そして冷静になる。小さな子供のノリで手を差し出したけど、相手同年代の男の子じゃん。私、何してんの。

「うんっ」

 なぜか嬉しそうな美少年。どこのクラスに転校してきたんだろう。
 ご機嫌な大型犬のような美少年を職員室まで連れて行く。

「誰あれ。モデル?」
「めっちゃカッコいいー」
「あの女の子誰? 名前わかんないんだけど、彼女?」
「ないでしょ。それはない」
「地味だもんねー」

 地味、という言葉が胸にグサリと突き刺さる。すごい視線を浴びながら、私と美少年は校内を歩いた。
 目立ちすぎて吐きそう。生まれて今までここまで視線を浴びたことはないんじゃないかな。でも、変に隅っこ歩いても悪目立ちしそうだし。美少年もきっと困るし。

「職員室はここだよ」
「ありがとう!」

 うわ。笑顔も強烈に可愛い。さっきも女の子たちに注目されてたし、これからモテまくるんだろうな。

「いえいえ」

 私は美少年が何か言いたそうなのを無視して早足で踵を返す。
 いけない。このままじゃ遅刻だ。
 私は早足で教室へ向かい、やがてホームルームが始まった。