一ヶ月後。正式に翠雨は、如月翠雨になった。一四歳には、辛い決断だったかも知れない。一時は愛してくれた両親、仲の良かった妹、慣れ親しんだ家。どれも捨てがたい宝物だったはずだ。それを手放す事は、相当の覚悟が必要だっただろう。失う事は、必ずしも不幸ではない。失う事でやって来る幸せもあるのだ。