高野と付き合い始めて一週間が経った放課後のことーー……。
部室へ向かう途中、一人の女子大生ーー長瀬 由衣に呼び止められた……。
高野とは中学生の頃からの親友らしく、長瀬とも同じ経済学部だが、あまり話をしたことはない……。
……一体、俺に何の用だろう……?
訝しげに眉を寄せる……。
「ちょっと、あんたに言いたいことがあるの。少しいい?」
長瀬は元々、瞳が細く、ややつり目なので、見た感じ『怒っている……?』と、誤解されやすい…。
現に分かっていても、身体が視線と萎縮してしまう…。
ドクッ……!
鼓動が重く打ち鳴らす……。
「あたし、回りくどい言い方も言い方も好きじゃないから……単刀直入に聞くね。なずなと付き合ってんのよね?」
コクッ…と、俺は言葉なく頷く。
大学中の学生達が知っていることだ。
潔く認める。
俺としては……周りにバレたくなかった……。
それは根も葉もないヘンな噂が流れるのも周りの学生達に好奇な目で見られるのも嫌だったから……。
『高野と付き合い始めた……』と、いうことが大学中に広まった時、一時的にそういうこともあったけれど……すぐにヘンな噂も好奇な目で見られることもすぐになくなった……。
ーー付き合い始めたので、あったかーく見守って下さーいっ! くれぐれも余計な詮索はしないでほしいです。お願いしますっ‼ーー
高野の言葉があったから……か、どうかまでは定かではないけど……。
「あぁ……ちなみに、交換条件つきで付き合い始めた……ってことも知ってるから」
「ーーっ……⁉」
そこまでっ……。
そこまで詳しく言わなくたっていいんじゃないか……とも、思ったが……大切な友人ー長瀬に隠し事をしたくなかったのかもしれない……。
「全くもって関係ないあたしがとやかく口を挟むべきじゃないって、ことは十分承知の上で、あえて……言わせてもらうわね。なずなとちゃんと付き合ってあげて」
「……っ……」
「あんたがどんな思いで『いいよ』って、言ったのかは分からない……。だって、あたし……あんたじゃないもの。けど……『いいよ』って言ったのなら……期限が切れる日まで『彼氏』として、きちんとあの子に付き合ってあげて。
二人でたくさんの楽しい思い出を作って。
あんたも知っている通り……ずっと、何度振られても諦めなかった子の想いが交換条件つきとはいえ、付き合っているのなら……最低限の『彼氏』としてのそれ相応の振る舞いはすべきだとあたしは思うの」
……彼氏らしい振る舞い……。
「じゃないと……せっかく、想いを寄せている人とやっとの思いで付き合えるようになったのに……何の意味もないじゃない……」
長瀬はぼやくように言った……。
「ホント……関係ないヤツがズカズカ言ってごめん……。あんたと付き合い始めてからあの子……楽しそうにしてんだけど……なんか無理して笑ってるように見える時があるんだよね……。
『気のせいじゃないか……』って、言われたら……それまでだけど。あたし的に気になってて……だから、あんなに言ったの。わたしが言いたいのはそれだけ」
終始、表情を変えることなく長瀬は自分の思っていることをハッキリと告げた…。
俺は同じようなことを思っていたこともあって……ズバッ……と、図星をつかれ、返す言葉がなかった…。
「部活前に悪かったね。聞いてくれてありがとう」
そう言って長瀬はくるっ…と、俺に背を向けて校門へと歩き始めた。
後ろで一本に結んだ長瀬の黒髪が歩く度に揺れた…。俺はしばらくの間、その場から動けずにいた…。
高野と交換条件つきとはいえ…付き合って一週間、何をしてた…?
男女の付き合い方が分からない…。
男女が付き合う定義にもあてはまらない関係だから…と、いってきちんと高野と向き合っていなかった……。
そんな俺に対して高野は……付き合い始めてから翌日に不機嫌になったけれど……それは本気で怒ったのではなく、おちゃらけた感じだった…。
絶えず笑顔を浮かべて、楽しそうにしている……。
ズキッ……。
胸が痛い……。
人に言われてようやく気がつくなんて……なんて、バカなんだろう……。
長瀬が怒ってない……と、分かってても身体が自然と萎縮してしまったのは……高野に対して多少なりとも後ろめたい気持ちが心の奥底にあったからではないだろうか……。
今さらながらに長瀬が高野のことをとても大切に想う気持ちがひしひしと伝わってきて……さらに俺の胸の痛みが増してゆく……。
……あと、約三週間……。
俺は高野に何がしてやれるのだろう……。
高野が本当に望んでいることはなんだろう……。
俺は出来る限り、高野に向き合うことを決めたーー……。
部室へ向かう途中、一人の女子大生ーー長瀬 由衣に呼び止められた……。
高野とは中学生の頃からの親友らしく、長瀬とも同じ経済学部だが、あまり話をしたことはない……。
……一体、俺に何の用だろう……?
