「何っ、転移の魔法陣が閉じただとっ!? その上……タールベとハンナベルが何者かに捕まったかもしれない……」

 そう言いカンルギは目の前の男を、キッと睨みつけた。

 ここはマールエメス国にあるラーメシア城。そして大臣の書斎である。

 「はい、恐らくはそうかと……。なぜ魔法陣が閉じたのか確認のためハンナベル様に連絡をしました。ですが応答はなく……」
 「なるほど、そうなるとリュコノグルは……コッチの動きに気づいたやもしれぬ」

 カンルギはそう言うと机上の書類を持ち思いっきり床に投げつけた。
 それをみて男は、ビクビクしている。

 「……軍を動かすか? いや……下手に動いて返り討ちに遭いかねない。やはりハルリオンの存在が邪魔だ。生死さえ確認できれば動かせるというのに……」

 そう言いカンルギは苦虫を潰したような顔になり無作為に一点をみつめた。

 「カンルギ様、改めて暗部を組み直してみてはいかがでしょうか」
 「そうだな……あの二人は、もう使えんだろう。早急に組み直す……それまでお前は組織のアジトに戻っていろ」
 「ハッ! 承知しました」

 そう言い男は一礼をすると部屋を出てアジトへ戻る。
 それを確認するとカンルギは床にばらまいた書類を拾い机上に置いた。

 (どうする? 今の組織にあの二人以上の実力者が居るとも思えん。新たに探すにしても……間に合わんな。
 そうなると臨時で軍の中から二名を暗部にまわすか。その間、暗部に相応しい者を探す……その方がいいだろ)

 そう考えがまとまるとカンルギは、ニヤリと不敵な笑みを浮かべる。

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 ここはカンロギの宿屋。そしてハルリアの泊まる部屋だ。
 ハルリアはベッドに寝転がり考えごとをしている。

 (どうも向こうの動きが気になる……かといって隠密で今動かせる者がいねぇしな。どうする? オレは…………それしかないか……)

 何やらハルリアは思いついたらしく、ニカッと笑みを浮かべた。

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 ここはティオルの泊まる部屋。
 お茶を飲みながらティオルは色々と考えている。

 (……そういえばハルリオン様は今のところ大人しいですね。まあ姿が男から女になり、それも十五歳ですので……まさか馬鹿なことは考えないかと思いますが)

 そう思いティオルの顔は青ざめた。
 そう嫌な予感が頭をよぎったからである。
 その後ティオルは予感が当たらないことを願いハルリアの部屋に向かった。

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 ここは倉庫内。
 カールディグスは三人の捕虜を監視しながら考えている。

 (流石に暇だ……隊長は本当に交代してくれるのか? なんか不安になって来たんだけど……。
 それにしても隊長が夜遊びをしなくなっただけマシか…………ちょっと待て、あの人がこのまま大人しくしているのか?
 大人しく敵を待つことができるとも思えない。だけど……クソッ、確認したくてもできないじゃないかよおぉぉおおお〜……)

 そう思いカールディグスは絶望的な気持ちになり頭を抱えた。