ここは学園長室。ここにはハルリアとダギル学園長がいた。
 学園長室の扉は鍵がかけられている。それだけじゃない、外に声が漏れないように防音の魔法を部屋全体にかけた。
 なぜここまでするのかは、会話が漏れないためである。
 因みに防音の魔法は、ハルリアが使った。……嫌々ながらだったようだが。

 現在ハルリアとダギル学園長は、向き合ってソファに座っている。

 「ハルリア……いやハルリオン、これはどういう事だ!」
 「……」
 「おい、なんで黙っている? 飽くまでも、違うと言い張る気か」

 そう言われハルリアは、溜息をついた。

 「隠しきれないか……流石は、隊長だ。いつから気づいてたんですか?」
 「やっと口を開いたな。なんとなくだが、剣術の対戦試験の時に……お前の髪の色と動きをみてだ」

 ダギル学園長はそう言いながらハルリアを見据える。

 「まぁ……最初は、ハルリオンの子供かと思ったが。他の試験をみているうちに、お前にしかみえなくなっていた」
 「そうか……まさか、バレるとは思わなかった。それで、どうするつもりですか?」
 「どうするつもりもない。それよりも、なんでお前が女になっている? それも、十五歳の少女にだ」

 そう聞かれハルリアは言葉に詰まり俯いた。

 「どうして黙る?」
 「隠してもしょうがねぇか。実は……」

 ハルリアはなんで十五歳の少女になったのかを説明する。

 「プッ、ハハハハハ……いやあ……お前らしいな。だめだ、苦しい……」
 「そんなにおかしいですか? オレは……しばらくショックだったんですけど」
 「ああ……すまん。そうか、だがなんでここの試験を受けた?」

 そう言いダギル学園長は、ハルリアをみた。

 「ロイノビに聞いてますよね?」
 「ああ、誘ったと言っていたが。誘われたからって、隠れていたお前が……なぜって思ってな」
 「そういう事ですか。今の体で、どこまでやれるのかと思ったからです」

 ハルリアはそう言い自分の手をみる。

 「なるほど……お前らしいな。だが、試験を見る限り……そんなに変わらんようにみえるぞ」
 「ですね……隊長にバレたという事は、姿だけで何も変わっていない」
 「そうだな。お前はどちらかといえば、力よりも……剣技やスピードだ。それと……聖光の高度な魔法が使える」

 それを聞きハルリアは頭を抱えた。

 「それらは、別にその体になっても衰えんだろ」
 「どうでしょうか……これでも、以前の感覚を取り戻すのに苦労しました」
 「苦労な……お前と俺とは、感覚が違う。それにお前は、恐らく他の者たちよりも……今いる領域が違うはずだ」

 そう言いダギル学園長は、フゥーっと息を吐く。

 「領域……か。前にも隊長はそう言っていた。それって、どういう事ですか?」
 「それを聞く時点で、他のヤツと感覚がズレてるってことだ!」
 「要は、聞くなってことか。それはそうと……オレは、このあとどうなりますか?」

 そう聞かれダギル学園長は、考えたあと口を開いた。

 「ハルリオン、どうしてもこの学園で学びたいか?」
 「そうですね……学ばせて頂けるなら」
 「そうか……それはいいが、この学園に居る間……ハルリアを通してもらう」

 それを聞き頷きハルリアは、ニヤッと笑みを浮かべる。

 「元々、そのつもりです」
 「それなら大丈夫だな。それと……もう一つ、カールディグスのことだ」
 「カールがどうしたんですか? もしかして、何かやらかしたんじゃ」

 そうハルリアが問うとダギル学園長は首を横に振った。

 「いや、彼は好青年だ。ただ、何か隠しているようだがな」
 「隠している……何をですか?」
 「うむ、お前は本当に気づいていないのか?」

 そう問われるもハルリアは、ダギル学園長が何を言いたいのか分からない。

 「どういう事ですか? カールが何を隠していると」
 「その様子じゃ、本当に知らんようだな。まぁいい、そのうち……話したければ本人の口から言うだろう」
 「待ってください。そこまで言って、途中でやめるって……あり得ないでしょ」

 そう言いハルリアは、ダギル学園長を凝視する。

 「お前は、待てないのか?」
 「はあ? いえ、待つことはできる。だが、それとこれとは……」
 「うむ、とにかく待て。それと、敢えてカールディグスに聞くなよ……いいな!」

 そう釘を刺されハルリアは、ゆっくりと頷いた。

 「……分かりました。ここでの会話を、忘れればいいんですね」
 「そういう事だ。お前は、それができるはずだからな」
 「ええ、そうだった。昔も……そっか……忘却の魔法か」

 そう言いハルリアは、昔のことを思い出し苦笑いをする。
 その後もハルリアは、ダギル学園長と話していたのだった。