薄明かりのこの時間は嫌いだ。
夕方でもなく、夜でもない時間帯。
曖昧なことは昔から好かない。

何でもハッキリしている方がいい。
朝起きる時間。
昼になにを食べるか。
その日の天気。

自分でどうにか出来ることはハッキリさせたい。

天気とか、どうしようもないことは仕方がないが、曖昧な天気の日は本当に気分が悪い。
そわそわして、落ち着かない。

だから早く夜になればいい。
そんな思いで家路についていたら、狐の耳と尻尾をつけた子供が目の前に現れた。

ああ、だから曖昧なのは嫌いなんだ。

「ねぇ、来てよ」

子供はまるで俺の知り合いのように声をかける。
まるで、昔から知っている友達のように。

「一緒に遊んでくれるって言ったでしょ?」

言った記憶はない。

でも、子供の言葉は俺を誘う。
まるで操られるように、俺の足は子供の近くへと向かった。

「よかった、おいで」

俺の手を取ったその曖昧な存在は、返事も聞かずにすぐ近くの神社へと向かう。

本当に、曖昧なものは嫌いだ。
こうして人の世とは別の世界へと連れて行くから。

分かっているのに止まってくれない足で、俺は鳥居というカミの門を進んだ。