「困ったことがあったら、連絡して」
「困ったことなんてないですよ」
「じゃあ、用事がなくても電話してくれる?」
「しません!」
隼人の感情は驚くべきことに会ったときとなんら変わっていない。ずっと深い赤色をしている。
時折、別の色が混じることもあるが、それは千花がこの店でほかの男性を接客しているときである。それがなぜかがわかってしまうと、千花の胸におかしな感情が芽生えて落ち着かなくなるのだ。
そういえば彼は、紫藤家の男として感情を抑える訓練をしていると言っていた。
穏やかな顔つきは変わらないから、表情だけを見ていたら、彼の感情の変化には気づかなかっただろう。
「デートするならどこに行きたい?」
「デート……そうですね……海とか?」
「海が好きなの? 俺も好きだよ。海神の生まれたところだからね」
彼は嬉しそうに微笑んだ。自分が海が好きだと言っただけで、どうしてそれほど嬉しそうな顔をするのか。彼の想いが本物の愛情だと信じてしまいそうになる。
「好きって言うか。嫌いな人っています?」
「いるんじゃないかな?」
千花も特別、海が好きなわけではなかった。ただ、ちょっとした興味本位でそう言ってしまったのだ。
紫藤一族の者は、感情で海が荒れると言っていたから、もし二人で海に行ったらどんな風になるのだろうと。
「じゃあ、今度デートしよう」
「しませんよ」
隼人は店に来るたびにいつもこうだ。
仕事の時間から始まり、好きな食べ物はなにか、朝はなにを食べたのか、夜何時に寝るのか、そんな質問が繰り返される。
施術中は二人きりだ。無視をするわけにもいかず、答えられる質問に答えているうちに、話すことに抵抗がなくなってきている。
「千花はどういうタイプの男が好き?」
「また、急になんですか?」
「なるべく君の好みに近づきたいじゃないか」
「無理して自分を変えても、そういう関係は長続きしないと思います」
「じゃあ、このままの俺を好きになってくれる?」
「私好みになったとしても、恋愛をするつもりはないです」
にべもなく千花が答えても、隼人は諦めなかった。
「困ったことなんてないですよ」
「じゃあ、用事がなくても電話してくれる?」
「しません!」
隼人の感情は驚くべきことに会ったときとなんら変わっていない。ずっと深い赤色をしている。
時折、別の色が混じることもあるが、それは千花がこの店でほかの男性を接客しているときである。それがなぜかがわかってしまうと、千花の胸におかしな感情が芽生えて落ち着かなくなるのだ。
そういえば彼は、紫藤家の男として感情を抑える訓練をしていると言っていた。
穏やかな顔つきは変わらないから、表情だけを見ていたら、彼の感情の変化には気づかなかっただろう。
「デートするならどこに行きたい?」
「デート……そうですね……海とか?」
「海が好きなの? 俺も好きだよ。海神の生まれたところだからね」
彼は嬉しそうに微笑んだ。自分が海が好きだと言っただけで、どうしてそれほど嬉しそうな顔をするのか。彼の想いが本物の愛情だと信じてしまいそうになる。
「好きって言うか。嫌いな人っています?」
「いるんじゃないかな?」
千花も特別、海が好きなわけではなかった。ただ、ちょっとした興味本位でそう言ってしまったのだ。
紫藤一族の者は、感情で海が荒れると言っていたから、もし二人で海に行ったらどんな風になるのだろうと。
「じゃあ、今度デートしよう」
「しませんよ」
隼人は店に来るたびにいつもこうだ。
仕事の時間から始まり、好きな食べ物はなにか、朝はなにを食べたのか、夜何時に寝るのか、そんな質問が繰り返される。
施術中は二人きりだ。無視をするわけにもいかず、答えられる質問に答えているうちに、話すことに抵抗がなくなってきている。
「千花はどういうタイプの男が好き?」
「また、急になんですか?」
「なるべく君の好みに近づきたいじゃないか」
「無理して自分を変えても、そういう関係は長続きしないと思います」
「じゃあ、このままの俺を好きになってくれる?」
「私好みになったとしても、恋愛をするつもりはないです」
にべもなく千花が答えても、隼人は諦めなかった。