「逃げるのですか?」

 そうティオルは問いかける。

 「クッ……逃げる、どうだろうな」

 そう言いタールベは後退した。
 それに対しティオルは剣を構えたまま、タールベとの間合いを詰める。

 「そうはさせませんよ。貴方は私を本気にさせたのですから」
 「なるほど。だが俺は、お前とやり合う気なんかない」
 「はて? 面白いことを言いますね。先に仕掛けたのは貴方だったはず」

 そう言いティオルは、ジト目でタールベをみた。

 「そ、そうだとしても……今はその気がないと言っているんだ!」
 「ほう……なるほどです。それでは話を聞かしてもらえるのでしょうか?」
 「お前……自分で言ってることが、おかしいと思わないのか?」

 そう問われティオルは首を横に振る。

 「そう思いませんが、もともと話をするためにここに来たのですよね?」
 「そうだが……それを本気にしてるのか?」
 「さあどうでしょう。ですが、そういう事ではないのですか?」

 そう言いティオルは、ニヤリと笑みを浮かべた。

 「普通……状況をみれば嘘だって分かるだろうがっ!」

 流石のタールベも苛立ってくる。

 「なるほど、そういう事ですか。では、なぜ嘘をつく必要があるのでしょう?」
 「お前、俺を馬鹿にしてるのか?」
 「いいえ、そうではありません。ただ納得できる発言が聞きたいだけですよ」

 そう言うとティオルは、タールベを凝視した。

 「言葉攻めってことか。だが、何も言うつもりはないっ!」
 「それはおかしいですね。今、話してますよ?」
 「……いい加減にしろっ!!」

 タールベは段々疲れて来たようである。

 「いい加減にするのは貴方の方ですよね? 話を聞かせてくれるという事でしたので私は、ここに来たのですが」
 「だから、さっきも言ったはず。それは……。フゥ―……そもそもお前の目的はなんだ?」
 「最初に言いましたよね……貴方の国のことが聞きたいと」

 それを聞きタールベは振り出しに戻って返す言葉がなくなった。

 「なんなんだ、お前は……。拷問よりも、キツイじゃないかよ」

 タールベは今にも泣き出しそうになっている。

 「そうですか? 私はただ質問しているだけですが」
 「それがキツイと言っているんだ」
 「そうなのですね。それならば話して楽になりましょう」

 そう言いティオルは、タールベを見据えた。

 「お前に話すことなどないっ! そんなことをするぐらいなら……」

 タールベは自決するため薬を飲もうとする。
 警戒していたティオルは、それをみたと同時に素早く動きタールベの口に剣の鞘を銜えさせた。
 その拍子にタールベは地面に押し倒され頭を強打する。
 ティオルはそのままの状態でタールベの生死を確認した。

 「フゥ―、危なかった。ちょっと追い詰め過ぎましたね……気をつけていたのですが」

 そう言いティオルは、タールベの口に布を銜えさせたあと魔法がかかっている縄で拘束する。

 「さて、どうやって運びますか? そうですね……何かで覆い運びましょう」

 そう言いティオルは自分で着ている服や持っていた布で、タールベの拘束を隠した。

 「これでいいでしょう……では行きますか」

 そうティオルは言うと、タールベを抱きかかえる。
 そしてその後、自分が泊っている宿屋へ向かった。