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 あれから現実味のないお葬式があって、私はハチ君の遺品を何点か貰った。
 学校に行く気もなれないけど、無理やり通った。休んだらハチ君が悲しむと思ったから。
 遺品の中には日記もあって、家に帰ってそれを今開いてる。

「星奈ちゃんにもうすぐ会える、か」

 九月一日。星奈ちゃんにもうすぐ会える。病気の進行は良くないけれど、そう思うだけで手術も耐えられる。僕なんか会いに行って喜んでもらえるかな。迷惑がられないかな。高校に行けるなんて、夢みたいだ。どうせ、死ぬまでだけど。
 ごめんね。お母さんお父さん、おとなしく出来なくて。最初で最後のわがままを許してほしい。本当にごめんなさい。
 大好きな星奈ちゃん。僕と出会ってくれてありがとう。星奈ちゃんが好きだったミルフィーは僕も今は大好きだよ。早く会いたいな。

 九月二日。初めての学校は失敗だらけだった。吐いちゃったのに、星奈ちゃんは優しかった。やっぱり、星奈ちゃんは僕の特別な人だ。だけどこんな僕じゃ迷惑かな? 他の子みたいに健康な子に、好きになってもらいたいよね。

 九月七日。土曜日なので一日休み。ダブルデートをした。やっぱり体調を崩しちゃったけど、すごく楽しかった。生きてるっていいな。死にたくないな。無理だけど。
僕が余命わずかな事を、ずっと星奈ちゃんに言えないでいる。

 九月十四日。

「これは、デートの前のやつ」

 体調が良くない。もうすぐ死ぬのかな。こんな体調なのに、再開してごめんね。星奈ちゃん。でも僕は夢みたいだよ。生まれて来て良かった。僕がいなくなっても、星奈ちゃんは笑っていてくれますように。幸せな人生を願ってる。
 死にたくない。死にたくない。死にたくないよ、星奈ちゃん。

「ハチ君」

 私の瞳から大粒の涙が溢れる。
 大好きなのは私もだよ。ううん、ずと大好きだよ。愛してる。
 ハチ君が生まれてくれて良かった、出会えて良かった。陳腐な言葉かもだけど、心からそう思う。
 ずっとハチ君が叶えたかった夢。希望。
 私だって、今度こそ。

「決めた。私」