今は、という言い方が気になるが、これだけ分かれば依頼された“外への恐怖”を昇華するには充分だ。
 力があるからと言って、求められていないことをするのは御法度だからな。


「教えてくれてありがとうございます。このことは、僕の口からは誰にも話しません。安心してください」

「はい……」

「僕個人の意見を言わせていただくなら、早々に助けを求めた方が良いと思いますがね。儀式をして、話せそうだと思ったら、誰かに話してみてください。もちろん、強制はしませんが」

「……」


 机の上に出した手紙を整理して、とんとんと纏めて持つ。
 こんなに強い“想い”がこもっていては、真奈美さん自身の“恐怖”を消しても、これにつられてぶり返してしまうかもしれない。
 この手紙に込められた“恐怖”も、一緒に昇華してしまおう。


「先ほども言いましたが、“想い”は昇華しても新たに湧いて出ます。この先、あなたが何も言い出せず、再び恐怖を抱いてずっと家にこもることになったら……ご家族は、心配するでしょうね」


 約束だから、僕からは何も言わない。
 真奈美さん自身が「助けて」と言えなければ、彼女は今後も抱え込みすぎて折れてしまうだろう。

 僕が関われるのは、たった一度。
 心のままに手を出すのでは、本当の意味で彼女を助けることにはならない。


 “引き受け屋”は背中を押すだけ。
 その後、どう歩いていくかは、当人次第だ。