――……約一ヶ月後。

 ここはセルギスの森の奥にある、ひらけた場所。そこには、ハルリアの家がある。

 あれからハルリアとルミカとカールディグスとメイミルは、翌日になりリュコノグルの城下町を旅立った。その後二日かけて、各々の家に戻る。
 そしてハルリア達にとって、いつもの生活に戻っていた。

 現在ハルリアは、いつものように剣の稽古をしながら考えごとをしている。

 (……思ったよりも早く学園から手紙が届いた。まさか……そうくるとはな。まぁ、それが無難なんだろうが……二ヶ月後どうなるかだ)

 そう思いながら剣を鞘におさめた。

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 ここはリュコノグルの南側にある隣国マールエメス。因みにリュコノグル国は、大陸の中央ぐらいの所に位置する。
 この国は他種族との交流があるせいか領地が多く、かなり人口も多いのだ。と云いたいが、一部、事実とは違う。
 この国は侵略国家であり、殆どの領地が奪ったものである。そのためか奴隷も多数いた。
 そして国の中心都市にラメーシアの城下町がある。
 そしてその城の中にある大臣の書斎には、男性二人がいた。 一人はこの城の大臣だ。もう一人は、商人のようである。
 大臣は椅子に座り机上に両手を乗せて、目の前の商人を見据えていた。

 この大臣はカンルギ・ザベテ、四十三歳。
 銀色で紫のメッシュが入った長い髪を三つ編みで束ねている。
 容姿的に綺麗な顔だちをしていた。

 商人の方はタールベ・ラゼ、三十歳。実は商人じゃない。そうカンルギの配下の者であり、主に影の仕事を受け持っている。
 濃い茶色の短髪で、糸目で狐のような容姿だ。

 タールベは片膝をつき俯いていた。

 「ハルリオンが、生きているかもしれんだと!?」
 「はい、リュコノグル国内で商売をしながら探っていましたところ。聞こえて来たのは、ハルリオンが死んだという噂じゃなく……行方不明とのこと」
 「どうなっている……ハンナベルは間違いなく、あの魔道具を使ったのだな?」

 そう言われタールベは、コクッと頷く。
 因みにハンナベルとは、ハルリオンを十五歳の少女にしてしまった張本人ルセレナ・セリュムである。そして本名はハンナベル・ククルセナだ。

 「間違いないはずです。ですがハンナベルの話では……魔道具を開けさせたあと、確認せずに逃げたらしいので」
 「という事は……その後どうなったか分からないという事か」
 「そうなります。……申し訳ありません」

 それを聞きカンルギは、ハァーっと溜息をついた。

 「……そうだな。生死が不明……となると。下手にリュコノグル国へ攻め入ることはできん。タールベ、やるべきことは分かるな?」
 「はい、再びリュコノグルに向かい……ハルリオンの生死を確認してまいります」

 そう言うとタールベは立ち上がり、一礼をすると部屋を出ていく。
 それを確認するとカンルギは、難しい表情で考えていたのだった。