日中、嫌ってほどにその存在感を主張していた太陽が沈む。
眩しすぎる光が妖しく揺らめきながら消えていく様は、どこかもの悲しい。

こんなときは、去年死んだ飼い犬のマオを思い出すんだ。
薄茶色の毛のミックス犬だった。
親が何の犬種なのかはわからないから、雑種って言った方がいいのかな?

でも、小一のときから一緒に育ってきたマオは家族の一員だった。

いつも、今くらいの時間に散歩に行ってたんだ。
夕日がマオの毛をオレンジ色に染めて、日が落ちていくにつれ薄茶色に戻ってく。

ときどきチラッと俺の方を見て、また前を歩いて行く。
そんな風に俺を気にしてくれるマオとの時間が大切だったってことに気づいたのは、マオがいなくなってから。

もの悲しい景色にもの悲しい思い出をたどっていたからだろうか。

ワフン

ちょっと変わった、マオの鳴き声が聞こえた気がした。
誘われるように目を向けると、マオと同じ毛並みの犬が神社に入っていくのが見えた。

ワフン

誘うように、また鳴き声がする。

「マオ?」

思わず呼んでしまったけれど、マオなわけがない。
たまたま似た毛並みの、たまたま似た鳴き声のする犬だったってだけだ。

でも、そんな犬を見られたら。
ちょっと撫でることが出来れば。
このもの悲しい寂しさを埋められるかもしれないって思って……。

だから俺は、赤い鳥居をくぐった。