「有川様っ!? 大丈夫ですか?」
駆け寄ってきたのは、マンションに常駐するコンシェルジュだ。
千花はコンシェルジュの手を借りて立ち上がると、よろよろとロビーに置かれたソファーに座った。
いつまでもここにいたくはない。けれど、実家や親戚と縁の切れている千花には、行くところなどどこにもなかった。
(こんなことなら、慰謝料、現金でもらっておくんだった)
貯金はあるが、基紀の会社はそこまで給料が高くない。チーフという立場だったから役職手当が多少は付いていたが、今月からそれもなくなってしまった。
どこか住むところを探すにも保証人が必要だろう。基紀に連絡を……と考えて首を振る。希美を虐めてなどいないのに、基紀は千花を信じてはくれなかった。
きっとなんだかんだと理由をつけて、今回のことも千花のせいにされるのだ。
(もう……ほんといやになる……なにが番よ)
運命の番だったとしても、もう少し相手はちゃんと選ぶべきではないか。基紀を怒鳴りつけたい気持ちに駆られる。隼人を少しは見習えばいいのにと。
千花はインターネットでネットバンクに繋ぐと、預金残高を確認した。
身一つで追い出されてしまったのだ。引っ越し手続きや日用品を買ったり、服や下着も用意しなければ。貯金だけで足りるだろうか。
千花は、残高を見て唖然とする。
(うそでしょ)
給料日は三日前だったはずだ。それなのに基紀の会社からの給与は振り込まれていなかった。誰がそうしたのかなど考えるまでもない。
そこまで自分が憎いのだろうか。千花がなにをしたのか。ただ普通に恋をして結婚しただけだ。謝られることはあっても彼らに恨まれる覚えはない。
(絶対に許さないから……っ)
番と浮気をした挙げ句、元妻をここまで追い詰める基紀も、その相手も。
基紀への恋愛感情はおかげですっかり消え失せた。胸に湧き上がる感情は怒りだけだ。
千花は最近、登録したばかりの番号にかけることにした。相手は数コールも待たずにすぐに出た。
(利用するって言ったら、怒るかな……。ううん、きっと怒らないわ。紫藤さんなら、いくらでも利用していいって言いそう)
こんなときなのに笑みが込み上げてくる。正直にすべてを話せば彼ならば、と思ってしまうくらいには、千花は隼人に絆されている。そんな自分に気づいてしまったのだ。
駆け寄ってきたのは、マンションに常駐するコンシェルジュだ。
千花はコンシェルジュの手を借りて立ち上がると、よろよろとロビーに置かれたソファーに座った。
いつまでもここにいたくはない。けれど、実家や親戚と縁の切れている千花には、行くところなどどこにもなかった。
(こんなことなら、慰謝料、現金でもらっておくんだった)
貯金はあるが、基紀の会社はそこまで給料が高くない。チーフという立場だったから役職手当が多少は付いていたが、今月からそれもなくなってしまった。
どこか住むところを探すにも保証人が必要だろう。基紀に連絡を……と考えて首を振る。希美を虐めてなどいないのに、基紀は千花を信じてはくれなかった。
きっとなんだかんだと理由をつけて、今回のことも千花のせいにされるのだ。
(もう……ほんといやになる……なにが番よ)
運命の番だったとしても、もう少し相手はちゃんと選ぶべきではないか。基紀を怒鳴りつけたい気持ちに駆られる。隼人を少しは見習えばいいのにと。
千花はインターネットでネットバンクに繋ぐと、預金残高を確認した。
身一つで追い出されてしまったのだ。引っ越し手続きや日用品を買ったり、服や下着も用意しなければ。貯金だけで足りるだろうか。
千花は、残高を見て唖然とする。
(うそでしょ)
給料日は三日前だったはずだ。それなのに基紀の会社からの給与は振り込まれていなかった。誰がそうしたのかなど考えるまでもない。
そこまで自分が憎いのだろうか。千花がなにをしたのか。ただ普通に恋をして結婚しただけだ。謝られることはあっても彼らに恨まれる覚えはない。
(絶対に許さないから……っ)
番と浮気をした挙げ句、元妻をここまで追い詰める基紀も、その相手も。
基紀への恋愛感情はおかげですっかり消え失せた。胸に湧き上がる感情は怒りだけだ。
千花は最近、登録したばかりの番号にかけることにした。相手は数コールも待たずにすぐに出た。
(利用するって言ったら、怒るかな……。ううん、きっと怒らないわ。紫藤さんなら、いくらでも利用していいって言いそう)
こんなときなのに笑みが込み上げてくる。正直にすべてを話せば彼ならば、と思ってしまうくらいには、千花は隼人に絆されている。そんな自分に気づいてしまったのだ。