……――時は、少し遡る。ここはセリアーナとマルルゼノファが居る観覧席。ワクワクしながら二人は、ハルリアの試合をみていた。

 「ハルリアさんは、勝てるだろうか?」
 「どうでしょうか……相手は、男性です。でも、なぜハルリアだけ?」
 「本当ですね。偶々人数の関係なのか……それとも、わざと」

 それを聞きセリアーナは、不思議に思い首を傾げる。

 「もしわざとだとしたら、そうする必要があるの?」
 「んー……分からない。流石の僕でも、そこまではな」
 「……って、始まったわ!?」

 そうセリアーナが言うとマルルゼノファは、ハルリアへと視線を向けた。

 「「……!?」」

 二人がハルリアをみた瞬間、驚き呆気にとられた。
 そして我に返り二人は見合わせる。

 「今、何が起きた?」
 「私も、分からなかった。……でも、ハルリアが勝ったのよね?」
 「ああ、そうみたいだな。まさか……一瞬で倒したのか、相手は男だぞ」

 それを聞きセリアーナは、ハルリアを目で追った。

 「男か女とか以前の問題だと思うけど……」
 「確かにな。誰かに、剣術を習ってたのか?」
 「そうかもしれないわね。だけど、それでも……普通じゃないと思う」

 そうセリアーナが言うとマルルゼノファは、コクリと頷く。

 「もしかしたら、元々持っているのかもしれない……ハルリアさんは」
 「持っているって……何を?」
 「戦闘とかのセンスだ。そういえば英雄と云われたハルリオンは……若い頃から、かなりの戦闘センスがあったと聞く」

 そう言いながらマルルゼノファは、ハルリアをみる。

 「私も母から聞いたことがあります。一人で、三十メートルもある毒オオトカゲを倒したって」
 「……それは、僕も聞いたことがある。だけど、なんでセリアーナの母親がハルリオン様のことを知っているんだ?」
 「あーそれね。私の母は、その時ハルリオン様と一緒に任務をしていたらしいのよ。で、その時……自分は助けられ迷惑をかけたっていってたわ」

 そう言いセリアーナは俯いた。

 「そうか……じゃあ、セリアーナの母親はハルリオン様を知っているんだな?」
 「ええ、そうらしいわ。確か、私の父も知ってるはず……同じ隊に居たらしいから」

 そうこう二人が話している少し後ろの方でハルリアは聞いている。いや、正確には聞こえてきたのだ。

 (……やはり、アンリーナの子供か。でも、父親がオレと同じ隊に居たって……いったい誰だ? あの頃、やめたヤツは結構いたからなぁ。だがこれで、オレの子供じゃないってことが分かった)

 ホッと胸を撫で下ろしハルリアは二人の方へと向かう。

 「何を話しているの?」

 何も聞いていないかのように、ハルリアはそう言った。

 「あっ、ハルリアさん。ハルリオン様のことを話してたんだ。なんか、セリアーナの母親……」

 マルルゼノファは、セリアーナと一緒にそのことを説明する。
 それをハルリアは聞いていたのだった。