ここはカンロギの町の外側。そしてマールエメス側のシナリメ草原だ。
 現在ここにはティオルが居て空を眺め行き先を模索していた。

 (今の時間ですと……正規ルートを通る選択は皆無ですね。流石に野宿は嫌ですので。そう考えると山越えをするしかないか)

 そう考えが纏まると山の方を向き駆け出す。

 (すぐにみつかるかは分かりません。ですが時間がかかってもみつけだしますよ)

 そう思考を巡らせながらティオルは息を切らすことなく軽やかに走り山を目指し向かった。

 ★☆★☆★☆

 ここはカンロギの宿屋のロビー。
 ここにはルミカとメイミルとセリアーナとシャルルカーナが居て話をしている。

 「なぜハルリアは私たちのことを待っていてくれなかったのかなぁ」
 「セリアーナ……ハルリアはね。今まで殆ど一人で、なんでも抱えてきた。周囲に頼りになる者が居たとしてもよ」

 そう言いルミカは悲しい表情になり俯いた。

 「それは、おかしいですわ。頼れる者が居るなら助けてもらえばいいですのに」
 「シャルル、それは無理ね。ハルリアの性格じゃ……自分から助けを求めないと思うよ。そばに居る者が手を差し伸べれば違うかもだけど」

 メイミルはそう言い遠くをみつめる。

 「これは母から聞いた話だけど。確かハルリオン様も余り人に頼らなかったって言ってたわ」
 「恐らくハルリアはハルリオン様に似たのね」
 「そうだね……師匠は、なんでも一人で熟そうとするから心配なんだよ」

 そうメイミルが言うとルミカは頷いた。
 片やセリアーナとシャルルカーナは、そうなのかと思い聞いている。
 その後も四人はハルリアとハルリオンの話で盛り上がっていたのだった。


 ――場所は倉庫内に移る――

 「パルキア先生は結婚しないんですか?」

 壁に寄りかかり座りながらマルルゼノファはそう問いかけた。

 「結婚かぁ……オレは別にいいかな。まあ以前は考えたこともあった。でも、その人は遥か高い場所に居て……手が届かなくてさ」

 そう言い少し間をおき再び話し始める。

 「そもそも……男勝りのオレなんか眼中にないだろうけどな」
 「その口ぶりだと告白してないんですね。今でも、その人に逢えるなら……例え無理だと思っても告白するべきだと思います」
 「それができればいい。だが……そんな勇気なんてないよ。だけど、あの人のそばに居るだけでもいいと思っている」

 それを聞いたマルルゼノファの涙腺が緩み滝のようにながれていた。
 それをみたパルキアは複雑な気持ちになり困っている。
 そしてその後も交代がくるまで二人の恋バナは続いた。まあ、ほぼマルルゼノファが一方的に話をしているようだ。

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 ――……翌日。

 宿屋の前には荷馬車が泊まっている。
 そして、その近くにはルミカ達五人がいた。
 荷馬車の中には既に捕虜の三人を乗せている。

 現在ルミカ達は荷馬車の前で色々と話し合っていた。

 「みんな揃ったわね。忘れ物とかはないわよね?」
 「ルミカ先生、マルルがみえませんわ」

 そう言いシャルルカーナは周囲を見渡す。

 「確かに居ないな。まさか……一人でマールエメスへ向かったんじゃ」
 「考えたくないけど……パルキア先生の言う通りかもしれないわ」

 セリアーナは心配に思いマールエメスの方へ視線を向ける。

 「どうしよう……マルルは男だから別部屋で監視できなかったもんね」
 「メイミル……そうだな。でも勘違いかもしれない……オレが部屋を確認してくる」

 そう言いパルキアは宿屋に入っていった。
 その間ルミカ達は、どうしたらいいか話し合っている。

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 それから数十分後、宿屋からパルキアが出てきた。
 宿屋から出てきたパルキアの顔は青ざめている。

 「最悪だ。マルルの泊まっていた部屋をみて来たけど……手紙が置いてあった」

 その手紙をパルキアは、ルミカに渡した。
 受け取ったルミカは手紙の内容を読んでみる。

 「やっぱり一人で向かったみたいね」
 「ルミカ先生、どうするの?」

 そう言いセリアーナはルミカを見据えた。

 「誰かが連れ戻さないとまずいわ」
 「オレが行こうか? この中での戦闘経験なら一番おおいしな」
 「パルキア……そうね、お願いします。みんなも、それでいいわね」

 そうルミカに言われ三人は、コクッと頷く。
 その後パルキアは荷馬車から荷物を取りマールエメスの方へと駆け出した。
 それを確認するとルミカは三人を順にみる。

 「それでは……行きましょうか」

 そう言いルミカは御者をするため荷馬車の前に向かった。
 それをみたメイミルはセリアーナとシャルルカーナを荷馬車に入れる。
 そのあとメイミルは自分も荷馬車の中へ入った。
 ルミカはそれを確認すると町の外へと向かい馬を操作し走らせる。


 ――場所は変わり、ベバルギの町――

 この町の入口付近には、ハルキュアとカデリウスとピュアルがいた。

 「いよいよ今日からだな」
 「ええ……沢山の仕事を熟しませんと」
 「ボクモ、ガンバルネ」

 それを聞きハルキュアとカデリウスは、コクリと頷き町の入口を見据える。

 「じゃあ行くぞ」

 そう言いハルキュアは町の外へと向かい歩きだし、そのあとを二人が追いかけた。


 ――……その後ハルキュア達三人は依頼を熟しランクを上げていったとのことらしい。だがそれは、ずっと……ずっと先の話となる。
 そしてハルキュア……ハルリア……いや、どっちでもないわいっ!? あーややっこしいなぁ。まあそれはさておき。
 美少女となってしまったハルリオンの今後の運命は如何に? という事で、ハルリオンの物語は一旦ここで幕を閉じる。――――♡TS美少女爆誕編・完結♡