それがちゃんと伝わったことは、彼女の“想い”の変化から感じ取れる。
「もう一度、思い浮かべて……そう、その調子だ」
僕の言葉を聞き入れて、真奈美さんの“恐怖”が強くなっていく。
それを受け止めるために、僕も彼女の“想い”に集中して、心を寄せた。
自然と、片方の手が同じ“想い”を発する手紙に伸びる。
“怖い”、“怖い”、“怖い”……“どうして”、“ごめんね”、“何が悪かったの?”。
“こんなに嫌われるくらい、佐藤さんに嫌なことしちゃったんだよね。
ごめんね、私、もう学校に行かないから。外にも、出ないよ。
だから、安心して? 大嫌いな私のことなんか、忘れて。
――早く、忘れて……っ!”
「はぁっ、はぁっ…………?」
体が、勝手に動いていた。
心の中で荒れ狂う“恐怖”に苛まれながら、僕の体は、儀式の手順通りに真奈美さんから離れ、後ろに下がる。
「……」
閉じていた目を開いて、瞬きすると、雫が頬を伝う。
一筋、二筋。それを皮切りに、次から次へと涙が溢れ、流れ落ちた。
本来、自分で拭うために傍らに置いていた懐紙を、いつの間にか傍にいた兄上が持って、滴り落ちる涙を受け止める。
それにようやく気付いた僕は、懐紙を受け取ろうと手を伸ばして、兄上が袂に入れていた予備の懐紙をもらった。
通常は一筋の涙で昇華できるから懐紙一枚で充分なのだが、今回は一筋では止まらなかったから二枚目が必要になったようだ。
涙が止まり、引き受けた“恐怖”が心の内から消えたことを確認すると、僕は気を取り直して顔を上げた。
「私、奏瀬都は柿原真奈美様の“恐怖”を昇華致しました。これにて、昇華の儀式を終わります」
手をつき、礼をして儀式は終わり。
これで、彼女は……真奈美さんは、救われた。
「お疲れ様でした。これで、もう苦しめられることはありませんよ」
柔らかく微笑むと、真奈美さんは何も堪えている様子のない、心からの笑みを返してくれた。
「はい。ありがとうございます!」
立ち上がって、真奈美さんの傍に駆け寄った柿原と、傍に寄り心配そうに声をかける母君。
温かい家族の様子を眺めて、僕の心はじんわりと喜びに浸った。
「もう一度、思い浮かべて……そう、その調子だ」
僕の言葉を聞き入れて、真奈美さんの“恐怖”が強くなっていく。
それを受け止めるために、僕も彼女の“想い”に集中して、心を寄せた。
自然と、片方の手が同じ“想い”を発する手紙に伸びる。
“怖い”、“怖い”、“怖い”……“どうして”、“ごめんね”、“何が悪かったの?”。
“こんなに嫌われるくらい、佐藤さんに嫌なことしちゃったんだよね。
ごめんね、私、もう学校に行かないから。外にも、出ないよ。
だから、安心して? 大嫌いな私のことなんか、忘れて。
――早く、忘れて……っ!”
「はぁっ、はぁっ…………?」
体が、勝手に動いていた。
心の中で荒れ狂う“恐怖”に苛まれながら、僕の体は、儀式の手順通りに真奈美さんから離れ、後ろに下がる。
「……」
閉じていた目を開いて、瞬きすると、雫が頬を伝う。
一筋、二筋。それを皮切りに、次から次へと涙が溢れ、流れ落ちた。
本来、自分で拭うために傍らに置いていた懐紙を、いつの間にか傍にいた兄上が持って、滴り落ちる涙を受け止める。
それにようやく気付いた僕は、懐紙を受け取ろうと手を伸ばして、兄上が袂に入れていた予備の懐紙をもらった。
通常は一筋の涙で昇華できるから懐紙一枚で充分なのだが、今回は一筋では止まらなかったから二枚目が必要になったようだ。
涙が止まり、引き受けた“恐怖”が心の内から消えたことを確認すると、僕は気を取り直して顔を上げた。
「私、奏瀬都は柿原真奈美様の“恐怖”を昇華致しました。これにて、昇華の儀式を終わります」
手をつき、礼をして儀式は終わり。
これで、彼女は……真奈美さんは、救われた。
「お疲れ様でした。これで、もう苦しめられることはありませんよ」
柔らかく微笑むと、真奈美さんは何も堪えている様子のない、心からの笑みを返してくれた。
「はい。ありがとうございます!」
立ち上がって、真奈美さんの傍に駆け寄った柿原と、傍に寄り心配そうに声をかける母君。
温かい家族の様子を眺めて、僕の心はじんわりと喜びに浸った。