「ねぇ、愛内さん。ハチ君とはどう言う関係?」
「初対面ですけど」

 ああ。やっぱり悪目立ちしちゃった。

「嘘。知り合いじゃなきゃ、あたし達の方が可愛いのに、突然愛内さんに声をかける理由がないもん」

 それはその通りだけど。私だって、ハチ君になんでここまで懐かれてるのかわからないのに。

「本当に初対面で」
「まあ、いいわ。何か理由を付けて距離を置いてね。あたし達、あの子狙ってるから」

 すると、他の女の子たちも次々とのっかりだす。

「愛内さんみたいな地味な子絶対釣り合わないし」
「できればあたしをお勧めしてよ」
「あ、ずるいウチも」
「わたしもー」

 大人数で言いたい放題。ああ嫌だ、この陰険な感じ。昔の嫌な出来事を思い出して、お腹の底で思い出したくない過去がぐるぐるする。

「え」
「いいよね?」
「はあ」

 どう返せばいいのかわからずたじろぐ。
 人はものじゃないのに……。言い返せない自分に罪悪感を感じていると、女の子達は去っていった。
 ため息をついて、私は教室に戻る事にする。
 すると。

「星奈ちゃん、待ってたよー」
 まるで躾のきいた犬のように、ハチ君はニコニコとして食べるのを待っててくれたのだった。