「…………あれ? ここって……」
美鈴は、なぜか住みなれたアパートのベッドの布団の中にいた。モゾモゾするとやっとの思いで上体を起こし目を擦りながら、「ふあぁ〜」と欠伸をする。
「んー、今まであの世界にいたはず。なのになんで自分の部屋に……」
そう言いながらキョロキョロと辺りを見回す。
(……今まで夢みてたのかな? エリュードとの楽しい旅も夢……)
一瞬顔を赤らめた。だが、寂しくなり涙を浮べ泣きそうになる。
(あれが夢……だった……。なんだろう、胸がいたい、苦しい。普通なら夢で良かったって思うんだろうなぁ。
だけど夢でもいいから、もう一度エリュードに会いたい。今度こそ、ちゃんと……って、夢なのに変だ。アハハハ……)
そう思いながらベッドから降りて窓際まで行くと、カーテンを開け外の景色をみた。
「夕陽? ってことは、夕方かぁ。そろそろ夕食作らないと……」
美鈴はキッチンに向かい冷蔵庫を覗きみる。
「んと……ある食材……。おっ、鍋にできそうな具材が結構あるっ! ん? でも、ウチの冷蔵庫ってこんなに食材あったっけ、」
そう思うもまあいいかと言い冷蔵庫を閉め棚から小さな土鍋を取り出した。
「さて、久々に鍋でも……。ん? んー、なんか久々じゃない気がする。……確か夢の中でしてたようなぁ。思い出せない。気のせいかな?」
鍋の準備をしながらしばらく考えていたが、「まぁいいか、」と言い悩むのをやめる。
しばらくして準備を終えると、土鍋をコンロの上に置き火をつけた。
(どうだろう。いい素材ばかりだったから美味しくできるはず)
そう思っていたが……沸騰し湯気が立ち始めるも、なぜか美味しい匂いがしてこない。
(あれ? 変だなぁ、なんでだろう。鼻がおかしくなったかな)
そう思考を巡らせていると、急に視界が暗くなる。美鈴は慌てて立ち上がろうとするも、体が鉛のように重く動けない。
(これってどういう事? いったい何が……)
混乱し始め視界が歪む。そして意識を失った。__
場所は移り、ここはスイラジュンムのとある森の中の開けた場所。辺りには何やら美味しそうな匂いが漂っている。
そうそれは鍋のいい匂いだ。
だがなぜかエリュードとヴァウロイとライルとゴルイドは、その匂いとかを吸わないように鼻と口を布で覆っていた。
そしてグツグツ煮えたぎる鍋の傍らには、美鈴が意識を失い苦しそうに唸りながら横たわっている。
エリュード達は、そんな美鈴を心配しながら恐る恐る鍋の近くまできた。
と同時に、美鈴を担ぎ上げると即その場から遠ざかる。
(よりによって、あの鍋の中に幻煙茸を入れるとはな。いやそもそもミスズは、どこであんなとんでもないキノコをとってきた?)
そう思いながらエリュード達は、匂いが届かない場所までくると美鈴を地面に寝かせた。
「フゥ〜、ここまでくれば大丈夫だろう」
そう言いエリュードは鼻と口を覆っていた布をとる。
それに続くかのように、ヴァウロイ、ライル、ゴルイドの順に布を取っていく。
「今回はエリュードのおかげで助かったのニャ」
「そうね。ミスズが鍋にキノコを入れた瞬間、それをみて叫んでくれなかったらみんな犠牲になってたものね」
「ああ、だがミスズちゃんは間に合わなかった」
ゴルイドは美鈴を心配そうにみる。
「そうだな。でも、まだ時間はそんなに経ってない。急ぎ解毒すれば間に合うだろう」
そう言い異空間の収納ケースから液状の解毒薬を取り出し眠っている美鈴に飲ませた。
すると、今まで苦しそうに唸り青ざめていたが、スヤスヤと息が整い顔にほんのりと赤みがさす。
「これで、問題ないはずだ。あとは、美鈴が自力で起きてくれるかどうかだ、が」
エリュードは美鈴を覗き込む。
「だけど、この様子だと。しばらく起きないんじゃ?」
「なんか口を、もごもごしながら笑ってるのニャ」
「夢の中で、なんか食ってるみたいだな」
ライルとヴァウロイとゴルイドも美鈴を覗きみた。
「……むにゃむにゃ……んー、もう食べれない……」
口からよだれを垂らしながら寝言を言い美鈴は、幸せそうな顔で眠っている。
それをみたエリュード達は、安堵と呆れた気持ちが入り混じって微妙な表情になった。
その後、美鈴が起きるまで交代で様子をみる。
そして、たまたまエリュードが美鈴を覗き込んだ。とその時、美鈴は目を覚ます。……だがエリュードの顔が目の前にあり、顔を赤らめ慌てて飛び起きる。
