ここは騎士養成学園の剣術試験会場がある付近。
 あれからハルリアは、セリアーナとマルルゼノファの試合をみた。
 勿論、二人は余裕で勝利する。
 そして現在、三人は試合会場から対物の試験が行われる場所に移動していた。

 「それにしてもハルリアさんは、見た目と違い強いですよね」
 「マルルゼノファ……そうかしら。ですが、人を見た目で判断しない方がいいですよ」
 「そうね……ハルリアの言う通りだと思う。私の母も同じようなことを言ってたわ」

 そう言いセリアーナはハルリアをみる。

 「そうなのね。あ、そろそろ……対物戦の試験会場ですわ」

 ハルリアがそう言うと二人は頷いた。
 そして三人は対物の試験会場までくる。
 その後ハルリア達は、みんなと共に教師から対物の試験方法を聞いた。

 「なるほどですわね。仕掛けられた物体がコースのどこかに隠されている……それが現れた瞬間に破壊していく。それも千メートル全力で走りながら……」
 「ハルリアさん、タイムも計るみたいですね。僕は、走るのが苦手……」

 そう言いながらマルルゼノファは苦笑する。

 「でも、説明ではタイムが評価にならないって言ってたわよ」
 「セリアーナ、そうね。恐らく速さじゃなくて、正確さをみるのかもしれないわ」
 「なるほど……だが、なぜタイムを計るんだ?」

 そう問われハルリアは考えた。

 「それね……多分だけど、誘導じゃないかしら」
 「誘導? どういう事、意味が分からないんだけど」
 「そういう事か。速さが評価に入らないけど、タイムを計るってことで……そのことにばかり気を取られて集中できない」

 それを聞きハルリアは、キョトンとする。

 (ほう、思ったよりも頭悪くねぇな。……マルルゼノファは、化けるかもしれねぇ)

 そう思いハルリアは、ニヤリと微かに笑みを浮かべた。

 「そういう事になるわね。だから、慌てないで集中した方がいいってこと」

 そうハルリアが言うと二人は頷く。

 「そっかぁ、そうだね。ただどこに仕掛けられているか分からないし……それが、どこから現れるかも分からない」
 「セリアーナの言う通りだ。どんな仕掛けがされているか……」
 「これは、師匠から聞いた話だけどね。戦場では、何が起きるか分からない。ましてや、どんな仕掛けがあるかも……」

 そう言いハルリアは、真剣な表情で二人をみる。

 「そうなると……これは、実戦を想定した試験ってことか」
 「そういう事になるわね」
 「……ハルリアの師匠って、凄い人みたいね。普通は、そこまで教えないと思うけど」

 それを聞きハルリアは、まずったかと思った。

 「さっきの戦い方といい……ハルリアさんの師匠って誰なんですか?」
 「そうね……私も気になるわ。ハルリア、誰なの?」
 「あーえっと、それは……」

 ハルリアはどう答えていいか分からず言葉に詰まる。

 (どうする? ハルリオンって言った方がいいか……それとも、誤魔化した方が……)

 そう思いハルリアは、俯き自問自答していたのだった。