映画のシアタールームに入って、私達は無言になる。
甘い映画だとは聞いていたけど、実際は悲しいお話だった。
初恋の女の子と男の子が、実は男の子が病気で死んでしまう話だった。どうしても治らない病気を隠して、隠しきれなくて一緒に思い出を作って。
結局は運命を変えれないまま、男の子は死んでしまうのだ。そして女の子は強くなる。それを見ているハチ君は号泣していて、ツラそうだった。
「生きたい、よね」
ボソリとハチ君が一瞬呟いた。私も気づけば泣いていた。すごくいい映画だった。今後女の子はどうしていくのか、すごく気になったけど。
映画が上映し終わって、明るくなった静かな映画館で私はボソリと尋ねた。
「ハチ君って最近体調悪いの?」
なんか、転校してからずっとそんな感じだけど。
「うん。体調悪いっていうかもう今治療でできること少ないんだ。だから自由にしていいって」
あまりにもサラリと言うハチ君。でも目が笑っていないし身体が少し震えていた。嘘ではないのだろう。声もツラそうだ。
「そんな。それで私の元に?」
他にも最後にしたかった事いっぱいあったと思うのに。家族とか、反対しなかったのかな。
「星奈ちゃんが僕の初恋の人だから。絶対に会いに来たかったんだ」
真剣な表情でハチ君は言い切る。でも、目は潤んでいた。
「合わないままな事に耐えきれなかったんだ。好きで、ごめん。再会しなきゃよかったと思う?」
「そんな」
一瞬迷ったけど、私もハチ君に会えないままだったら、きっといつか思い出して後悔してた。ツラいけど、今そばにいる幸せは何者にも変え難い。
「僕はまた星奈ちゃんに会えてよかったと思うよ。星奈ちゃんはやっぱり可愛くて優しいまんまで」
「そんな事ないよ、ハチ君知ってるでしょ。クラスで浮いてたんだよ私」
「今は田城さん達がいるじゃん。これからもありのままでいれば友達は増えるよ。行こう。いっその事生きてる間ずっと星奈ちゃんのそばにいたい」