「なんか怖くないあの子ら」
「引くわ」

 他の真面目なグループの女の子達もそう言って困惑している。でも助ける勇気はないようで。仕方がない。私も同じようなものだ。
 ハチ君本人はというと、青ざめた顔で泣きそうになって、口元に手を当ててオロオロして私を見ている。あ、やばい、と思った。

「うえっ」
「ちょ、ハチ君吐いた」
「やだー! 制服についたんだけど!?」
「キモ」
「ないわー! 行こ」

 逃げるように出ていく女の子達。なんなの、さんざん自分から絡んでおいてこの態度。好きで吐いたわけじゃないのに、少しは優しくしてあげてもいいじゃないか。

「ハチ君、大丈夫?」

 私はハンカチをハチ君に渡した。

「うん、ごめんなさい、星奈ちゃん」

 私はハチ君に寄り添うことしかできない。背中をさすって全てを吐き出せる。床に黄色っぽい吐しゃ物が散らばる。

「どうして急に吐いちゃったの? 朝は元気そうだったのに、具合悪かった?」
「僕にしては慣れないことするから」
「慣れない?」

 普通の通学生活だけど? 首を傾げる私。
 そんな時だった。