翌日ーー……。

「駿くん、おはよっ!」

一限目の講義が行われる教室に着くなり……早速、俺を見つけた高野が駆け寄ってきて満面の笑みを浮かべて、声を弾ませて言った。

いつもよりワントーン明るく、高めの声。

明らかにウキウキしてて……全身から喜び……? 幸福(しあわせ)のオーラが溢れているようだった……。

……何……。
一体、どうした……?
朝からヘンなものでも食べたか……?

「……お、はよう……」

高野の雰囲気に若干ひきつつ……俺はかろうじて挨拶を返した……。

すると……

「やっだー駿くん、冷たーいっ。せっかく付き合い始めたのにそれはないよ。そっけなさすぎっ‼」 

ぶーっ‼

高野は頬を勢いよく膨らませて、不機嫌なさまを示した……。

その瞬間……。

親しい友人同士でお喋りしていた者。
携帯電話を見ていた者。
出された課題を他の学生からノートを借りて仕上げている者。

ざわついていた教室が一斉に静まり帰ったかと思えば……学生達が俺と高野の方へとどっと、押し寄せてきて……あっという間に取り囲まれてしまった……。

「今の話……本当かっ⁉」
「付き合いだしたのっ⁉」
「なんで、どうして⁉」
「二人の間に何があったっ⁉」等……学生たちの質問の集中砲火にあってしまった……。

なっ、なんなんだ……一体っ⁉

これじゃ、まるで……動物園にいるパンダ状態だ……。

冷静に考えてみれば……そういう状態になっても可笑しくはない……。

ずっと、告白を断り続けていた(オレ)が、それでも諦めることなく一途に想い続けてきた(たかの)と付き合い始めたのだ。

どんな心情の変化があって、そうなったのか……と、周りの学生達が気にならないはずがない…。

……と、いっても……俺的には勘弁してほしい……。

俺は予期せぬ事態に今を抱え、チラッ…と、俺の側にいる高野を見やる……。

高野はこの状況に動じることなく、ハッキリと周りを取り囲む学生達に言った。

「付き合い始めたので、あったかーく見守って下さーいっ! くれぐれも余計な詮索はしないでほしいです。お願いしますっ‼」

ニコッ…と、心から幸福(しあわせ)そうな笑顔を浮かべて、笑ってみせた。

「……そっか、良かったなっ!」
「想いが通じて本当に良かったね!」
「おめでとうっ‼」

パチパチ……。

どこからともなく拍手が巻き起こり、俺と高野は教室にいた学生達に祝福され……大学中に俺と高野が付き合い始めた……と、いうことが瞬く間に広がったことは言うまでもないーー……。