明日香だって、死にたいわけじゃなかったのだ。死ぬしか道がなくて、恐怖を笑顔に隠していた。苦しみから逃げることを知らなくて、真正面から向き合って、その結果、死を選ぼうとした。
……本当は生きたいのに。
それに明日香も記憶がフラッシュバックしたようだった。

私たちは何度も何度も、正解に辿り着くまでこの人生を繰り返していたようだ。

電車に乗った時の懐かしさはそれが原因だったのか。

まだ、死にたいという感情はある。でも、私たちは今度こそ、あの電車には乗らない。
後悔するって分かるから。
生きていると見落とすことがたくさんある。
家族愛も、自己否定も、必死に生きているとわからなくなることがある。
だからこそ、その時の感情で身を投げてしまうのはダメだと思う。

生きるって苦しい。

できればしたくない。でも、生まれてしまったのだから自分自身の存在を否定したくない。
できるだけ、幸せになりたいよ。

それに……、
私は、明日香を助けたい。

明日香とともに生きたいよ。

ここからは自分の意見なんだけどさ。

明日香みたいな子を助けるのってすごい勇気がいるよね。
見て見ぬふりする気持ちもわかるんだ。
でもさ、誰かが手を差し伸べていたら、明日香は絶望しなかった。
誰かの小さな勇気が、救うこともあるんだよ。
……なんて、私はまだみんなに言う勇気はないんだけどね。

あと、とりあえず、20までは生きよう。
縛られたレールに囚われながら、足掻いてもがいて生きるんだ。
残酷な現実に打ちのめされても、諦めちゃいけない。
絶対にあなたを救ってくれる人はいるから。
考え方や見た目が他の人と違ったっていいじゃない。
20超えたら、世界なんてめっちゃ広くなる。みんな一緒だからいいことなんてないよ。多分。

大丈夫、あなたは生きていいんだよ。
ちょっとくらい、わがまましよう。

大人になるまでは逃避行していよう。
死にたいまま生きてもいいと思う。
苦しい時は誰かにあたってもしかたないと思う。
まあ、傷つけちゃダメだけどね。

この小説を書き終えた頃、私は笑っているかな。そうだといいな。
だって、明日香と生きるって決めたから。』