「僕、車椅子にはなっちゃうけどね。遠くで看護師さんが待機しながらだし、それでもいいなら」

 どこか切なそうなハチ君。でも。

「嬉しい。またここで星が見えるなんて」

 せめて私は元気に振る舞わなくちゃ。
 一番ツラいのはハチ君本人だ。私じゃない。笑え。笑うんだ。
 気を使わせてはいけない。心置きなく最後まで笑ってて欲しい。
 たとえ天国なんかなくても、ハチ君には悔いのない状態で逝って欲しい。わがままなのは分かってる。そもそも本当は死んで欲しくはないけど。

「じゃあ、ご飯食べてきて。僕も食べるから。そうしたらちょうどいい時間だから」
「オッケー」

 私上手く笑えてるかな。引きつってないかな? 本当は今すぐ大泣きしたい。泣き喚いて嫌だとハチ君にすがりつきたい。そう思いながら私は病室を出る。

 入れ替わりに入ってくハチ君の両親に頭を下げられ、下げ返す。
 そして私はめちゃくちゃ塩辛いおにぎりを、売店で買って食べた。