私は激怒した。
――なんて言ったらとある有名な小説の冒頭みたいだね。

でも、怒っているのは本当。

授業の一環で地元のことを調べようって課題があった。
何をテーマにしようかってなったとき、神社にしようって言い出したのはあの子なのに!
面倒だからって丸投げするなんて。

明日提出の課題。
今日調べ終わってないと困るっていうのに、ヘラヘラした顔で用事が出来た、なんて……。
絶対ウソに決まってる!

私は長く伸びた自分の影を踏みつけるように足を進めた。
こういうのはちゃんとみんなでやるべきでしょう!?
腹を立てたけれど、他の子たちが仕方ないなぁって言うものだから私も仕方なくやっているんだ。

足を止め、地面に落ちる夕影を見つめた。
自分の影。
電柱の影。
木々の影。

その中に、目的のものの影が目に入る。

「あれ? ここにあったんだっけ?」

鳥居の形の影が見えて、顔を上げた。
地図だともっと先だったはすなのに。

首を傾げたけれど、まあいいかと疑問を消した。
どっちにせよ神社なら調べなきゃならないんだし。

「早く終わらせよう」

呟いて、私は神社の敷地に踏み入った。