Side:語り部


 人の心は制御が効かず、時に自分の『想い』が自分自身に牙を剥く。

 大抵の場合、それは他のことを考えたり、何らかの方法で発散したり、時の流れに身を任せたりすることで、いつかは眠りにつく。


 しかし、いつまでも胸の中で燻ったまま整理がつけられない『想い』があるのならば、“引き受け屋”の戸を叩くことをお勧めする。

 彼らは人の想いを引き受け、昇華できる特別な力を持った一族。
 手放したい『想い』があると相談すれば、たちまちに引き受けてくれるだろう。


 けれどご注意を。
 一度手放した『想い』は、二度と取り戻すことができない。

 それは本当に、手放していい『想い』かよくよくお考えになることだ。

 それでもまだ、“引き受け屋”に依頼したいと考えるならば、彼ら一族の名をお教えしよう。
 忘れたい、手放したい『想い』を引き受け、当人に代わって昇華する“引き受け屋”一族。


 その名は、【奏瀬(かなせ)】。