国は繁栄する。
魔王の傍らには可愛らしい花嫁が付き添っていた。
国民は魔王に感謝し、年に一度祝福祭を行う。
その祭りは少し変わっており、みな仮面あるいは目を何かで覆うというものだった。なんでも魔王は嫉妬深く、花嫁に色目を使う者は手当たり次第に石にしてしまうらしい。一度危険視され魔王討伐の話も出たが、あっという間に首謀者たちは消えてしまったそうだ。もしかしたらその者たちは、人知れず白銀に煌めく湖の下に沈んでいるのかもしれない。