それと同時に、エリュードの顔面に美鈴の頭が直撃。その衝撃でエリュードは、鼻から血を吹き出し後ろにバタンと倒れ頭を地面に強く叩きつけた。
「えっ、えっと……どうしよう……」
そう言いながらエリュードを心配そうにみつめる。
そうこうしているとヴァウロイ達が、食材を各々持ちこっちに向かってきていた。そしてその後、美鈴とエリュードの側までくる。
「あっ、ミスズ起きたんだね。……って、エリュードっ! なんで鼻血を出して気絶してるわけ?」
「あのぉ、これはですね。えっと……」
そう言い美鈴は、なんでこうなったか理由を話した。
「……自業自得ニャ。ミスズの顔を覗いてたってことは、何かしようとしてたってことなのニャ」
「何かって? 確かに柔らかい物が唇に触れた気がしたけど……。いや、まさか……ないない、流石にあり得ないでしょっ!」
美鈴はエリュードをみたあと頬を真っ赤にし、違うとばかりに顔をブンブンと大きく振る。
その様子をみてヴァウロイ達は、エリュードが哀れに思えた。
その後ヴァウロイ達は、エリュードが目覚めるまでの間、食事の準備を始めながら美鈴の身に何が起きたのかを説明する。
エリュードが目覚めると美鈴は、お礼と謝罪をするのだった。
……とその時、ついでのように、美鈴はエリュードの額にお礼のキスをする。と同時にエリュードの顔は見事に茹で蛸になり卒倒したのだった。
__そしてその後、鍋のことなど忘れ去られる。そんなことよりもライルとヴァウロイは、からかい半分で美鈴とエリュードとの関係を散々問い詰めたのだった。__◇完◇
美鈴は、なぜか住みなれたアパートのベッドの布団の中にいた。モゾモゾするとやっとの思いで上体を起こし目を擦りながら、「ふあぁ〜」と欠伸をする。
「んー、今まであの世界にいたはず。なのになんで自分の部屋に……」
そう言いながらキョロキョロと辺りを見回す。
(……今まで夢みてたのかな? エリュードとの楽しい旅も夢……)
一瞬顔を赤らめた。だが、寂しくなり涙を浮べ泣きそうになる。
(あれが夢……だった……。なんだろう、胸がいたい、苦しい。普通なら夢で良かったって思うんだろうなぁ。
だけど夢でもいいから、もう一度エリュードに会いたい。今度こそ、ちゃんと……って、夢なのに変だ。アハハハ……)
そう思いながらベッドから降りて窓際まで行くと、カーテンを開け外の景色をみた。
「夕陽? ってことは、夕方かぁ。そろそろ夕食作らないと……」
美鈴はキッチンに向かい冷蔵庫を覗きみる。
「んと……ある食材……。おっ、鍋にできそうな具材が結構あるっ! ん? でも、ウチの冷蔵庫ってこんなに食材あったっけ、」
そう思うもまあいいかと言い冷蔵庫を閉め棚から小さな土鍋を取り出した。
「さて、久々に鍋でも……。ん? んー、なんか久々じゃない気がする。……確か夢の中でしてたようなぁ。思い出せない。気のせいかな?」
鍋の準備をしながらしばらく考えていたが、「まぁいいか、」と言い悩むのをやめる。
しばらくして準備を終えると、土鍋をコンロの上に置き火をつけた。
(どうだろう。いい素材ばかりだったから美味しくできるはず)
そう思っていたが……沸騰し湯気が立ち始めるも、なぜか美味しい匂いがしてこない。
(あれ? 変だなぁ、なんでだろう。鼻がおかしくなったかな)
そう思考を巡らせていると、急に視界が暗くなる。美鈴は慌てて立ち上がろうとするも、体が鉛のように重く動けない。
(これってどういう事? いったい何が……)
混乱し始め視界が歪む。そして意識を失った。__
場所は移り、ここはスイラジュンムのとある森の中の開けた場所。辺りには何やら美味しそうな匂いが漂っている。
そうそれは鍋のいい匂いだ。
だがなぜかエリュードとヴァウロイとライルとゴルイドは、その匂いとかを吸わないように鼻と口を布で覆っていた。
そしてグツグツ煮えたぎる鍋の傍らには、美鈴が意識を失い苦しそうに唸りながら横たわっている。
エリュード達は、そんな美鈴を心配しながら恐る恐る鍋の近くまできた。
と同時に、美鈴を担ぎ上げると即その場から遠ざかる。
(よりによって、あの鍋の中に幻煙茸を入れるとはな。いやそもそもミスズは、どこであんなとんでもないキノコをとってきた?)
