「大丈夫？　ハチ君。怪我はない？」
「僕、走るの苦手で」

　クリーム色のパーカーに茶色のパンツに赤いスニーカーを合わせた格好のハチ君だった。どこにでもある服なのに、まるでファッションショーから抜け出したかのような華である。

「じゃあ、なんで走ったの」
「星奈ちゃんが見えたから」
「きゃっ」

　えへへ、とハチ君は私に抱きつく。相変わらず距離感バグってるな、この子。ついドキドキしてしまう。

「今日お化粧してる？　かわいー」

　ハチ君。顔近い、近い。

「はい、そこ公園でいちゃつかない」
「田城さん」

　そこには白い丸襟の紺色のワンピースの田城さんと白いワイシャツにデニムの工藤君がいた。とても爽やかな感じである。

「写真撮っといたわ。ラブラブツーショット」
「何してるの！？　工藤君！？」
「僕に写真頂戴！　工藤君」

　大はしゃぎのハチ君は私に抱きついたまま手をブンブン振る。

「いいぜ。八田に送っとく」
「わあい」

　何やってんの。と思いつつ消して！　とは言わない私。
　なんだか、ハチ君が落ち込む姿が想像できて、無理だった。なんでだろう。ハチ君を見てると何かを思い出しそうになるのは。