+ + +
いつしか僕と福笑は、昼休みを一緒に過ごすことが当たり前になった。
「私ね、夢があるの」
「うん、なに?」
「アナウンサー!」
「やっぱり、そうだったんだ」
ぴったりだと思った。
地元の放送局のアナウンサーにはすぐになれそう。
いや、東京に行って人気アナウンサーにだってなれる可能性がある。
それくらい明るくて素敵な女性である。
「アナウンサーになってニュースを伝えたい」
「意外だな。タレントみたいなアナウンサーかと思った」
ぷくっと頬をふくらませる。
「情報を伝えるってすごいし、必要なことだし。あたしの叔母、アナウンサーの津波から逃げてくださいの真剣な声で助かったんだ。ありがたかった」
彼女の横顔が綺麗だ。明るいだけじゃなく芯のある人なのだろう。
「発声練習聞いてくれる?」
「いいよ」
「あいおい、いえおあい、のあおい!」
夢に向かって努力している姿はキラキラと輝いているように見える。
冗談抜きで太陽とかダイヤモンドとかよりも眩しい。
「そうだ、お知らせがあるよ」
「なに?」
身を乗り出して元気いっぱいに言ってくるので、僕はそれなりに期待した。
「来週から放送部に入ることになりました! 本日のお相手は河合福笑でしたって言うの、憧れてたんだ」
「へぇ、おめでとう」
「こうは、反応がうっすいなー。もしかしたら、将来は本物のアナウンサーになっちゃうかもしれないよ? サインしてあげようか? プレミアになるかもよ?」
「いらない」
「なんで?」
「いつまでも変わらない関係でいたいから」
その言葉が彼女を傷つけてしまったのかもしれない。
僕にとってはいい意味で言ったのに。
すごく悲しそうな顔をしたんだ。