「僕、保育士さんになりたかったんだ」

 唐突にハチ君は語り出す。

「いつもお世話されてばかりだったから、誰かの面倒見たくて」

 切ない表情でハチ君。

「でも、最後まで面倒見られてばかりだったなぁ。本当は自分の子供も欲しかったんだけど」
「ハチ君」
「星奈ちゃんの子供、欲しかったな」

 ボソリとハチ君は呟く。

「そうだね。ハチ君の子供、可愛いんだろうなあ」
「星奈ちゃんに似てる女の子が欲しかったな」
「私も、ハチ君に似た男の子が欲しかった」
「僕息子に焼いちゃうな、それ」

 それは私もだよ、ハチ君。
 どうして。私たちは当たり前の幸せが手に入らないのだろう。
 生きて、暮らして、死んで。ただそれだけの事がかけがえのないものだと気づく。
 全然当たり前なんかじゃないのだ。
 だからこそ。私も変わりたいと思った。今しかないこの瞬間を噛み締めて、言い訳ばっかりしていたくないなと感じた。
 星空を見上げて思う。星にとっては私たちは些細なもので。
 だけど星空以上に私達は輝いてていたい。
 私達は無言で見つめ合う。

「キス、していいかな。星奈ちゃん」