「星奈!」
「お母さん、お父さん」
「話は聞いたわ。なんでこんな事になってるの!? 八田さん、私の娘を変な事に巻き込まないでください!」

 部屋着でやってきただろう般若のようなお母さんの声に、私はビクリとなる。

「死にかけの子供の思い出作りにうちの子を巻き込まないでくださる!? 生き残る方は地獄なのに」
「お母さん、落ち着いて」
「星奈も。帰るわよ!」

 私はお母さんに手を引かれる。だけどそれを力強く引き剥がす。

「行かない。私ここに残る」
「何を言ってるの! あんなに素直な子だったのに最近は出かける事が多いと思ったら男の子とだなんて! 何をそそのかされたの?」

 ヒステリックなお母さんの声に耳を塞ぎたくなる私。も少し怒っている。

「そんなんじゃない! そりゃハチ君は強引だったかもだけどいい子だし、私、本当にハチ君が好きなんだから!」
「星奈」
「お父さん」
「わかった。星奈がそんなに言うなら、一晩だけ認めよう」
「何を言ってるの、アナタ!」

 寡黙で真面目なお父さんの意外な言葉に、お母さんは叫ぶ。

「大切な友達なんだろう」

 私は頷く。大切なんてものじゃない。代わりのないかけがえのない存在だ。

「友達だけじゃない、本当はずっと一緒に居たかった子だよ」
「わかった。お母さんはお父さんが説得するから。悔いのないようにするんだぞ」
「うん。ありがとうお父さん」
「ありがとうございます。愛内さん」

 ハチ君の両親が深々と頭を下げる。お父さんは悲しそうに笑った。