6年前、半年間付き合っていた彼と別れた。

これまで一時でも“好き“と思えたことがあったのか、それすらもわからない。

でも、あんな風な別れ方をしたことを、今でも後悔している。



地元の中学へ入学した春、彼と同じクラスになった。

1年2組。なぜか私は小学生の頃から2組になることが多い。

私は丘の上の小学校、彼は海沿いの小学校の出身。

入学者のおおよそは、このどちらかの小学校から来ていた。

人見知りの私は春のうちは、以前からの友人としか話せなかった。

ハンドボール部に入った。理由はなんとなく楽しそうだったから。

奇しくも彼もまた、同じ部活だった。

なぜ彼と親しくなったかは覚えていない。きっと理由もない。

とりわけ親しいと自ら思うことはなかった。



8月。部活の遠征へ出掛けた。夏の公式戦だ。

酷く暑かった日だったことを覚えている。

部活には2、3年生の先輩が多く、1年生の私たちは試合の手伝いをしていた。

ふと、彼と2人だけになった瞬間があった。

告白された。

なんて言われたのか、全く覚えていない。

ただ照りつける日差しと、喚くような蝉の声だけが頭に残っている。

こんなこと初めてだった。

彼のことが好きとは断言出来ないけど、嬉しい気持ちがどこかにあった。

好かれたという事実に喜んだだけかもしれない。

私自身のことだし、私にしかわからないことだけど、私にもわからない。

陽炎みたくゆらゆらと、曖昧な気持ちのまま、私は彼と付き合った。



それからの日々も、私の気持ちは結局曖昧なままだった。

色んな所へ行った。海へ、遊園地へ。

理由もないのに、なぜか付き合っているようで、少し苦しくなってきた。

LINEも未読のまま放置することが多くなった。

でも彼の温度は、付き合おうと言われたあの夏の日と変わらなかった。

だから余計に嫌になってきた。

私が冷めるように、彼もまた冷めてくれれば、綺麗に終わるのに。



2月。私は別れを切り出した。

「別れてくれませんか」

もう、この頃にはですます調でLINEを送ることも多くなっていた。

無機質な言葉にすぐに既読が付いた。

そしてしばらくして、

「わかった」

それだけだった。彼からのメッセージが届くことはもう二度となかった。



別れた日以来、彼は私の前に姿を現すことはなかった。

学校にも来なかった。

体育祭も、合唱コンクールも、修学旅行も。

卒業式の日まで3年間来なかった。

LINEもアカウントも消えてしまっていた。



高校3年生、あと10日で卒業を迎える今、彼のことを思い出している。

あの時あんな別れ方をしなければ、私がもっと温かい言葉を掛けていればと。

後悔してもしきれない。私は彼の3年間を壊してしまったような気がしてならない。

今、何をしているだろうか。

元気に過ごしているだろうか。

許されなくてもいい。

もう一度逢えたなら、あの時のことを謝りたい。