でも。

「…まだ逃避行の続きだから」
「え?」

死んだら、終わりなんだよ。それは。
旅の終わり。
私たちは、逃げてるものに向き合う勇気がない。それぞれ、自分を苦しめている本当の原因があるはずだ。だけど、まだ幼いから、自分じゃどうしようもない。

…だから、

「まだ逃げててもいいんじゃないかな。」

終わらせたら、この感情も消えちゃう。
この世界を恨む気持ちも、死にたい気持ちも、まだ生きたい気持ちも、絶望も、紫亜を想う気持ちも。

「死にたいのは、幸せになりたいから。この世界に幸せなんてないのを知ってるから。

じゃあ、ずっと逃げ続けよう。幸せになれない世界で生きる奴らを馬鹿にし続けながら、
ずっと、私たちは逃避行を続けよう。
紫亜には、好きも未練もないんだよね。
ならこれから作ろう。
それに、私が紫亜の未練になるから。
私がいるから生きたいってなってくれたら、へへ、嬉しいな、とか。
一緒に色んなことをしよう。今日みたいに。
それで、もういいな、って思ったら死のう。

それまでは、生きようよ。

それが私の出した答え。」

紫亜が死にたいのは、きっと何もないから。空っぽだから。私みたいにぐちゃぐちゃ考えて、喚いたりしないから。だったら、私みたいになっちゃえばいい。ぐちゃぐちゃ考えて喚くようになっちゃえばいい。好きと未練を作ってしまえばいいんだ。それで、嫌なことからは逃げ続けて、
大人達からも逃げ続けて、
子供のままでいよう。
わがままでいよう。
私たちは苦しいんだ。だから。
ずっとずっと死ぬまで逃避行を続けよう。
毎日が今日にしよう。

「…そんなの許されないよ」

…そうだね

でも、まだ子供だから。



「大人になるまではそれでいいんじゃないかな。

私は、生きたいよ。紫亜がいるなら。」

「…私は…。」