「……だから、人を好きになる……って、気持ち……正直、俺には分からない……。高野がこの先も俺に告白したとしても……きっと、その気持ちに答えることは出来ないから……もう、キッパリと俺のことは諦めてくれ。それじゃ……」

俺は自分の自転車が置いてある方へと歩を進めようとした瞬間……。

グイッ……‼

「持って!」

再び、高野が俺のコートの袖を掴んで引っ張りながら叫んだ。

「駿くん、私と付き合ってっ‼」

「ーーっ⁉」

高野の言葉に耳を疑った……。

「なっ……何、言ってんだよっ! 俺の話……聞いてなかったのかっ⁉」

「ちゃんと聞いてたよ」

「なら……どうして……」

俺はてっきり……ひかれるか、もしくは……同情されるか……そのどちらかだと思っていたから……そのどちらでもなさそうな高野の言動が全くもって理解出来なかった……。

「……なんで……そこまで言ってもまだ、俺にこだわるんだ……意味分かんねぇ……」

「……だよね」

高野が苦笑いを浮かべて言った。

「私が駿くんのことを諦めない理由は……駿くんの諦めない気持ちをカッコいいな……って、思ったから……」

「ーーっ……?」

「……駿くん、私達……逢ってるんだよ」

「えっ……」

高野の言葉に驚く……。

逢ってる……って、いつ?

それって……どういうことだ……?

記憶を辿るも……さっぱり思いあたらない……。

「……やっぱり、覚えてないよね……」

高野がほんの一瞬……淋しそうな、哀しそうな……表情(かお)をした……。

「……まぁ、そうだよね。こうして、ちゃんと目を見て話をするのは大学生になってからだもん」

「……高野……悪い……全然、話が分からない……」

「ごめん、ごめん……。えーっと、私が初めて駿くんに逢ったのは…高校生の時! 高校一年生の高校総合体育大会ーインターハイの時だよ」

「ーーっ……」

高野の紡いだ言葉が俺の心をざわめかせた……。

……高校……総合体育大会ーーインターハイ……。

あっ……。

……もう二度と思い出したくない苦々しい記憶が俺を過去へと(いざな)ったーー……。