そう思いながらエリュード達は、匂いが届かない場所までくると美鈴を地面に寝かせた。
「フゥ〜、ここまでくれば大丈夫だろう」
そう言いエリュードは鼻と口を覆っていた布をとる。
それに続くかのように、ヴァウロイ、ライル、ゴルイドの順に布を取っていく。
「今回はエリュードのおかげで助かったのニャ」
「そうね。ミスズが鍋にキノコを入れた瞬間、それをみて叫んでくれなかったらみんな犠牲になってたものね」
「ああ、だがミスズちゃんは間に合わなかった」
ゴルイドは美鈴を心配そうにみる。
「そうだな。でも、まだ時間はそんなに経ってない。急ぎ解毒すれば間に合うだろう」
そう言い異空間の収納ケースから液状の解毒薬を取り出し眠っている美鈴に飲ませた。
すると、今まで苦しそうに唸り青ざめていたが、スヤスヤと息が整い顔にほんのりと赤みがさす。
「これで、問題ないはずだ。あとは、美鈴が自力で起きてくれるかどうかだ、が」
エリュードは美鈴を覗き込む。
「だけど、この様子だと。しばらく起きないんじゃ?」
「なんか口を、もごもごしながら笑ってるのニャ」
「夢の中で、なんか食ってるみたいだな」
ライルとヴァウロイとゴルイドも美鈴を覗きみた。
「……むにゃむにゃ……んー、もう食べれない……」
口からよだれを垂らしながら寝言を言い美鈴は、幸せそうな顔で眠っている。
それをみたエリュード達は、安堵と呆れた気持ちが入り混じって微妙な表情になった。
その後、美鈴が起きるまで交代で様子をみる。
そして、たまたまエリュードが美鈴を覗き込んだ。とその時、美鈴は目を覚ます。……だがエリュードの顔が目の前にあり、顔を赤らめ慌てて飛び起きる。
それと同時に、エリュードの顔面に美鈴の頭が直撃。その衝撃でエリュードは、鼻から血を吹き出し後ろにバタンと倒れ頭を地面に強く叩きつけた。
「えっ、えっと……どうしよう……」
そう言いながらエリュードを心配そうにみつめる。
そうこうしているとヴァウロイ達が、食材を各々持ちこっちに向かってきていた。そしてその後、美鈴とエリュードの側までくる。
「あっ、ミスズ起きたんだね。……って、エリュードっ! なんで鼻血を出して気絶してるわけ?」
「あのぉ、これはですね。えっと……」
そう言い美鈴は、なんでこうなったか理由を話した。
「……自業自得ニャ。ミスズの顔を覗いてたってことは、何かしようとしてたってことなのニャ」
「何かって? 確かに柔らかい物が唇に触れた気がしたけど……。いや、まさか……ないない、流石にあり得ないでしょっ!」
美鈴はエリュードをみたあと頬を真っ赤にし、違うとばかりに顔をブンブンと大きく振る。
その様子をみてヴァウロイ達は、エリュードが哀れに思えた。
その後ヴァウロイ達は、エリュードが目覚めるまでの間、食事の準備を始めながら美鈴の身に何が起きたのかを説明する。
エリュードが目覚めると美鈴は、お礼と謝罪をするのだった。
……とその時、ついでのように、美鈴はエリュードの額にお礼のキスをする。と同時にエリュードの顔は見事に茹で蛸になり卒倒したのだった。
__そしてその後、鍋のことなど忘れ去られる。そんなことよりもライルとヴァウロイは、からかい半分で美鈴とエリュードとの関係を散々問い詰めたのだった。__◇完◇