「よし、明日からは私が直接オリビアに贈り物を手渡そう」
「はい」
「そうしてください。とてもお喜びになります」
サーシャとアドラは問題が一つ解決に向かったことを喜びつつ、次の問題事項に入った。なんだかんだ二人とも有能で助かるのだが、なんだかうまく誘導されているような気がしなくもない。
「これで贈り物の中に紛れ込ませる方法は出来なくなりますね。もちろんセドリック様の書面付きでない贈り物は全てこちらで回収しますが」
「そうですね。贈り物に異物混入の被害は減るとして……問題は王兄第二姫殿下ミア様の魅了問題ですね。根本的な解決をしなければ、被害者は増える一方かと」
「それなら旧友があるものを発注してくれたので、もうじき届くはずだ」
「旧友……? ああ!」
サーシャが一瞬小首を傾げたが、すぐに誰のことか気づいたようだ。そしてその人物が戻ってくるということの意味も理解した。
「ダグラスと、スカーレットには人の姿ではなく、獣化してオリビアの傍に居てもらうことにした。私が居ない間に安心かつ護衛としての戦力は申し分ないからな」
「あの方達でしたら、確かに」
「わたくしが離れている時などヘレンはおりますが、確かにこれ以上にない人選かと」
そう旧友である二人なら、オリビアの護衛を任せることができるので、その点に関しては全幅の信頼を置いている。問題は──。
「私が居ない間に、ダグラスやスカーレットがオリビアと楽しくしているのを我慢できるかどうか……くっ、モフモフとか抱き付いていたら」
「陛下、独占欲が駄々洩れです。もう少し大人になってください」
「そうです。オリビア様にギュッとされたい気持ちは分かりますが、堪えてください」
「どさくさに紛れてサラッと本音を漏らしましたね、サーシャ殿」
「何のことでしょう」
サーシャもやろうと思えば獣の姿に変化することはできる。オリビアは可愛いものに目がない。子猫とか子ウサギとか、オコジョとか昔から好きだった。
ウサギは食糧難の際に、泣く泣く食べて落ち込んでいたけれど──。まあ、生きるためだとなんとか割り切ってくれたようだが。
(なんにせよ、後はダグラスやスカーレットが戻ってきてからが勝負といったところか)