***


「フレデリック様。……おはようございます」
「今日は元気がないね。朝食に嫌いなモノでもあった? 料理長に抗議してこようか?」

 立ち上がろうとする僕に彼女は腕を掴んだ。「違います!」と必死になる彼女も可愛い。

「正直に何があったのか話してほしいな」
「……その、実は両親から手紙があって私が目星を付けていたクロムシアン修道院が潰れてしまったのです。寄付金を横領したとかで、代わりに建物を改築して孤児院にするとか。悪い人が捕まったのはよかったですし、孤児たちに家があてがわれるのはいいのに……。うう、私のセカンドライフが」
「もしかしたら神様がレティシアをここに止めたかったのかも。それに悪い人を懲らしめて、よい人の居場所を作ったんじゃないの?」
「うう、それは……そうですが」

 まだちょっと納得いっていない顔をしている。それはそれで可愛らしい。
「でもゲームシナリオでこんな改変はなかったはず。……別ルートも考えてみなきゃ」と若干不穏当なワードが聞こえたけれど、まだ時間はある。
 大丈夫。

 選択肢を一つ一つ丁寧に潰していこう。
 彼女が悲しまないような結果も付属して。
 誰かを殺したり、潰したりしたら彼女が悲しむのは嫌だ。
 そう思うようになったのは人間らしい感情が少しは芽生えた証拠かな。

「フレデリック様、別の修道院を探しつつ第二の人生は商業ギルドに入って世界を旅しようと思うのです!」
「そうなんだ。詳しく話を聞かせてくれないかな?」
「はい!」

 三日後。
 今日は薬学の本を片手に大好きなレティシアは現れた。

「商業ギルドは両親に反対されてしまいました。女の人では旅は難しいのですね」
「まあ、夜盗とか山賊もいるから危ないと思うよ」
「次こそは薬師に! 半年後に流行病があるので、薬を作って知名度を上げれば雇って貰えるかもです」
「へえ、どんな症状の流行病があるんだい? 治療法ってのは?」
「実はですね。この図鑑にある薬草なのですが――」
「うんうん」