***王兄第三姫殿下リリアンの視点***


 侍女シエナの助言通り媚薬を完成させた。妾にかかればこんなものは朝飯前だ。
 後は侍女に支持をしてセドリック様に飲ませるだけ。
 窓辺に座りながら晴れ渡る青空を眺める。太陽の日差しに目が眩みそうになるが、妾は透き通った青、雄大な雲、燦々と輝く太陽が好きだ。こんな体質でなければ外に出てお昼寝をしたいほどに。

(いつかセドリック様と一緒に──)

 そう夢見ていた。
 願っていた。
 呪われた体質の妾の夢を、あの人族の女は打ち砕いたのだ。
 偶然とはいえ、見てしまった。
 セドリック様にお姫様抱っこされて庭園を散歩する二人を。
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 刹那、理解する。
 どうあってもあの人族の女に敵わない──と。
 あんな風に笑うセドリック様を見たことがなかった。
 あんなに幸せそうなセドリック様を妾は知らない。
 セドリック様が生まれてから、ずっと、ずっと、ずっと、ずっと、ずっと、ずっと見ていたのに。

 妾の中で何かが壊れた。
 たった一つの希望。
 たった一つの願い。
 妾に残ったのは憎悪と嫉妬。

 燃え上がる感情を抑えることはできなかった。あの女がいなければ、妾が隣にいたのに。
 あの女を殺して私がセドリック様の隣に立つ。
 腐臭し、悪臭によって部屋が黒ずみ、周囲の侍女たちが死んでいこうと関係ない。
 願わくば、あの女に凄惨な死を。
 そしてそれすら叶わないのなら、セドリック様に妾の恋に終止符を打ってほしい。 

 これは予感だけれど、最期の願いだけは叶う気がする。