×××
紫亜にとって、死は救いだった。ここまではののかと同じだ。しかし、紫亜にはそれしか選択肢がなかった。
『私は幼い時から厳しい家庭で育った。周りの反応や会話を聞くと、私の家は裕福らしかった。身なりや喋り方に気を使うように厳しく言われたし、守らないと激しく怒られた。だから、いつでもきちんとした態度でいるように気を張った。幼いながらも頑張っていたと思う。お母さんは煌びやかなアクセサリーを沢山つけてよく出かけていた。お父さんは仕事で忙しくてあまり家にいなかった。家族が三人揃って話すのは、月に1度、外食をする時くらい。後は、お父さんの会社の集まりに出席する時くらいだった。集まりに行くと、お父さんの会社の人から、「小さいのにしっかりしてるね」なんて褒められた。でも、私にとっては当たり前だったから、褒められることの意味がわからなかった。私がしたくてしてるわけじゃないから。しないと厳しく叱責されるから。そんなこと、誰も知らないんだろうな、と思った。
ある日、お父さんの仕事が失敗した。
その日から、私の家は裕福とはかけ離れた。高級なマンションに住んでいたのに、ボロい一軒家になって、元々あんまり仲良くなかったお父さんとお母さんは喧嘩ばかりするようになった。
それで、お母さんがあんまり帰ってこなくなった。
それからは、お父さんは私にすぐ怒鳴るようになって、お母さんは帰ってくると私を殴るようになった。機嫌がいい日なんてなくて、二人とも、私をゴミのように扱う。
「痛い」
「ごめんなさい」
私はそれしか言えなくなって。何を謝っているのかわからないけど、謝る毎日。
私が悪いのだろうと思った。
だから、責任転嫁することはなかった。
ずっと、私の存在がいけないんだと思っていた。
私がいるから、お金がかかる。
私がいるから2人は離婚できない。
私がいるから、人生が上手くいかないんだ。
そう言って、2人は私を責めた。
私がここにいなければ、2人はこんなに怒っていないのだろうか。苦しんでいないのだろうか。
その手を痛めつけてまで私に攻撃しなくていいのだろうか。
喉が枯れるまで私に怒鳴らなくていいのだろうか。
私もこんな風に小さくなって、身を守らなくていいのだろう。
昔から、私の存在を肯定されたことは無い。
何度も何度も考えた。
そして結論にたどり着いた。
私が生まれてきたことが間違いだったんだ。
だから、私は謝り続けるしかない。
殴られても、怒鳴られても、それは仕方ないことなんだ。
私がここにいる限り。
学校でも私は、嫌がらせをされていた。金持ちの娘として一目置かれていたのに、引っ越して気が付いたらクラスの誰にも目を合わせてもらえなくなっていた。最初は居ないものとして扱われていたが、一人が嫌がらせを始めると、引き金となってみんなが私に嫌がらせを始めた。カバンの中身は無くなるし、スカートは切られる。お母さんに殴られてついた痣をさらに蹴られる。痛みで悶え苦しむ私に水をかける。咳き込みながら、びしゃびしゃになる。そんな私を見て、大笑いしながら去っていくクラスメイト。
両親も助けてくれない、クラスにももちろん助けてくれる人なんていない。
「誰にも言うな」
そう言われたら、誰にも言えない。怖い。
誰に助けを求めたらいいかもわからないし、
先生だって見て見ぬふりなのだから。
泣いてもどうにもならないし、
叫ぶことも出来ない。
だから、私の居場所はネットだけだった。
唯一、スマホだけは自由に与えられていた。
時間制限はかけられていたけど、プライバシーは守られていた。
だから、Twitterに自分の気持ちを書く。
『もうこんな辛い日々から逃げ出したい』
最初はそんな感じだった。病み垢にする気もなかった。でも、どんどん自分の気持ちが込み上げて来て、止まらなくなっていく。
苦しい。苦しい。苦しい。誰か助けて、でも誰も助けてくれない。わかってる。じゃあどうしたらいい???そんなの答えは一つだ。
ー死ねばいいんだ。
『死にたい』
私はそれを呟くのが日課になった。
それは本心からきたものだった。』
