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「ねぇ。愛内さん。八田君。あたし達とダブルデートしない?」

 田城さんがとある日のお弁当中にそう言った。昼休みの教室は賑やかで、中庭ではお弁当を食べ終わったクラスメイトたちがバレーボールをしている。

「する! 絶対する!」

 口にものを詰め込んだまま叫ぶハチ君。おいおい、ちょっと行儀が悪いぞ。

「ハチ君、私はいいとは言ってない」
「ダメ? 星奈ちゃん」

 甘えた声で鼻を鳴らすハチ君。ああ、やっぱり大型犬っぽい。

「いいです」
「わあああい」

 断れずに言いなりになる私。無邪気にはしゃぐハチ君。ダメだ。私、ハチ君のその可愛い表情、好きかも。邪気が消える。

「じゃあ、明日土曜日だから、みんなで待ち合わせて街に繰り出そう。待ち合わせは猫の銅像のある公園。連絡先はお互い知ってるからグループチャット作ろう」
「わ、わかった」

 私、理由はともあれ久しぶりに友達と遊べる!? うわー。嬉しいなあ。
 それよりデートなんて呼ばれる行為は生まれて初めてだからドキドキする。
 何着てけばいんだろう。可愛い服あったかな? いや。それよりも、ハチ君の私服も気になる。どんな感じなんだろう。何着ても似合いそう。
 委員長カップルは、どんな感じで来るんだろう。やっぱり頭良さそうなファッションかな。なんて。

「で、カラオケも行こうー。ドリンクバーで美味しい飲み方。わたし知ってるんだ」
「混ぜるだけだろ理沙子」
「うるさい太一」

 あははと私達は笑う。ああ。本当に楽しみだ。