あの騒動から一年が経った。
玲奈達は、伝説を捻じ曲げた事、私から巫女の名と異能を奪った事とお母様を殺したという真実が知れ渡り村民の怒りを買い追放されたそうだ。
宮司の仕事も神社の権利も、玲奈達に楯突いたことで追放されていた和正のお父様のお兄様に譲渡されたそう。もう和正が宮司になることはないらしい。
村も元の姿を取り戻し始めている。
今まで癒しの異能の施しを受けれなかった人達にも行き渡るようになった。

ちなみにまだ玲奈の呪いを解くつもりはない。心の底から反省し、分け隔てなく人やあやかしを助けるような人になったら解いてやろうと考えている。

(あの性格じゃ無理ね)

きっと、私の見えない場所で生きている筈。私に対して恨み言を呟きながら。
けれど、もう私には関係ない。私の今の家族はこの素敵な屋敷にいる。



沢山桜が咲き誇るあの場所で信様と婚姻の儀を挙げている。
つららちゃんや紅葉くん、屋敷で働いてるあやかしに囲まれながら幸せな時を噛み締めていた。
赤い花柄の色打掛を着た私は桜色の花びらの雨を愛する夫共に眺める。

「信様。私、こんなに幸せでいいのかしら」
「いいに決まってる。もう苦しみなんかない。これからの陽子の人生は幸せだけだよ」
「それは信様も同じですわ」

玲奈に全てを奪われた時の私には想像できなかった未来。
愛する人に裏切られた離縁された私は、龍神という高貴な人に助けられ全てが変わった。
白鷺へと姿を変えずっと私のそばにいてくれた私の愛する人。

「愛しています。信様。ずっとそばにいさせてください」
「僕も愛してるよ。陽子。絶対に離したりしないから。僕の可愛い花嫁」

誓いを交わし私達は口付けをする。
私の髪にささっている紅珊瑚の簪が私達を祝福する様に桜と共に美しく輝いていた。