紫亜にとって、死は救いだった。ここまではののかと同じだ。しかし、紫亜にはそれしか選択肢がなかった。
『私は幼い時から厳しい家庭で育った。周りの反応や会話を聞くと、私の家は裕福らしかった。身なりや喋り方に気を使うように厳しく言われたし、守らないと激しく怒られた。だから、いつでもきちんとした態度でいるように気を張った。幼いながらも頑張っていたと思う。お母さんは煌びやかなアクセサリーを沢山つけてよく出かけていた。お父さんは仕事で忙しくてあまり家にいなかった。家族が三人揃って話すのは、月に1度、外食をする時くらい。後は、お父さんの会社の集まりに出席する時くらいだった。集まりに行くと、お父さんの会社の人から、「小さいのにしっかりしてるね」なんて褒められた。でも、私にとっては当たり前だったから、褒められることの意味がわからなかった。私がしたくてしてるわけじゃないから。しないと厳しく叱責されるから。そんなこと、誰も知らないんだろうな、と思った。
ある日、お父さんの仕事が失敗した。
その日から、私の家は裕福とはかけ離れた。高級なマンションに住んでいたのに、ボロい一軒家になって、元々あんまり仲良くなかったお父さんとお母さんは喧嘩ばかりするようになった。
それで、お母さんがあんまり帰ってこなくなった。
それからは、お父さんは私にすぐ怒鳴るようになって、お母さんは帰ってくると私を殴るようになった。機嫌がいい日なんてなくて、二人とも、私をゴミのように扱う。
「痛い」
「ごめんなさい」
私はそれしか言えなくなって。何を謝っているのかわからないけど、謝る毎日。
私が悪いのだろうと思った。
だから、責任転嫁することはなかった。
ずっと、私の存在がいけないんだと思っていた。
私がいるから、お金がかかる。
私がいるから2人は離婚できない。
私がいるから、人生が上手くいかないんだ。
そう言って、2人は私を責めた。
私がここにいなければ、2人はこんなに怒っていないのだろうか。苦しんでいないのだろうか。
その手を痛めつけてまで私に攻撃しなくていいのだろうか。
喉が枯れるまで私に怒鳴らなくていいのだろうか。
私もこんな風に小さくなって、身を守らなくていいのだろう。
昔から、私の存在を肯定されたことは無い。
何度も何度も考えた。
そして結論にたどり着いた。
私が生まれてきたことが間違いだったんだ。
だから、私は謝り続けるしかない。
殴られても、怒鳴られても、それは仕方ないことなんだ。
私がここにいる限り。
学校でも私は、嫌がらせをされていた。金持ちの娘として一目置かれていたのに、引っ越して気が付いたらクラスの誰にも目を合わせてもらえなくなっていた。最初は居ないものとして扱われていたが、一人が嫌がらせを始めると、引き金となってみんなが私に嫌がらせを始めた。カバンの中身は無くなるし、スカートは切られる。お母さんに殴られてついた痣をさらに蹴られる。痛みで悶え苦しむ私に水をかける。咳き込みながら、びしゃびしゃになる。そんな私を見て、大笑いしながら去っていくクラスメイト。
両親も助けてくれない、クラスにももちろん助けてくれる人なんていない。
「誰にも言うな」
そう言われたら、誰にも言えない。怖い。
誰に助けを求めたらいいかもわからないし、
先生だって見て見ぬふりなのだから。
泣いてもどうにもならないし、
叫ぶことも出来ない。
だから、私の居場所はネットだけだった。
唯一、スマホだけは自由に与えられていた。
時間制限はかけられていたけど、プライバシーは守られていた。
だから、Twitterに自分の気持ちを書く。
『もうこんな辛い日々から逃げ出したい』
最初はそんな感じだった。病み垢にする気もなかった。でも、どんどん自分の気持ちが込み上げて来て、止まらなくなっていく。
苦しい。苦しい。苦しい。誰か助けて、でも誰も助けてくれない。わかってる。じゃあどうしたらいい???そんなの答えは一つだ。
ー死ねばいいんだ。
『死にたい』
私はそれを呟くのが日課になった。
それは本心からきたものだった。』