私たちの生活は元に戻る。といっても、私は中学校をフリースクールに変えたし、紫亜は、児童保護施設で暮らすことになった。

私の親との関係は良好だ。あの後、しっかり話し合いをした。私のずっと言えなかった気持ちを話した。すると、両親は謝ってくれた。私にそんな無理をさせていると思わなかったって。
それからは、フリースクールに通う私を応援してくれている。

今日も私は、フリースクールから帰ってきて、施設に向かう。

今日のテストも満点だった。やっぱり勉強は好きみたいだし、いい点をとると嬉しい。

紫亜は施設の前に立っていた。

「紫亜〜!」

「ののか、お疲れ様」

「紫亜も〜。ねー聞いて、今日テスト満点だったの、ふふ、私天才」

「えー自慢だあ、わあ。私だって、こないだの頭脳指数テストめっちゃ良かったんだからね」

なんて会話をする。

「今日はどこに行く?」

「うーん、公園行かない?」

「いいよ」

近くの公園は、親子で賑わっていた。私たちは空いているベンチに座り、他愛ない話をする。

「今日もあっついね〜暑いのにがてだああ溶けちゃう」

「わかる……」

「ね、アイスの国に行きたいよぉお」

「なにそれ、どこ」

「しらなーい」

私はしれっと、紫亜の手を握る。

「……!」

紫亜がびっくりした顔をする。

「えへ」

と私は笑う。紫亜ともっと近づきたいと私は思っているから。だからちゃんと行動で表すのです。

「……じゃあ私も」

と紫亜が私にくっついてくる。ああ、幸せだ。
紫亜のことは、親友として大好きだと思っていたが、なんだが最近ちょっとそれを超えてきている気がする。気のせいだろうか。

紫亜はしばらくそうしていると、急に恥ずかしくなったのか立ち上がり、隣の鉄棒で逆上がりをし始めた。相変わらず元気というかなんというか…。

「……わあああ!」

叫ばないで欲しい。こっちのほうが恥ずかしいよ…。それから、いつも通り遊具が空くと、紫亜は遊び始める。私はそれを眺めている。

でも、

「ののかも〜!」

と言われたら、私も上がらなくちゃいけない。やれやれだ。…楽しいからいいんだけど。

私たちは自由だった。
かつてとは全然違う。
心を許せる人がいるだけで、こんなにも違うものなのか。

遊具の上に立つと、空を見た。青い青い空。夏の空。

「……眩しいな」

私はあんな空が似合うような人間にはなれないし、なりたくもない。だけど、今は、その空の下でこうして笑っていたい。それが幸せだと思うから。そして滑り台を滑る。尻もちをつかないようにゆっくり。
紫亜がかけよってくる。
「今回は尻もちつかなかったね」
なんて茶化しながら。
「そうだね〜」
「あ!そういえば近くにクレープ屋さんできたらしいよ!そこ行ったあと、ゲーセンでプリ撮ろ!」
スマホの画面を見せる紫亜。そこにはクレープ屋さんのインスタが写っている。どのクレープも可愛い。
「ほんとだ可愛い……ってわわ」
紫亜は私の腕を引っ張る。
「さ、いくよ、れっつごー!」
紫亜に振り回されながら、私は楽しい日々を送っている。

あれから、小説はまだ書き続けている。賞をとったりすることはないけど、地道にサイトにあげていてファンがついてきた。

私のくらーい小説を読んで、面白いって思ってくれる人がいることが嬉しい。

あ、1番のファンは紫亜みたいだ。紫亜は、私の小説が投稿されるとすぐに感想をくれる。なんだかちょっと恥ずかしい。けど、嬉しい。