訝しげに眉を寄せる……。
「ちょっと、あんたに言いたいことがあるの。少しいい?」
長瀬は元々、瞳が細く、ややつり目なので、見た感じ『怒っている……?』と、誤解されやすい…。
現に分かっていても、身体が視線と萎縮してしまう…。
ドクッ……!
鼓動が重く打ち鳴らす……。
「あたし、回りくどい言い方も言い方も好きじゃないから……単刀直入に聞くね。なずなと付き合ってんのよね?」
コクッ…と、俺は言葉なく頷く。
大学中の学生達が知っていることだ。
潔く認める。
俺としては……周りにバレたくなかった……。
それは根も葉もないヘンな噂が流れるのも周りの学生達に好奇な目で見られるのも嫌だったから……。
『高野と付き合い始めた……』と、いうことが大学中に広まった時、一時的にそういうこともあったけれど……すぐにヘンな噂も好奇な目で見られることもすぐになくなった……。
ーー付き合い始めたので、あったかーく見守って下さーいっ! くれぐれも余計な詮索はしないでほしいです。お願いしますっ‼ーー
高野の言葉があったから……か、どうかまでは定かではないけど……。
「あぁ……ちなみに、交換条件つきで付き合い始めた……ってことも知ってるから」
「ーーっ……⁉」
そこまでっ……。
そこまで詳しく言わなくたっていいんじゃないか……とも、思ったが……大切な友人ー長瀬に隠し事をしたくなかったのかもしれない……。
「全くもって関係ないあたしがとやかく口を挟むべきじゃないって、ことは十分承知の上で、あえて……言わせてもらうわね。なずなとちゃんと付き合ってあげて」
「……っ……」
「あんたがどんな思いで『いいよ』って、言ったのかは分からない……。だって、あたし……あんたじゃないもの。けど……『いいよ』って言ったのなら……期限が切れる日まで『彼氏』として、きちんとあの子に付き合ってあげて。
二人でたくさんの楽しい思い出を作って。
あんたも知っている通り……ずっと、何度振られても諦めなかった子の想いが交換条件つきとはいえ、付き合っているのなら……最低限の『彼氏』としてのそれ相応の振る舞いはすべきだとあたしは思うの」
……彼氏らしい振る舞い……。
「じゃないと……せっかく、想いを寄せている人とやっとの思いで付き合えるようになったのに……何の意味もないじゃない……」
長瀬はぼやくように言った……。
「ホント……関係ないヤツがズカズカ言ってごめん……。あんたと付き合い始めてからあの子……楽しそうにしてんだけど……なんか無理して笑ってるように見える時があるんだよね……。
『気のせいじゃないか……』って、言われたら……それまでだけど。あたし的に気になってて……だから、あんなに言ったの。わたしが言いたいのはそれだけ」
終始、表情を変えることなく長瀬は自分の思っていることをハッキリと告げた…。
俺は同じようなことを思っていたこともあって……ズバッ……と、図星をつかれ、返す言葉がなかった…。
「部活前に悪かったね。聞いてくれてありがとう」
そう言って長瀬はくるっ…と、俺に背を向けて校門へと歩き始めた。
後ろで一本に結んだ長瀬の黒髪が歩く度に揺れた…。俺はしばらくの間、その場から動けずにいた…。
高野と交換条件つきとはいえ…付き合って一週間、何をしてた…?
男女の付き合い方が分からない…。
男女が付き合う定義にもあてはまらない関係だから…と、いってきちんと高野と向き合っていなかった……。
そんな俺に対して高野は……付き合い始めてから翌日に不機嫌になったけれど……それは本気で怒ったのではなく、おちゃらけた感じだった…。
絶えず笑顔を浮かべて、楽しそうにしている……。
ズキッ……。
胸が痛い……。
人に言われてようやく気がつくなんて……なんて、バカなんだろう……。
長瀬が怒ってない……と、分かってても身体が自然と萎縮してしまったのは……高野に対して多少なりとも後ろめたい気持ちが心の奥底にあったからではないだろうか……。
今さらながらに長瀬が高野のことをとても大切に想う気持ちがひしひしと伝わってきて……さらに俺の胸の痛みが増してゆく……。
……あと、約三週間……。
俺は高野に何がしてやれるのだろう……。
高野が本当に望んでいることはなんだろう……。
俺は出来る限り、高野に向き合うことを決めたーー……。